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第五章:因果去来編
第四話「人形狂想曲」その五
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マイセルたちが目的地である第六研究塔に足を運ぶと、そこには彼らよりも遥かに年嵩と分かる人々が行き来していた。
マイセルたちふたりのような初等部の生徒はほとんどいない。
しかし、人々はマイセルたちを一瞥することはあっても、場違いであるという認識はしていないようだった。
「いやあ、よかったぜ。実を言うと、警備員に追いかけられるかもとか思ってたからな」
「なんだい、それ。お願いだから家の者を喚ばれるような真似に巻き込まないでよ」
「ははははっ、悪い悪い!」
この国において、成人試験に合格しないかぎり、何人たりとも一人前とは看做されない。
逆にいえば、どんな幼子であろうとも成人試験に合格し、国民としての義務を果たすようになれば、ひとりの国民としての権利を誰憚ることなく行使することができた。
(そのあたりは、うちも見習って欲しいな。そうすれば、僕もはやく一人前になれるのに……)
帝国では年齢によって成年を定めている。
それ以下の年齢では、どれだけ優秀であっても子どもであり、どれだけ愚昧であっても大人とされていた。
(おかしな話だよ。本当に)
マイセルは間違いなくその年齢に見合わない頭脳を持っていた。
しかし同時に、その年齢相応の子どもらしさも持っていた。
彼は子どもらしい思い切りのいい思考で世界を見ており、自分の故郷の状況も同じように見詰めていた。
(姉上は、たぶん気付いてないよね……)
マイセルは自分の姉マティリエが、為政者としてはまったくと言っていいほどその能力を備えていないことを知っていた。
無知でも無能でもない。ただ、適性があまりにもなかった。
マティリエは政治には関わるべきではない。それは彼女の父、弟、そして夫の共通した認識。示し合わせたわけでも、認識の共有を図った訳でもない。ただ冷静にマティリエを観察すると、そのような結果になるだけだ。
「ネイ教授の研究室は七階になります。あちらの昇降機をお使いください」
「ありがとうございます」
研究棟の受付で目的地の場所を訊ね、ふたりは揃って礼を述べる。
揃いの仕着せの受付係の女性は、相手が誰であっても態度を変えることはなかった。
「やっぱり直臣ともなると違うね」
「そうだなぁ」
皇立機関の職員は総て皇王家直臣である。その原則通り、先ほどの女性もまたマイセルの義兄の臣下ということになる。
彼女たちは皇王家という歴史ある看板を背負い、皇王家の顔として人々に接する。その態度が洗練されたものになるのは自然なことだった。
「お前の家にもいたんだろう、召使いだか、家臣だか」
「いたけど、少なかったよ。父上は無駄がお嫌いだからね。その分、外の孤児院とかに人をやっていたから」
「すごい親父さんじゃないか。自慢だろ?」
「――まあね」
マイセルはバーンツの言葉に頷きはしたものの、素直にそれを認めることはしなかった。
父が尊敬に値する為政者であることは分かっている。しかし、未だに父が帝王の座を諦めたことは納得していなかった。
自分が生まれる前のことだと分かっていても、父ならば祖国の窮状を変えられると信じていた。信じているからこそ、納得できなかった。
「――もっと、自慢したいんだけどね」
「ん? おっと、ちょうど昇降機きてるな。急ごうぜ!」
「わっ」
バーンツはマイセルの手を引き、昇降機乗り場へと駆け出す、彼らの足音が聞こえたのか、昇降機の中で研究衣をきた若い男が扉を開けて待っていてくれた。
「何階だい?」
「七階、です」
息を整えながら目的地を告げると、男は七階の釦を押して点灯させた。
七階に辿り着くまでに息を整えられるだろうか、マイセルは少しだけバーンツを恨んだ。
◇ ◇ ◇
ギヨーム・ネイという責任者の名前が掲げられた研究室は、昇降機を降りたずっと奥にあった。
途中何カ所も他の研究室の前を通り過ぎたが、大半の研究室は人の気配もなかった。
いずれの部屋にも教授、或いは準教授の名前が掲げられていたから、単に留守だったのだろう。
ふたりは静かな廊下を進み、目的の扉の前で居住まいを正した。
「恐い人じゃなきゃいいけど」
「恐いだけのひとだったら教授にはなれないよ」
