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5話 液状人種
しおりを挟む「どうかな?お気に召した相手は居るかな?出来る限り君の希望に沿う形で相手を選ぼうとは思う。勿論健康状態や多少の相性は調べてからになるけどね。……それにその前に君の体に処置を施す必要が有る。……………安心して良い。痛みは無い。」
じーっと窓にへばりつく様に下を眺めていた千絵は神人の言葉にまたハッとした。
(またやっちゃったぁ。………えっと体を少しだけイジるって言ってたよね?………本当にしないよね?それとも少しだけエッチな番組だから……、少しエッチな事されちゃうの?やだぁ。ドキドキして来た……)
千絵は顔が赤くなる。きっと変な事はされないと思っていても、恋人も余り居たことの無い千絵はそう言うことに免疫が無い。今回のドッキリの設定は刺激が少し強い。だから嘘だと分かっていてもドキドキしてしまう。
(うう………やだなぁ。今のこれもカメラで撮られてるんだよね?顔赤くなってて恥ずかしい………)
そっと頬を手で抑えると神人がクスリと笑うのが聞こえて千絵は更に顔を真っ赤にして俯いた。
(恥ずかしいよぉ…………)
▶▶▶▶▶▶
また神人に連れられて廊下を歩く。次に連れて来られた部屋は清潔な病室みたいな部屋だった。だけど消毒の匂いじゃなくて甘い、いい匂いがする。
「ドクター。…………待望の人類種【人間】の雌を連れて来たぞ。」
何も無い空間に神人は声をかける。千絵はポカンとした。
「あ。あの?そこには誰も居ませんよ?」
今部屋の中に居るのは千絵と神人だけだ。シンプルな机の上に半透明のプラスチック製の入れ物が有るが中身はドロドロとした液体。それだけしか無い。なのに神人はソレに声を掛けた様に千絵には見えた。
(…………と、とりあえず突っ込み(?)してみたけど、どうかしら?)
勇気を出して突っ込んでみたがテレビ的に間違っていたらどうしようと胸がドキドキする。
「ん?ああ。…………流石に君でもこれは驚くかな?………ドクター?恥ずかしがって無いで早くしてくれ。ドクター?寝ている訳ではあるまい?」
神人はつんつんとプラスチック製のケースの側面を叩く。すると中身がうねうねと動き出した。それから中身がボコリと隆起して個体になった。スライムのような薄緑色の半透明のソレは意思を持ったようにケースから溢れて床に落ちた。そしてポコポコとその質量を増やすと半透明の人間(?)になった。
「……………寝てませんけど………。ですけど、アポも無しにいきなり来ないでくれませんか?こっちにだって………心の準備という物が有る………ですよ。……うぅ……。こんな姿ですみません………ですよ。」
半透明の人間に見える青年。髪型はボブヘアで顔の造形は海外のモデルさんの様に整っている。背は高くスタイルが良い。だが全身が薄緑色で体が透けて居る。下半身はツルンとして何も無い。服も何も纏っていないから余計にそれがよくわかる。
(え?………こんなの、どうやって?)
千絵は青年をじっと見つめてそれから気絶した。
神人と青年の叫び声が聞こえた気がした。
▶▶▶▶▶▶
「う……ん?」
千絵が目を覚ますと先程ドクターと呼ばれた青年が千絵を見下ろしていた。その肌は普通の人の肌で体は透けていないし服もしっかりと来ている。ピチッとしたSFチックな全身スーツに白衣。
「目が、覚めました……ですね?よろしい。呼吸も問題は無さそうだ。はあ……、ホント良かったです。貴重な人類の雌がワタシを見てショック死なんて………。洒落になりません……ですよ。」
ドクターと呼ばれていた青年はホッとしたように息を吐いてから千絵に微笑んだ。それに千絵も思わず笑顔を返す。
(さっきのは?)
じっと青年を見つめると青年は頬を染めている。凄くイケメンな事以外はやっぱり普通の人間だ。
(さっきのは特殊メイク?透けて見えたのは何か仕掛けが有ったのかなぁ?)
「…………えっと。貴女は一人しか居ない人類種ですから。……人類種族。【人間】No.1と言う事になります……ね、では人間No.1番さん。これから貴女の体に少しだけ触れますけどよろしい……ですか?……その。一応貴女の同意を取れるまでは何もしませんから安心してください……ですよ。艦長は寝ている間に終わらせろと仰ってましたけど……ワタシはそんな事はしたくないですよ、なので………良いですか?」
おずおずと青年はそう言う。
(…………この人も役者さん?………これ本当にドッキリ?………なんだか少しだけ怖くなって来ちゃった。神人さんも居ないし………)
千絵は不安になってキョロキョロ辺りを見回す。神人の姿は何処にも無い。
「艦長なら、貴女をワタシに任せて仕事に戻りました……ですよ?お忙しい方ですから……。あの?それで……、どうされますか?もう少し休まれてからにしますか?」
そう、優しく言われて千絵は少しだけホッとした。
(神人さんの出番は一旦お終いなのかな?休憩?……今度はこのお兄さんの出番?……ならやっぱり役者さんかなぁ?)
そう思って千絵は青年に向き直る。
「あの。その前にお兄さんのお名前は……?えっと……ドクター?先生?」
千絵が尋ねると青年はニコリと笑った。
「液状人種族。【液人】個体No.31番ですよ。……艦長だけはワタシをドクターと呼びます。ワタシは飛び抜けて知能が高いので……此処では医者の真似事をさせて貰っていますのですよ」
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