白の皇国物語

白沢戌亥

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2巻

2-2

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「――皇太子殿下が立太子されたとて、我らの役割に何の関わりもなかろう? 帝国の蛮人どもは今現在も要塞を攻め立てているのだから」

 どうやら、そういうことらしい。
 しかし、部下はガラハの耳元に口を寄せ、周囲を気にしながら口を開いた。

「――殿下が軍を掌握されることは確実です。そうなれば、北方総軍の司令長官であるラファルマ大将閣下は……」
「ああ、あの酒樽大将は皇都の逆賊の同調者であったな」

 司令長官の軍服からあふれんばかりの恰幅かっぷくの良さを酒樽と呼んでさげすんでいるのは、別にガラハだけではない。常に帝国との最前線となる〈パラティオン要塞〉に有形無形の妨害を繰り返してきた彼に対し、要塞内で好感情を抱いている者がいるはずもなかった。
 常日頃から、兵士たちが集まる食堂や宿舎に行けば上司たちの悪口など幾らでも聞くことができるが、最近では酒樽という言葉が聞こえない日はない。
 当代の皇王に今の職位にされるまでは閑職に追い遣られていただけあって、大した能力もないのに、その気位だけは異常なほど高いくだんの司令長官だが、客観的にその行動を観察すれば、意図的に要塞への情報を遮断したり、補給物資の輸送予定をずらしたりと、明らかに帝国に通じて要塞の機能を奪うための行動ばかりだった。
 そこまで分かっていて今まで対処しなかった理由は、たとえその疑惑を報告したとしても陸軍参謀本部の陸軍参謀総長や陸軍総司令部の陸軍司令長官が動くことはないと分かっていたからだ。総軍司令部以下の組織はともかく、先述の二つの組織と総軍司令部は当代皇王の息の掛かった軍人たちに掌握されていた。
 だが、皇王の代行として軍権を掌握する皇太子が現れたことで、その頸木くびきが外れるときが来た。
 軍を私物化し、国家が危機にひんしても保身のみに走った者たちを皇太子が許すはずもない。ほぼ確実に、彼らは自分の蛮行の責任をその命であがなうことになるだろう。
 実際、部下のまとめた情報によると、総軍司令部直属の部隊が予定にないおかしな動きを見せているという。部隊規模や斥候せっこうたちの偵察行動から類推するに、要塞を突破して帝国領土への逃亡を図っているらしい。

「部隊規模は一個半程度の増強旅団でしょうが、要塞の後背から攻めることで数の不利を補おうということなのかもしれません」
「――奴は莫迦ばかか? 一応、騎士学校でも学んだのだろう?」

 ガラハは心底呆れた。
〈パラティオン要塞〉は単に帝国側からの攻撃に対してのみその力を発揮する要塞ではない。
 場合によっては、要塞内に侵入してきた敵軍を内部で食い尽くすための城でもあるのだ。増強されているとはいえ一個半旅団程度ではたとえ司令部塔を突破したとて、支塁塔しるいとうからの増援部隊に第三長城と第二長城の間の封殺領域で殲滅せんめつされるのは間違いない。
 皇国を圧倒的に凌駕りょうがする兵力を誇る帝国に対し、未だ一度も領内への侵攻を許したことがない鉄壁の要塞。それは同時に、皇国内から帝国に逃げる裏切り者さえ決して通さぬということでもある。

「それに、今回の騒ぎで何の収穫も無かった帝国があの無能を歓迎するとも思えん。奴は人間種でもないしな」

 せいぜい皇国の情報を得るまで賓客ひんきゃくとして歓待し、あとはひっそりと処分されるのが落ちだ。皇国を裏切った者が帝国で重きを成したという話を、ガラハはついぞ聞いたことがない。

