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14話 個性的な面々
しおりを挟む「では、改めて自己紹介をさせて貰おう……。構わないか?液人?」
獅子人がドクターへと問うと、ドクターはニッコリと微笑んだ。
「ええ。勿論……ですよ。さあ千絵さん。貴女も、自己紹介をなさってはどうですか?」
そっと背を押されて、千絵は三人の雄の前にしっかりと立った。
千絵を見つめる6つの瞳。そのどれもが、違った形だ。姿形が全く違うのだから、無理も無い。
千絵が格好良いなぁと思った、獅子人の青年は頭部の上半分がライオンで、白目が黒くて瞳は黄色い。不思議な感じだが、口元と鼻は人間に近く。整った造形なので凄くイケメンに見える。ミュージカル等の特殊メイクの様だ。だけど胸元から覗くフサフサとした赤茶の体毛と鬣は作り物じゃ無いとすぐに分かる。
(…………ワイルドで……やっぱり格好良いなぁ……♡)
千絵は、視線を少しずらす。その横の馬人の青年は、上半身だけ見れば、人間と殆ど変わらない。まるで中世の貴族の様だ。首元と袖口にフリルの付いた、少し変わったボディースーツ。腰までの豊かな金の髪は編み込まれていて、とてもお洒落。そしてその顔は、モデルの様に整っていて、青い瞳と白い歯がキラリと輝く、タレ目でとても優しそうなイケメンだ。映画で見た野生的な見た目のケンタウロスとは全然違う。優雅だ。
(うっわー。本当にイケメン。この馬人さん。………下半身見なきゃ人間と勘違いしちゃいそう。………ううん。どっちかと言うとエルフみたい。)
だが視線を下にやると、どっしりとした下半身は完全に馬だ。尻尾がパシンパシンと揺れている。
そして、その横に視線をずらすと最後の雄。甲殻人の青年だ。頭にヘルメットの様に赤い何かを被っている。よく見ると蟹や海老の殻の様な物だ。甲殻人と言うくらいだから、きっと体の一部なのだろう。赤い目が殻の隙間から光って、千絵を見つめている。口元は人間とそう変わらないが、頬の横から時折口元を覆う様に殻が動いている。完全に顔を殻で覆う事も出来るみたいだ。体も腕や肩に硬そうな殻が付いている。鎧を着ているようにも見える。
(わあ…………。凄く固そう。……触ってみたいなぁ)
じっと見てると甲殻人の青年の背中から、蟹の脚の様な物が生えた。ギチギチと音を立てて動いている。ポカンと眺めて居ると千絵に向かって伸びて来た。
「ひゃあ!!!!!」
驚いて千絵が悲鳴を上げると、ドクターがそっと肩を抱いてくれた。
「大丈夫ですよ。千絵さん、…………ふふ、随分気が早いですね?甲殻人No.8番さん。脚はしまってくださいね。」
「……………………ごめんなさい。……驚かせて……、嫌わないで……お願い」
すぐに脚は背中の後ろに消えていった。そして甲殻人の青年はしょんぼりして、千絵に頭を下げた。
「あ、い……いえ。大丈夫です。少しだけ驚いただけですから」
そう千絵が答えると甲殻人は口元が隠れた。
「はっ!!!俺にブツブツ文句を垂れた割には、お前も人間の雌を驚かせているじゃ無いか!!!…………ククッ」
獅子人が、甲殻人に指を差して笑うとギチギチギチと甲殻人の青年から音がした。
「黙れ………。うるさい」
「全く。…………キミ達、此処で喧嘩は止めてくれないカナ?人様が怯えてしまうだろウ?………大丈夫ダヨ。人様。彼らは戯れているだけなんダ。……怖くないヨ」
そう言って、呆れたように言う馬人の青年。それを見て、千絵はクスクスと笑った。
(なんだか。凄く個性的な人達だなぁ。………でも楽しく過ごせそうで良かった)
「ハハ、人様が笑ってくれたヨ?………緊張が解けたのカナ?……良かったネ。キミ達、お手柄だヨ。」
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