それもそうかとバーンツは自分を納得させ、扉の横についていた呼び鈴を鳴らす。
すぐに研究生らしい若い男が顔を出した。
「ん? 君たちは?」
「あの、初等部の専攻希望を持ってきました。教授にごあいさつできますか?」
「うちに? 珍しいな」
男はふたりが持っている希望申請書を一瞥して表情を緩ませる。
彼がこの研究室にきてから、初等部の生徒が専攻希望を出してくるのは初めてのことだった。
初めて研究に触れるような年齢の生徒がこうして訪ねてくると、自分たちの研究が世間に認められたような気分になる。
「あ」
しかし、すぐに大事なことを思い出す。
男は研究室内を振り返り、部屋の奥で教授と言葉を交わしている人物を見て、困ったように顔を顰めた。
その表情に、バーンツが不安そうな声を上げる。
「あの、なにか書類に不備でも? それとも研究生は取っていないとか」
「いや、そうじゃないんだ。今、教授にお客さんが来ていてね」
バーンツはなるほどと頷いた。
「それじゃあ、仕方がないですね。もういちど出直します」
「ごめんね。うちの教授のことだし、今日中には君たちを訪ねていくと思うけど……」
「そんな、お忙しいようですし、後日改めて挨拶に来ます」
「そうかい? あ、念のために君たちの名前を確認させてくれる? あと寮の部屋も」
「わかりました」
ふたりはそれぞれ名前と寮の部屋番号を告げ、希望申請書を手渡す。
男は申請書の名前と自分が書き取った名前が間違っていないか確かめ、何度も頷いた。
「うん、間違いないね。――あれ? 君の名前、どこかでみたような気がするんだけど……」
男はマイセルの申請書を見て、何度も首を傾げた。
自分のような研究一辺倒の男が初等部の生徒と接点など持ちようもないはず、と疑問に思っているようだった。
マイセルは同じような経験をこれまでに何度もしてきた。
だから、彼はこれといって気分を損ねた様子もなく、自分の身分を明かした。
「僕の姉は、陛下の後宮にいます」
「ああっ!」
男は一瞬目を見開くと、納得したように大きく頷いた。
「そうか、マティリエ様の!」
「はい」
マイセルは苦笑を浮かべたくなるのを堪え、努めて温和な微笑を浮かべた。
王族としての嗜みである。
だが、その表情はすぐに驚愕へと取って代わった。
「――マイセル?」
部屋の中から、ほぼ毎日のように聞く声が聞こえてきたからだ。
その声は、毎日毎日、寮の食堂にある虚映受像機から聞こえてきた。その都度、彼は姉のことを思い出し、父のことを思い出し、祖国へと思いを巡らせるのだ。
ゆえに、彼は驚きと共に研究室を覗き込んだ。
「義兄上……!」
「やあ、よく学んでいるようだね、マイセル」
マイセルの義兄にしてこの国の皇王、レクティファールは、驚く義弟に柔らかな笑みを向けた。
隣にいるバーンツが水から上がった魚のように口を開け閉めしていることにも気付かないまま、マイセルはなんとか一礼した。
「ご無沙汰しております、陛下」
「うん。君も元気そうでなによりだ」
「あの、今日は……」
そこまで言葉を紡いで、マイセルはレクティファールの隣に見覚えのない女性がいることに気付いた。
(お妃様じゃない。愛妾様? いや、それとも違うような気がする)
マイセルはレクティファールの周囲にいる女性について、姉マティリエから詳しい為人を聞いていた。その範囲は妃だけではなく愛妾にも及び、数としては百を優に超える。だから初めて顔を合わせる相手であっても、その特徴から大凡どのような人物か予想することができた。
しかし、今マイセルの目の前にいるのは、その誰でもなかった。
「ミスター、どちら様ですか?」
「義理の弟だよ、フロイライン。お嬢様」
「――その呼称は不適当ではありませんか?」
「君の姿はそれに相応しいさ。十分ね」
とはいえ、義兄とのやりとりは非常に軽妙で、上辺だけの付き合いとは思えない。
こうなると答えはごく限られてくるが、マイセルはそれをぼかして確認するほどの余裕がなかった。
「あの、義兄上、この方は、新しいお妃様でしょうか?」
『いいえ』
返事は義兄と女性の両方からあった。
そして、女性はさらにひとこと続けた。
「わたしはミスターの備品です」
「義弟の成長に著しい悪影響を与える自己紹介はやめてくれませんかねぇ!?」
悪影響かどうかは分からないものの、彼女の存在はマイセルに多大なる影響を与えることになった。
彼は紅潮した顔で頷き、動揺で掠れた声を上げた。