「では、閣下は総軍司令長官閣下が要塞近辺に現れた場合――」
「戦闘中に要塞の背後に近付くものがあれば、敵と誤認することもあるだろう。そうなれば俺も責任を問われることになるが、何、問題ない」
「――了解いたしました。第三長城の警戒段階を第一警戒まで引き上げます」
「良い、参謀たちに任せる」
「はッ」

 ひらひらと手を振るガラハの言葉に、部下はかかとを合わせてひじを伸ばし右の拳を左胸に付ける皇国陸軍式の敬礼で答えた。
 部下がさらに一礼して退出した後、ガラハは自らの背後に掛けられている皇国全土地図を見上げて独りごちた。

「軍中央の掌握に三日、北方総軍の掌握に二日、それから増援部隊を編成してここまで来るとなると……いや、皇都が先か……」

 あごに手を当て、彼は机の上に置いてあった制帽を手に取り、その純金の帽章を指ででる。日頃装飾品の類に興味を示さない彼ではあるが、死に装束しょうぞくであると自認する軍装に関してだけは惜しみなく散財することで知られていた。
 彼いわく、「軍務に就いている限り、自分が死ぬときに着ている衣裳いしょうは軍装と決めている。なれば、憎らしくも頼もしいこの戎衣じゅういは、俺がこの世で最後にできる贅沢ぜいたくではないか」とのことだ。だが、一着一着皇都の職人に作らせた濃緑色の軍装も、外套がいとうも、厚掛も、どれ一つとっても一兵卒の一年分の給料を投じてもまだ半分にも足りないような値段である。形さえ同じならば個人的に揃えても軍規上問題ないが、兵士たちの噂によれば、その全額は皇王が軍事式典の際に着用する特一種国主大軍装に準ずるという。
 口も素行も悪い兵士たちが、彼の軍装を盗もうと計画しているというのも、単なる噂では済まないかもしれない。

「何にせよ、この状況で皇王になろうという馬鹿だ。ただの山師、賑やかし屋ではあるまい」

 もてあそんでいた制帽を机の端に置くと、ガラハは口の端を上げて何とも凶悪な笑みを浮かべた。
 かつて天敵であった妖精種のエルフ族を狩り、人間種たちからも森の殺し屋と怖れられた黒妖精種ダークエルフとしての本性の笑みだ。新しい皇太子がどのようにして自らを縛る鎖を引きちぎり、自分の前に姿を見せるのか、大層楽しみであった。

「楽しい、か……ああ、楽しいとも」

 先皇は貴族に対して果断であったが、諸外国や民に対しては非常に穏和であった。帝国とすら外交交渉で決着を付け、二五年前の戦争でも、逆侵攻による帝国領土占領の機会さえ外交の切り札としてしか見ていなかった。ただ、このときの外交姿勢が他国の信頼を得るきっかけになったことは間違いない。
 国家間に友情や愛情は存在しないが、信用というものはある。国同士が何らかの約束ごとを結ぶとき、互いの過去を徹底的に調べ上げるのは当たり前のことで、そこで不安材料を見付ければ交渉は難航し、さらに信用を失うことになる。
 逆にある程度の信用があれば、それだけでも交渉の手札になる。大小問わず如何いかなる国相手でも真摯しんしに付き合うというのは、口で言うよりも非常に困難で、それを行える国家は他国からの多くの信用を得ることになるだろう。
 皇国を信用のおける国、と他国に印象付けた先皇は、目先の利益よりも一〇年、一〇〇年先の利益を重んじたと受け取れる。
 だというのに、その先皇の息子である次のおうは単なる道化だ。騒動の頃からこの〈パラティオン要塞〉にいた自分は中央の騒ぎに巻き込まれなかったが、皇国軍は自らの主によって身を削がれ、力衰えた。そしてそれを成した道化者はいつの間にかむくろさらし、騒ぎだけが残った。まさに道化の所行という他ない。親の遺産を食い荒らすだけ食い荒らした当代皇王に、ガラハは侮蔑ぶべつの言葉さえ思い浮かばない。怒りよりも呆れが先に立ち、そんな皇王に振り回された貴族たちも同罪だと思っていた。
 だからこそ、彼は期待していた。

