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4話 種族
しおりを挟む「あっ………ん、熱い……」
ぎゅうと手の甲を押さえてそれから光が消えたのを確認してから千絵は恐る恐る手の甲を見た。赤い刻印。林檎に似た模様が手の甲に入っていた。
(ひゃあ!!!入れ墨?どうやったのかしら?……もう痛くは……無い。けどこれだとお風呂屋さんとかプールは駄目かなぁ?)
そんな事を考えてつんつんと手の甲の刻印を突いていると神人は千絵の手の甲を見てウンウンと頷いた。
「それは契約が結ばれた証だよ。ふむ。これで、君と他種族との繁殖に文句をつけて来る団体も無いだろう。よし。それじゃ契約も成立した事だ。一度見学に行くかい?………この船内にはエリアが分かれていてね、今居るのは神人の居住スペース、本来なら君は此処には入る事は許されてないのだが今回は契約がまだだったからね。特別なんだ。さてと、もう此処に居る必要もない、移動しようか?」
神人はそう言う。その言葉に千絵はハッと我に返った。ついつい自分の世界に入ってしまっていた。よく職場でも怒られる、悪い癖だ。こんなだからトロイと言われるのだ。
「あ。……見学?居住スペース………、はあ。そうなんですね?えっとぉ。それじゃあお願いします」
(ネタバラシはまだなのね?………ふぅん。まだ沢山驚く事を仕込んでいるのかなぁ?素人を騙すのに凄く大掛かりなのね………。どうして私が選ばれたのかなぁ?友達の誰かが応募したのかな?それとも悟かな?こういうの好きだもんねあの子。)
友達の顔や弟の悟の顔を思い浮かべて千絵はぼんやりとそう思った。
▶▶▶▶▶▶
神人に連れられて廊下に出る。映画で見たような宇宙船内部と言った感じだ。千絵はキョロキョロと周囲を見てニコニコと微笑んだ。千絵は映画を見たりするのは好きだ。趣味と言っても良い。月に一度はジャンルを特に決めないで一番面白そうな映画を映画館で見ている。そこの映画館が毎月1日に凄く安くなるのを知ってからはもう5年休まず毎月通っている。
(うふふ。映画の中だけなら私も主人公になれるもの……。今がまさにそんな感じね。凄く楽しいなぁ。)
そんな風にニコニコと神人の隣を歩くと神人はずっとウンウンと頷いている。
(うふふ。私、ちゃんとテレビ的に面白い反応を出来てるのかなぁ?そうだと良いなぁ)
「さあ。とりあえずは上から見てご覧。………此処は他種族の交流エリア。居住区は種族事に分けているんだけどね、こうしてこのエリア内でなら交流を許されているんだよ。勿論厳重な監視付きさ」
そう言って案内された部屋はガラス張りの窓が有ってそこから下を見ると大きなホールになっている。室内なのに広い公園の様に見える。
下は清潔な白いタイルだが一角は人工の芝生の様になっていて噴水も有る。
パラソル付きのテーブルが有ってそこでは見たこともない人に似た生き物達がお茶やお喋りに興じている。よく見ればボードゲームの様な物やカードゲームの様な物を楽しんでいる者達も居る。
ベンチに座ってのんびりとする者。本を読む者。皆が自由に過ごしている。だがそのどれもが人に似た異形の生き物だった。神人とも何かが違う。千絵はそう感じた。
(凄いなぁ。特殊メイクかな?…………あ。あの人………メイクしてても凄くカッコいいなぁ。モデルさんかなぁ?)
豊かな鬣を風に揺らしてベンチに腰掛けるライオンの様な男。千絵はその男から目が離せなかった。
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