「はっ、なるほど、分かりました……!」
このときマイセル八歳。
彼が初めて恋愛感情を抱いたのは、異世界の女性型機械だった。
マイセルたちふたりのような初等部の生徒はほとんどいない。
しかし、人々はマイセルたちを一瞥することはあっても、場違いであるという認識はしていないようだった。
「いやあ、よかったぜ。実を言うと、警備員に追いかけられるかもとか思ってたからな」
「なんだい、それ。お願いだから家の者を喚ばれるような真似に巻き込まないでよ」
「ははははっ、悪い悪い!」
この国において、成人試験に合格しないかぎり、何人たりとも一人前とは看做されない。
逆にいえば、どんな幼子であろうとも成人試験に合格し、国民としての義務を果たすようになれば、ひとりの国民としての権利を誰憚ることなく行使することができた。
(そのあたりは、うちも見習って欲しいな。そうすれば、僕もはやく一人前になれるのに……)
帝国では年齢によって成年を定めている。
それ以下の年齢では、どれだけ優秀であっても子どもであり、どれだけ愚昧であっても大人とされていた。
(おかしな話だよ。本当に)
マイセルは間違いなくその年齢に見合わない頭脳を持っていた。
しかし同時に、その年齢相応の子どもらしさも持っていた。
彼は子どもらしい思い切りのいい思考で世界を見ており、自分の故郷の状況も同じように見詰めていた。
(姉上は、たぶん気付いてないよね……)
マイセルは自分の姉マティリエが、為政者としてはまったくと言っていいほどその能力を備えていないことを知っていた。
無知でも無能でもない。ただ、適性があまりにもなかった。
マティリエは政治には関わるべきではない。それは彼女の父、弟、そして夫の共通した認識。示し合わせたわけでも、認識の共有を図った訳でもない。ただ冷静にマティリエを観察すると、そのような結果になるだけだ。
「ネイ教授の研究室は七階になります。あちらの昇降機をお使いください」
「ありがとうございます」
研究棟の受付で目的地の場所を訊ね、ふたりは揃って礼を述べる。
揃いの仕着せの受付係の女性は、相手が誰であっても態度を変えることはなかった。
「やっぱり直臣ともなると違うね」
「そうだなぁ」
皇立機関の職員は総て皇王家直臣である。その原則通り、先ほどの女性もまたマイセルの義兄の臣下ということになる。
彼女たちは皇王家という歴史ある看板を背負い、皇王家の顔として人々に接する。その態度が洗練されたものになるのは自然なことだった。
「お前の家にもいたんだろう、召使いだか、家臣だか」
「いたけど、少なかったよ。父上は無駄がお嫌いだからね。その分、外の孤児院とかに人をやっていたから」
「すごい親父さんじゃないか。自慢だろ?」
「――まあね」
マイセルはバーンツの言葉に頷きはしたものの、素直にそれを認めることはしなかった。
父が尊敬に値する為政者であることは分かっている。しかし、未だに父が帝王の座を諦めたことは納得していなかった。
自分が生まれる前のことだと分かっていても、父ならば祖国の窮状を変えられると信じていた。信じているからこそ、納得できなかった。
「――もっと、自慢したいんだけどね」
「ん? おっと、ちょうど昇降機きてるな。急ごうぜ!」
「わっ」
バーンツはマイセルの手を引き、昇降機乗り場へと駆け出す、彼らの足音が聞こえたのか、昇降機の中で研究衣をきた若い男が扉を開けて待っていてくれた。
「何階だい?」
「七階、です」
息を整えながら目的地を告げると、男は七階の釦を押して点灯させた。
七階に辿り着くまでに息を整えられるだろうか、マイセルは少しだけバーンツを恨んだ。
◇ ◇ ◇
ギヨーム・ネイという責任者の名前が掲げられた研究室は、昇降機を降りたずっと奥にあった。
途中何カ所も他の研究室の前を通り過ぎたが、大半の研究室は人の気配もなかった。
いずれの部屋にも教授、或いは準教授の名前が掲げられていたから、単に留守だったのだろう。
ふたりは静かな廊下を進み、目的の扉の前で居住まいを正した。
「恐い人じゃなきゃいいけど」
「恐いだけのひとだったら教授にはなれないよ」
それもそうかとバーンツは自分を納得させ、扉の横についていた呼び鈴を鳴らす。
すぐに研究生らしい若い男が顔を出した。
「ん? 君たちは?」
「あの、初等部の専攻希望を持ってきました。教授にごあいさつできますか?」
「うちに? 珍しいな」