「さて、次のおうはどのような者だ?」

 多くは望まない。臣同士の間に立ってこの国を大過なく治められる程度の能力があれば、あとは専門の知識と経験を持つ優秀な臣下たちが上手く国を切り回す。君主は有能である必要はない。ただ、他人の能力を殺すほどに無能でなければ良い。
 ただ、できるなら、自分が全力を出せるような戦場を作り上げる才能を持つ者であるとなお良い。
 敵を食い破り、食い散らかし、食い尽くせる戦場をこの世に作り出せる者であると良い。
 防衛戦は確かに好きだが、自分としては、逃げ惑う敵を追い詰めて追い詰めて、その悲鳴を聞きながら臓腑ぞうふを喰らうのが最も心躍る戦いだ。
 そこまで考え、ガラハは客気かっきに駆られそうになる自分を抑える。安易に戦いを求めるものは勝利者足りえない。勝利者とはまず己に勝てる者ではなくてはならないと、彼はその経験から学んでいた。
 旗鼓きこの才あふれる彼にとって戦場とは捧げられた金銀玉帛きんぎんぎょくはくと同義ではあるが、それは敵以外の他人を巻き込むことを是とするものではない。そういう意味では、彼は戦術家というより旧来の戦士に近かった。
 単に自分の力を限界まで引き出すような敵と相対し、勝利したい。その規模が戦争と呼ばれるそれに匹敵するだけで、彼の望みが国家間の戦争そのものにある訳ではないのだ。もし叶うのならば、始原貴族屈指の軍略家であるミッドガルド侯と戦場で相見あいまみえてみたいとさえ思っている。

「――もしもつまらんおうならば、この世の面白さを教えてやらねばなるまい」

 戦いほど命を輝かせるものはない。
 ろくに考えもせずに発せられる「命が尊い」などという言葉は、所詮しょせん自らの命を失うことを怖れる者たちの妄言に過ぎない。
 何故ならば、この世界は神々の御代より争いに満ちている。

「争いこそ人の本懐。命、栄光、富、すべてがくだらないものだということを教えてくれる」

 そしてその先にこそ、真の平穏を見出してみせよ。

「争いを知らぬ者が平穏、平和をうたっても絵空事よ。争いを経て得る穏やかさにこそ、人は価値を見出すことができよう」

 苦を知っているからこそ楽を理解できる。
 楽しか知らぬ者は、苦を想像することはできないのだ。

「――さあ、皇太子よ。お前はこの国に何を与える」

 争いか、安寧か。
 それはすぐに分かることだ。
 彼はそのときを想い、ゆっくりと目を閉じる。
 身体から力を抜き、精神を落ち着けるように大きく息を吸い込むと、まぶたの裏に現れたのは在りし日の自分と無二の友。
 共に笑い、共に明日を夢見ていた頃の光景。いつしかそこに友の家族が加わり、こんな日々がいつまでも続くのだと無邪気に思っていた。
 あの日、自分と友が緊急呼集命令を受け取るまでは。

