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3話 契約

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「あ。あのぉ?…………子供を沢山産むって……、多分産めても3~4人くらいしか無理ですよ?」

とりあえず千絵は騙されているフリを継続する。やっぱりどう頑張っても面白いリアクションなんて出来ない。だから神人の話に乗って騙されたフリをし続ける。

(ネタバラシの時にすっごく驚いたフリをしたら、良いかなぁ?)

「それは問題無い。………我々は君達人間よりも遥かに高度な知能と文明を築いている。その過程で不老の研究も進んでいてね。…………君の体を少しだけイジらせて貰うが生殖能力に支障は出ないし寧ろ子を安全に早く産む事が出来て母体に負担も掛からない。そこを気にするとは、どうやら君は乗り気な様だね?本当に………人間の雌とはこれ程に順応性が高いのか?……狂暴な雄とは大違いだな。」

神人は顎に手を当ててウンウンと頷いている。

(あら?褒められたのかしら?……ふふ。これっていい感じって事だよね?番組的に……。ふふ。オンエアーは何時いつなのかしら?……………でもちょっぴりエッチな番組だから……。お友達には教えられないかなぁ?)

ぼんやりとそんな事を考えていると神人は何かを始めた。目の前の空間。そこに何かが有る様に指で空中を突いている。

「…………。君には契約書にサインして貰いたい。我々の中には知能の高い種族に対しての扱い方を煩く言ってくる団体もあるんでね。繁殖行為に君も同意してくれないと困った事になる。………ほら。見えるかな?今目の前に出したよ?」

神人がそう言うと千絵の目の前に半透明のモニターが浮かび上がる。そこには日本語で文字が沢山書かれていた。

(うわぁ……。ホログラム?最近のテレビって凄いなぁ……。ふふ。でも日本語だし。やっぱりドッキリだ………ふふふ)

目の前に現れたモニターに少しだけ驚いたが見慣れた言語に少し心に余裕が生まれた。神人も日本語を喋っているがこうして文字を目で見るとホッとする。心に余裕が生まれると少しだけイタズラ心も湧いてくる。

「あの、………神人さんは日本語を喋るんですね?………ふふ」

ちょっとしたドッキリへの意趣返しで、意地悪な質問をする。すると神人はほんの少しだけ笑った様な雰囲気になった。顔はつるんとしているので表情はわからないが千絵には微笑んだ風に感じた。

「本当に………、良い雌だ。知能も高く落ち着いていて順応性が高い。よし、気に入ったよ。………それについても説明しよう。今、私が喋っているのは【日本語】では無い、そう聞こえるだろうが、違う。この船内内部には特殊な仕掛けが有ってね。この中であれば言語や発声形態が違っても会話が可能だ。ほら私に発声器官は無いだろう?だがこうして会話を行えている。言語も………物に対する名称も全てその者が知っている言葉に置き換えられる。要するにお互いに齟齬が無いように翻訳されて伝わるんだよ。今モニターに映し出されているのも日本語では無い。……そう見えるだけだ」

「あ………。そうなんですね。凄いなぁ……」

(本当に作り込まれてるなぁ。設定……。なんだか嘘だってわかってるのに楽しくなって来ちゃった。ふふふ、私が何を言ってもちゃんと答えてくれるのかな?中の人は役者さんかなぁ?)

千絵は非日常なこの状況にこれがドッキリだと分かっていてもドキドキと胸が高鳴る。それからまるで映画の登場人物になった気分でいつもよりテンションが上がった。だから、つい自分からもドンドンと発言してしまう。

「あの。私はもう帰れないんですか?………その、流石に困るんですけど」

なんて返してくれるのかと期待して質問を投げかけた。

「……………。確かにいきなり連れて来られて。子を産めと言うのは余りにも酷い話だ、君が困るのも当然。…………だが君に頑張って貰わないとこちらの世界からは完全に人類種【人間】は絶滅してしまうんだ。どうにか協力して欲しい。君の同意を得ない事にはこちらも無理やりにと言うのは出来ないのだ。それに君は貴重な人類の雌だ。手荒な事はしたく無い。」

(うーん。やっぱりそう言う設定は崩さないんですね?………なら)

「…………えっとぉ。その、人類の為に協力するのは良いですけど。でも、お家に帰れないと困ります。………沢山ってどれくらい産むんですか?…………その、何人か産んだらお家に帰してくれますか?」

(ふふ。………なんちゃって……。これならなんて返してくれるんだろ?)

ワクワクと神人の返事を待っていると神人は息を飲んだ。

「ほう?交渉までするとは……。ふむ。良いだろう、では【人間の子供】を100人産めば、どうにか上に掛け合ってもう一度異次元装置で平行世界へ接触して君を帰してやろう。…………君が協力的なら、すぐに達成出来るだろう」

「100人………、わかりました。ふふ。それなら契約に同意します。こうですか?」

目の前に浮かぶ半透明のモニターを下までスクロールするとタップする項目が白く光っている。千絵はそれをタップした。

(うふふ。そろそろネタバラシかなぁ?…………)

千絵はニコニコと笑った。そろそろドッキリ大成功ー!!!とプラカードを持ったタレントが出てくるはずだ。キョロキョロと入り口や窓を見るが誰かがやって来る気配は無い。それどころか千絵の右手の甲が熱く光りだした。





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