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5話 謎の生命体
しおりを挟む「じゃあ話の続きよ。彼が来るまでに終わらせないとね、………アンは基本的には此処で貴女と暮らすわ。食事も排泄も人間と殆ど変わらないから安心してちょうだいね。違うのは美しい容姿と後は魔法が使えるって事と、異常な肉体の耐久性かしらね。………生身の彼とダンプカーが衝突したらダンプカーが吹っ飛ぶんだから」
その言葉に美姫は一瞬ゾクリとした。もしアンノウンが力加減を間違えたらグシャリと片手でひねり潰されるんじゃ無いかと思ったからだ。だけど斎藤はクスクス笑っている。
「大丈夫よ。日常生活を送る上でこの一週間彼が物を壊した事は無いし、小動物とも問題無く触れ合える。通常は普通の人間と同じだと思って大丈夫。不思議だけど未知の生命体だから。魔法なんてファンタジーな物まで有るんだもの。驚いてたらきりが無いから美姫も慣れなさいね」
クスクス笑う斎藤に美姫もクスクスと笑う。
「はい。………ふふふなんだかアニメとか少女漫画みたいです。主人公になった気分。少し楽しいです」
「あら?ふふふ。本当に美姫は前向きなのね。………彼が貴女を選んだ理由もわかる気がするわね」
「え?………でも彼とはまだ殆ど会話もしてないし。どうして私なのか不思議です。………凄く嬉しいですけどね!!!」
グッと拳を握ってそう言うと斎藤はまたクスクス笑う。
「………そう思って貰えて助かるわね。本当。無理矢理に謎の生命体と結婚させるなんてどうかと思ってたけど貴女がそうやって明るく言ってくれて良かったわ」
「…………謎の生命体。確かにそうですね。……でも、助けてくれましたから。本当に怖くは無いんです。それにアンノウンってイケメンですし」
ポツリとそう呟くと斎藤は爆笑した。
「あははははは!!!!そうよね!!!美姫くらいの歳ならイケメンかどうかは大切よね!!!!あははははは!!!」
「あははは……………」
顔を赤くして美姫も笑う。
(……………本当に夢みたい。楽しい。ちさ姉か、………嬉しいなぁ、家族が出来たみたい)
「おっと、また脱線しちゃったわ。ごめんね。美姫とのお喋りが楽しくて………。うふふ。おっとと、それじゃ続きね」
その後斎藤が話した内容はアンノウンは基本的に美姫とこのマンションで暮らす。呼び出しがあれば各地へ飛んで魔物を殺してまたここに戻って来る生活になる様だ。美姫は今まで通り高校に通い。卒業したらアンノウンと籍を入れる事になるそうだ。アンノウンが異世界から来た未知の生命体だと言う事は家族にも友達にも絶対に秘密だと言われた。万が一知られた場合でもアンノウンの魔法で記憶を消せると聞かされて美姫は驚く。だが、家族とは会う事も殆ど無い。美姫が眠っていた間、事故で入院したと家族には連絡を入れたそうだが家族の誰も一度もお見舞いには来ず。父親の部下が一度様子を見に来て着替えを置いて行っただけだったようだ。だから家族にバレる心配は無い。友達も居ないので問題は無い。
(うん。なら特に心配は無いかな。)
生活も国から手当が毎月振り込まれるのでなんの問題も無い。バイトも辞めるようにと言われた。と言うか起きたら辞めた事になっていた。国の力は凄い。
(ちさ姉はアンノウンとただ楽しく過ごせば良いって言うけど、本当にそれで良いのかな?)
斎藤は美姫に難しい話は殆どしなかった。手続きやその他の事も全て眠っている間に終わっていた。言われてもわからないのでそれは問題は無い。だけどただアンノウンと楽しく普段通りに生活をして欲しい。普通の恋人のようにとそれだけ言われても美姫は困る。
(普通ってなんだろう?恋人なんて居たこと無いし…。折角だからデートとか……してみたいな。しても良いんだもんね?)
アンノウンの容姿は目立つが色付きの眼鏡を掛ければ外出の許可は出ているそうだ。瞳を隠すとイケメンはイケメンだがまだ地球に居てもおかしく無いレベルにはなる。髪色も今の時代なら珍しくも無い。
(でも離れた所で監視は付くんだ?そりゃそうだよね。ふーん)
貰った資料に目を通しながら美姫は斎藤の話を引き続き聞く。
「アンはどうやったのかはわからないけど、多分魔法かしら?こちらの文化や言葉、知識などを持っているから常識の違いで困る事は無いと思うわ。本当ふざけた生き物だわ。地球上の全部の言語や知識をたったの一週間で把握したんだもの。敵には回したくないわ……。本当にね」
「わあ、凄い。アンノウンって凄いんですね。そんな人と私が夫婦。……とりあえず今は恋人?」
美姫の言葉に斎藤は頷く。
「そうね、恋人よ。美姫がしないとならない事はこれと言って無いわよ。………怒らせないようにだけ気をつけて欲しいけど。大丈夫だとは思うけどね。でも気をつけてね」
そう言う斎藤の顔は心配そうだ。
(………そう言われると少しだけ心配だなぁ)
その時プルルと斎藤の携帯が鳴った。アンノウンが到着したのだ。
(っ…………緊張するよぉ。)
◆◆◆◆◆◆
「ミキ、貴女が私の恋人だなんて。未だに信じられない。…………早く貴女を妻に迎えたい」
再会した途端ぎゅうっと抱きしめられて美姫はまた顔が真っ赤になる。アンノウンの背は高い。180センチくらい有るし細身なのに意外と筋肉がついている。対して美姫の身長は158センチ。抱きしめられるとすっぽりと包み込まれる。
(っ………いい匂いするぅ。うぅ恥ずかしいなぁ。でも嬉しい。トクントクンって音がしてる)
ぎゅうっと目を閉じると少しだけ早い鼓動が聞こえてくる。それに仄かに甘い良い匂いとアンノウンの体温。それに美姫は何故か凄く安心する。
(人ってこんなに温かいんだ)
親からも抱きしめられた事なんて殆ど無い。思わずスリスリと擦り寄ると痛く無いくらいの強さで更にぎゅうっと抱き込まれる。
「ミキ。貴女を手に入れられて私はとても幸運だ。…………なんて可愛いのだろうか。柔らかでずっとこうして腕の中に閉じ込めておきたい」
甘い声を出すアンノウンに美姫の胸は高鳴った。
(運が良いのは私だよ。……凄く幸せ。私もこうして居たいな)
玄関で抱き合う二人を微笑ましく眺めて斎藤は帰って行った。アンノウンと美姫は二人きりだ。
「ミキ、貴女の事をもっと知りたい。奥に行こう」
急に抱きあげられて美姫は驚いてアンノウンの首にぎゅうっと抱きつくとアンノウンはクスクスと笑った。
「大丈夫。落としたりはしない。貴女はこの見知らぬ世界で見つけた私の大切な宝物ですから」
「ひぃ………」
甘く耳元で囁かれて美姫は顔が真っ赤になって俯いてしまう。
(ううう。無理ぃイケメン過ぎる。)
そんな美姫に対して気分を害した様子も無くアンノウンは楽しげに笑っている。
「本当に可愛いな。……………神に感謝しなくては」
そうポツリとアンノウンは呟いた。
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