「――分かっている、俺は絶対に忘れんさ」

 忘れたくとも、忘れられるものではない――ガラハは思い出の中の友に答えた。

「いつか、お前の散り様をあの娘に理解してもらえる日まで、俺はここで待ち続けると決めたんだ」

 だからそれまで、絶対に負ける訳にはいかない。それこそ、あらゆる手段を用いてこの場を守り切る心積もりだった。

「さあ、早く来い。戦場が貴様を待っているぞ」

 その手段の中には、自らの君主さえも含まれていた。


         ◇ ◇ ◇


 あと少し来客が遅ければ、本当に耳が千切ちぎれていたかもしれない。
 大神殿の中庭に沿った廻廊かいろうを歩くレクティファールは、痛む耳をさすりながら割と本気でそう思っていた。何故かは分からないが〈皇剣〉が自己修復機能を作動させず、彼の耳は痛々しくれたままだ。
 丁度ちょうど良いときに顔を出したカールはその場の光景に一瞬呆然とし、すぐにその場の全員が耳を押さえて悶絶もんぜつするほどの怒声で場を鎮め、レクティファールの耳を物理的に救った。機能的には逆に痛めつけたが。
 レクティファールが目を覚ましたと聞いて早速皇太子としての仕事を持ってきたカールだが、そこで娘を含めた皇国の姫君たちの醜態を目の当たりにすることになり、今に至るまで機嫌はあまり良くなかった。
 大神殿の構造を知らないレクティファールは自然とカールの後ろをついていくことになる。カールの背中からは質量さえ感じられそうな怒りの波動が立ち上っていて何とも恐ろしい。世間では龍族は魔族、神族と並んで怖れられる存在だが、その理由はこの辺りにあるのかもしれない。
 それでもあのまま部屋に残っているよりましだと思えるのだから、レクティファールという人間がどれだけ異性という生き物を苦手としているか分かろうものだ。

「はぁ……」

 しかし、苦手だからといって逃げ続ける訳にもいかないのが皇太子。
 社交の場に出る機会はそれこそ山のようにあるだろうし、単に仕事で異性に会うこともあるだろう。その度に気後れしていては、それこそ本末転倒というものである。それに、彼の持つ異性への苦手意識は、女性の思考が分からないという点が原因だ。自分好みの綺麗な女性は好きであるし、自分に好意を抱いてくれる女性には背伸びをしてでも良いところを見せたい。異性とねんごろになりたいという欲望はあるし、正直に言えばメリエラとリリシアを指して「公に手を出して良い女性」だと教えられたときは心の底から嬉しかった。
 だが、それを表に出して嫌われるのは怖いし、何よりも大切なものはそれ相応の扱いをしなくては気が済まないのも、レクティファールという男の本質だった。仮にメリエラたちに手を出す者がいれば、彼は自分の持ちうるありとあらゆる手段でそれを排除するだろう。独占欲といえばそれまでであるが、彼も一応は普通の精神構造を持った男だった。

(あー、でもこれからどんなふうに婚約者付き合いをすればいいのかなんて分からない。〈皇剣〉もこういうことにはあまり役に立たないし……でも……あ、混乱してきた)

 一般常識から始まる二〇〇〇年分の記録を活かすための勉強と、居候いそうろうという名の穀潰ごくつぶしから皇太子という華麗なる転身に伴う自己改革。やるべきことはいきなり山積している。こんなところで足踏みなんて非常にまずい。まずいが――

「しかし……どこから手を付けるべきか分からないという……」

 うぅむ、と唸りながらも危なげ無い足どりで廊下を進むレクティファール。カールはその姿を一瞥いちべつ、嘆息して小さく頭を振った。
 レクティファールが着ている服は、裾に飾り革帯の付いた白の長袴と襯衣しんい、控えめな銀糸の装飾の入った上着と、儀式のときとは打って変わって動きやすいものになっている。勿論もちろん、神殿の職員たちは儀式のときのような服装も用意していたのだが、レクティファール本人ができるだけ身軽に動き回れるものをと希望した結果こうなった。
 元々は貴族の子弟が馬に乗る際に着ていた服に手を入れたものらしい。飾り革帯も、元々は馬具や武具などを固定するものだったのだろう。