男はふたりが持っている希望申請書を一瞥して表情を緩ませる。
彼がこの研究室にきてから、初等部の生徒が専攻希望を出してくるのは初めてのことだった。
初めて研究に触れるような年齢の生徒がこうして訪ねてくると、自分たちの研究が世間に認められたような気分になる。
「あ」
しかし、すぐに大事なことを思い出す。
男は研究室内を振り返り、部屋の奥で教授と言葉を交わしている人物を見て、困ったように顔を顰めた。
その表情に、バーンツが不安そうな声を上げる。
「あの、なにか書類に不備でも? それとも研究生は取っていないとか」
「いや、そうじゃないんだ。今、教授にお客さんが来ていてね」
バーンツはなるほどと頷いた。
「それじゃあ、仕方がないですね。もういちど出直します」
「ごめんね。うちの教授のことだし、今日中には君たちを訪ねていくと思うけど……」
「そんな、お忙しいようですし、後日改めて挨拶に来ます」
「そうかい? あ、念のために君たちの名前を確認させてくれる? あと寮の部屋も」
「わかりました」
ふたりはそれぞれ名前と寮の部屋番号を告げ、希望申請書を手渡す。
男は申請書の名前と自分が書き取った名前が間違っていないか確かめ、何度も頷いた。
「うん、間違いないね。――あれ? 君の名前、どこかでみたような気がするんだけど……」
男はマイセルの申請書を見て、何度も首を傾げた。
自分のような研究一辺倒の男が初等部の生徒と接点など持ちようもないはず、と疑問に思っているようだった。
マイセルは同じような経験をこれまでに何度もしてきた。
だから、彼はこれといって気分を損ねた様子もなく、自分の身分を明かした。
「僕の姉は、陛下の後宮にいます」
「ああっ!」
男は一瞬目を見開くと、納得したように大きく頷いた。
「そうか、マティリエ様の!」
「はい」
マイセルは苦笑を浮かべたくなるのを堪え、努めて温和な微笑を浮かべた。
王族としての嗜みである。
だが、その表情はすぐに驚愕へと取って代わった。
「――マイセル?」
部屋の中から、ほぼ毎日のように聞く声が聞こえてきたからだ。
その声は、毎日毎日、寮の食堂にある虚映受像機から聞こえてきた。その都度、彼は姉のことを思い出し、父のことを思い出し、祖国へと思いを巡らせるのだ。
ゆえに、彼は驚きと共に研究室を覗き込んだ。
「義兄上……!」
「やあ、よく学んでいるようだね、マイセル」
マイセルの義兄にしてこの国の皇王、レクティファールは、驚く義弟に柔らかな笑みを向けた。
隣にいるバーンツが水から上がった魚のように口を開け閉めしていることにも気付かないまま、マイセルはなんとか一礼した。
「ご無沙汰しております、陛下」
「うん。君も元気そうでなによりだ」
「あの、今日は……」
そこまで言葉を紡いで、マイセルはレクティファールの隣に見覚えのない女性がいることに気付いた。
(お妃様じゃない。愛妾様? いや、それとも違うような気がする)
マイセルはレクティファールの周囲にいる女性について、姉マティリエから詳しい為人を聞いていた。その範囲は妃だけではなく愛妾にも及び、数としては百を優に超える。だから初めて顔を合わせる相手であっても、その特徴から大凡どのような人物か予想することができた。
しかし、今マイセルの目の前にいるのは、その誰でもなかった。
「ミスター、どちら様ですか?」
「義理の弟だよ、フロイライン。お嬢様」
「――その呼称は不適当ではありませんか?」
「君の姿はそれに相応しいさ。十分ね」
とはいえ、義兄とのやりとりは非常に軽妙で、上辺だけの付き合いとは思えない。
こうなると答えはごく限られてくるが、マイセルはそれをぼかして確認するほどの余裕がなかった。
「あの、義兄上、この方は、新しいお妃様でしょうか?」
『いいえ』
返事は義兄と女性の両方からあった。
そして、女性はさらにひとこと続けた。
「わたしはミスターの備品です」
「義弟の成長に著しい悪影響を与える自己紹介はやめてくれませんかねぇ!?」
悪影響かどうかは分からないものの、彼女の存在はマイセルに多大なる影響を与えることになった。
彼は紅潮した顔で頷き、動揺で掠れた声を上げた。
「はっ、なるほど、分かりました……!」
このときマイセル八歳。
彼が初めて恋愛感情を抱いたのは、異世界の女性型機械だった。
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