「困ったときのウィリィアさん頼みと行きたいところだけれども、最近機嫌悪いですし……」

 ここぞと言うときに頼りになる侍女さんという認識だったのだが、レクティファールが目を覚ましてからは妙に刺々とげとげしい態度が続いており、改善の気配さえ感じられない状況にあった。話し掛けても無視され、あからさまに冷たい視線を向けられ、久しぶりにれて貰ったお茶は非常に苦かった。それでも神殿の女官たちに世話をして貰おうと思わないのは、果たしてレクティファールの意地なのだろうか。もし意地なのだとしても、できるなら、ウィリィアという最も古い知り合いを大切にしたいと思うのが彼という生き物だ。
 ただ、まさか自分のそういった態度がウィリィアに嫌われる一因であるとは、考え至らない。
 現時点でのレクティファールの最大の短所は、自分以外の人間の感情に頓着とんちゃくで無理解であることだ。これは生来の気質なのか、元世界で社会人の最底辺にいた頃の名残なごりなのか、あるいは学習能力の欠如した単なる莫迦ばか者なのか、本人を含めて誰もレクティファールの本質というものに興味を示さないので、これまで明確な答えが出ることはなかった。
 そういった事情を踏まえて、レクティファールという人物を一言で表すなら、それは「場の空気の読めない奴」ということになる。

「――うん、今度は散歩に誘ってみよう。人間、真心持って当たれば分かり合えるだろうし」

 それでも、どんなに邪険にされてもめげないという点だけは見習うべきかもしれない。
 単に人の悪意に気付き難いだけという可能性もあるが、それならば今後の教育で矯正きょうせいされることだろう。国主が他人の感情にうといなど害悪でしかない。過剰に他者の内心を気にすることも問題だが、その逆はさらに問題だ。
 さて、どうやって散歩に誘うべきか――そんなことを考え始めたレクティファール。そんな彼の前を歩くカールが、再度ちらりと背後を見遣る。だがやはりすぐに視線を戻して十歩、そこでカールは立ち止まった。

「殿下」

 重々しい声音と共に振り返り、やや険呑けんのんな視線でレクティファールを見下ろす。
 う、と思わず声を漏らしたレクティファール。じりと半歩後退あとずさった。
 いつの間にか、二人は大神殿の中庭の真ん中を縦断する廊下にいた。
 周囲には誰もおらず、冬の気配が感じられた中で我慢強く鳴く虫の音が小さく聞こえるだけだ。レクティファールは冷たい空気の中で、カールの温度を感じない声を聞く。

「殿下の臣として最初に申し上げることがこのようなことでまこと恐縮でございますが……」
「な、何でしょう……」

 何だ、今度は何をやったんだ自分――レクティファールは自分のここ最近の動きを一気に振り返った。〈皇剣〉の機能なのか、少しも薄れていない過去の光景が脳裏に蘇る。
 だがまだ、カールの逆鱗げきりんに触れるような真似はしていない。していないはずだ。
 悲鳴を上げる思考を持て余すレクティファールに、カールは予想もしない言葉を発し、予想もしない行動に出た。

「まず、これまでの数々の非礼、深くお詫び申し上げまする」

 廊下に膝を屈し、ぬかずいたのだ。
 中庭のただ中へと続く絨毯じゅうたんも何も敷かれていない、鏡のように磨き上げられた石の床の上で、だ。
 仮にも皇国貴族リンドヴルム公爵家の当主であり、始原貴族筆頭でもある白龍公の彼が冷たい床に膝を突くなど、儀式以外では皇王に対するときですらあり得ない。リンドヴルム公爵家はそれを許された家なのだ。
 カールの態度に慌てたレクティファールは周囲を見回した。幸いなことに人の気配はない。意味もなく重臣をひざまずかせるなど、君主としてかなえの軽重を問われかねないし、場合によってはカールの立場も危うくなってしまう。
 ここにいるレクティファールはただの皇太子であり、この時点では皇国の如何いかなる役職にも就いていない中途半端な存在でしかない。次期皇王であるという立場を明確にしただけであり、言ってみれば御輿みこしに乗り込んだだけなのだ。
 それに対して、カールは白龍公として貴族議会のまとめ役をも任されるほどの皇国の重鎮。さらに中規模国家の国土と同程度の領地、同じく国家予算にする資産を持ち、四公爵家の筆頭として皇王に準ずる尊敬を受けているような人物だ。今のレクティファールではまず間違いなく人としての格が違う。世の中には公の序列で表せない、いわば影の序列というものが存在しているのだ。
 故に、レクティファールは大いに焦った。声を荒らげ、カールの肩に触れる。

「白龍公! 誰かに見られたらどうなさるおつもりですか!?」
「ここはすでに人払いが済んでおります。皇国のまつりごとには関われぬ神殿ですが、その内にもまつりごとはあるものです。そしてそれは、絶対に俗世に明かされてはならぬこと……」

 だからこそ、これから向かう場所は大神殿内で最も防諜に優れた場所であるとカールは自嘲するように笑う。そういった場所こそが、自分たちのような政治的生物の縄張りだと言うように。
 しかしカールはすぐに表情を無に塗り潰し、レクティファールを見上げた。

「そこに行く前に、殿下には人を従え導く『君』として最低限の自覚をして貰わなくてはなりませぬ。『臣』の言動に左右されることは悪ではありませんが、己の考えるべきことを他人に委ねるは悪の中の悪にございます」

 レクティファールの思考がカールの言葉を分解、分析する。次いでカールの表情から情報を読み取り、その言葉に含まれた感情を推察。そして、一つの答えを導き出した。
 レクティファールはカールの表情を確認しながら、自分の答えを口にした。

「――つまり、これから誰が何を言っても、自分の考えを失うな、と?」
御意ぎょい

 レクティファールは内に遍在する〈皇剣〉の記録に、幾度も同じ言葉が現れることに気付く。
 その言葉を当時の皇王に告げた人物は、目の前にいるカールに非常によく似ていた。態度や雰囲気だけではない。容姿までもだ。

「これは父から私が受け継いだ、皇王への教えの一つにございます。〈皇剣〉を継承されたならば、お分かりでしょう」

 レクティファールは無言で、うなずきのみを返す。あの記録はカールの父君のものか、と納得した。
 その様子に、カールは少し表情を緩めた。

「それはよろしゅうございました。剣の力に引きられず、歴史を読むことはできるようですな」
「――それも、お父上から聞いたことですか?」
「はい、剣に引きられるような者ならば、相手が誰であっても斬り捨てよと」

 思い切りの良いカールの言葉に、最早唸るしかないレクティファール。
 皇王に暗愚な者がいないのは、その至尊の座に着くまでに選別されるからなのだろう。
 皇王に相応ふさわしくないならば、皇王になる前に排除する。いっそ清々すがすがしいまでの合理主義だった。

「私は合格ですか」
「とりあえず、今のところは、と冠が付きますが……」

 つまりは皇王になるまでは継続して審査されるということらしい。
 その座に就けば、カールは本当の意味でレクティファールに忠誠を誓うだろう。だがそれは、そのときに至るまでは仮初かりそめの忠義しか持たないということでもある。
 おうとして不適格と断じられれば殺される。だというのに、レクティファールはカールに笑みを見せた。

「それは私の望むところ。いざとなれば殺してもらえるなど、これ以上ない保証ではないですか」

 レクティファールは本気でそう思った。
 彼が死に意味を見出さない者であり、間違えば確実に止めてもらえるというのなら、それは失敗を怖れる理由が一切存在しないということだ。
 それは諦めにも似た感覚であったが、彼自身は諦めとは認識していなかった。

「命尽きるまでおうで在り続けるしかないと、私はすでにっています。そしてそれは、白龍公もご存知のこと」
「は」

 カールが首肯するのを見て、レクティファールは再びうなずいた。

「なれば、死ぬべきときに死ぬこともおうの役目ではないですか」

 これは厳然たる事実でしかなかった。
 おうとはその人生すべてを捧げて初めてその座に就くことをゆるされるものだ。
 公も私も結局はその役割の上に成り立つものであり、おうである限りおうというものから逃げることは不可能。死ぬときも、死んだ後もおうというものに縛られる。おうになった瞬間、その人物はおう以外になることはできない。

「白龍公の懸念は追々おいおいご教授願います。至らぬところばかりの私です、いくらでも言いたいことはあるでしょう。ですがそれを含めて、白龍公には苦労をしてもらいます。その代価として、私はおうでありましょう」

 これは契約である。
 レクティファールは自分をすがめるように見るカールに宣言した。
 初代皇王と初代白龍公が生存圏の確保を目的に皇国を守る契約を結んだことと同じく、第十代皇王と第二代白龍公もまた、ここで一つの約定をかわそう。
 皇国とそこに住むすべての者に対する責任を果たすため、自分がおうとして在り続ける限り、白龍公カールはこの皇国のためにすべてをなげうつ、と。

「白龍公カール。返答は如何いかに」

 レクティファールの静かな声に、カールはこうべを垂れた。
 不満はある。不安もある。しかし、希望もある。

「白龍リンドヴルムのカール。つつしんで、その任うけたまわりまする」

 その希望の上に、ここに新たな契約が成った。


         ◇ ◇ ◇


 大神殿中庭の中央にある小さな人工林。四季折々の風景で大神殿を訪れた人々を楽しませてくれるそれは、実はそのただ中にあるたった一つの建物を隠すために植えられたものだ。
 その建物、周囲の壁を半透明の硝子ガラスで形作られたそれは、その存在を知る大神殿職員の間では単に〈温室グラ・ゾウス〉と呼ばれている。元々は神話の四季神を表す古代語だ。薬草や薬木、調味料や香茶こうちゃとして親しまれる香草の類を栽培しているため、その名は確かに正しいと言えた。歴史は古く、大神殿がこの場所に建てられた頃から存在しているという。
 だがその実状は別だ。
 温室の中に作られた四阿あずまやは日頃職員たちのいこいの場としてその役割をまっとうしているが、本来の役割は、大神殿においては禁忌とされているまつりごとを行う場所、密かに神殿に集まった皇国の重鎮たちが極秘の会談を行う施設だった。
 表向きまつりごとに関われない神殿だからこそ、こういった施設を作るには最も適している。誰もが「そんなはずはない」と思う場所こそ、身を隠すには相応ふさわしい。そして事実として、〈温室グラ・ゾウス〉にはそのための機能が備わっている。
温室グラ・ゾウス〉そのものが魔法障壁によって強固な城塞と化し、四阿あずまやは内部からの一切の音と光を遮断し、術式設定された人物以外、城塞化した温室内に入ることは不可能。周囲には護衛を兼ねた神衛しんえい騎士団の精鋭たちが密かに配されており、万が一の事態に備えていた。
 常であれば、大神殿の中庭で発生する非常事態など、会談が行われていることを知らずに聖職者や職員が迷い込むことぐらいしかない。騎士団の任務もそれを確保して追い返す程度のことだった。
 だが、今日これからここで会談する者たちの肩書きを考えれば、どれだけの騎士を配しても十分過ぎるということはない。

「皇太子殿下、ご入来じゅらい!」

 だからこそ、白龍公カール・フォン・リンドヴルム公爵の高らかな宣告で、騎士たちの緊張感は一気に頂点に達した。そしてこの後、会談が終わるまでその緊張を解くことは一切許されていなかった。
 彼らは木々の中に身を潜ませながら、カールの後背に立つ青年に様々な感情を込めた視線を送った。
 聖都大神殿所属の神衛しんえい騎士としてこの場を動くことはできずとも、皇国の民として思うことはある。だからこそ、そう、騎士であり、同時に民だからこそ新たな皇太子に期待せずにはいられない。そんな想いが混交し、複雑な視線となって一人の青年に向けられていた。
 宣告より数秒後、彼らの前で扉は開かれ白龍公と皇太子が温室の中に入っていく。扉をくぐる直前、皇太子は〈温室グラ・ゾウス〉の周囲をぐるりと見渡して微笑んだ。
 気付かれた――騎士たちがお互いの驚いた顔を確認して視線を戻したときには、すでに皇太子の姿はなかった。
 彼らは再び互いの顔に浮かんだ苦笑いを認め、大きく溜息を吐いた。
 明日から、もっと厳しい修練を積まなくてはならない、と。


 暖かな空気満ちる温室の中を、レクティファールはカールを追うように歩いていた。
 人が歩けるように道は整備されていたが、その歩道は何カ所か枝分かれしており、ここに初めて来たレクティファールには迷路のようにも感じられた。
 彼自身は気付いていないが、〈皇剣〉にはこの温室の構造も記録されている。それを情報として引き出せないという事実が、彼が〈皇剣〉を使いこなせていないことを如実に表していた。
 そして最大の問題は、それを本人が自覚していても一朝一夕でどうにかなる問題ではないということである。
 皇太子となった者は皇王のもとで中長期にわたって君主としての教育を受けるが、その中には当然〈皇剣〉の扱いに関することも含まれている。〈皇剣〉を理解できる者は〈皇剣〉使いである皇王のみであるから、その教育は皇王自身が行うことになる。というよりも、他に選択肢がない。
〈皇剣〉製造の技術が失われた現在、その機構や構造を理解しているのは皇王以外にいないからだ。
 だが、今の皇国に皇太子はいても皇王はいない。よって、皇太子に〈皇剣〉の何たるかを教える者は誰ひとりとして存在しない。確かに〈皇剣〉を兵器や歴史的遺構として研究している者は少なくないし、彼らの残した研究資料もある。その資料を分析した書物もある。それらの情報は一定以上の知識を持つ者にとってそれほど理解に手間取るものではない。
 ただそれは、〈皇剣〉の持つ膨大な情報のほんの一部分に過ぎず、〈皇剣〉使いにとってはほとんど意味のない瑣末さまつな情報なのだ。
 第一次文明時代の〈失われた記録たちロズリ・ミズリグ〉を含む、世界の構造さえ記録されているという〈皇剣〉の前に、人の身で得られる知識がどれほどの役に立とうか。
 それを証明するように、これまでの皇太子の教育には一〇年を越える年月が費やされてきた。逆に言えば、皇国内外で揃えられる最高の頭脳集団に、皇王自身も加わってなお、皇太子が〈皇剣〉を満足に使用できる状態になるまでそれだけの年月が必要だった。
 そこまでの教育が受けられないレクティファールが皇太子としての役割に耐えられるのか、正直なところカールにも判断できない面がある。それでもカールの歩みが止まることがないのは、先ほどのレクティファールの言葉と態度を直に見て、十分信ずるに足るとの答えを得たからに他ならない。
 これからレクティファールが相対する相手はいずれもカールに比肩ひけんする才覚の持ち主だったが、それでも何とかなるのではないかと思えた。
 単純な経験や知識などの問題ではない。レクティファールの人としての本質に、おうとしての本質に賭けてみようと思った。
 娘が心に決めた相手が凡夫ではないと信じたかったのかもしれない。

「――殿下、先ほど私が申し上げたこと、十分に留意なされませ。さすれば、これから紹介する者たちも殿下をあなどり軽んずることありますまい」

 そう言って注意を促せば、かの人物は笑って答えた。

あなどられることも軽んじられることももう諦めました。その上で相手を黙らせてこその主君でしょう」
「――御意ぎょい

 カールは密かに胸をで下ろした。
 優しさだけの男ではない、強さだけでもない、これぞ仕えるに足る主君の片鱗ではないか。そう自分に言い聞かせて納得できたことが、彼にとっての幸運だった。
 しばらく緑の中を進み、カールは自らの視界に現れた四阿あずまやに意識を向けた。その中で待つ同胞たちのことを考え、眉根を寄せる。


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