異世界召喚されたけど定番のチートも逆ハーレムも番も溺愛もエロもありませんでした。 無ければ自分で作れば良いのでは? よし、私頑張ります!!

福富長寿

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120話 初恋は実らない☆

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《ヤット、ヨンデクレタネ》
《マッテイタゾ、クロイノ》

(えっ……?)

 ハッと目を開く。
 飛び込んできたのは、色とりどりに輝く光の玉たちだった。

《ドウシテボクラヲヨバナカッタノ、クロイコ》

 
爽やかな緑の光を放ってくるくる飛び回るのは、風のヴェントス。こんなときだというのに、ものの言い方も態度もなぜか無邪気だ。

《ソウダゾー、マッテタンダゾー、オレタチ!》

 のんびり口調で言う茶色い光は土のソロ。

《ソナタガヨンデクレタナラ、イツデモトンデキテヤッタノダゾ? ワタシタチハ》

 ほんの少しだけ恨みがましく残念そうなのは黄金色の金のメタリクム。

《ソンナニワレラハ、タヨリナイノカ?》
《あ。そ、そんなことっ! ご、ごめんなさい……》
《イヤイヤ。イインダヨ》

 とりなしてくれたのは、どうやら青い光を放つ水のアクアらしかった。

《ジブンデガンバルノ、エライヨ。サイショカラ、ボクラヲタヨルヨリ、ズーットイイノサ》
《……ン。ソレモソッカ》
《ダナー》
《……ナルホド》

「精霊さまがたのおっしゃる通りだ、シディ。人は自分がやれるところまではやらねばならない。人事を尽くしてこそ道は開けるのだから」
《えっ。インテス様、精霊さまたちの声、聞こえるんですか?》
「ああ。普段はぼんやりとしか感じないが……どうもそなたといると、感覚が明瞭になるようなんだ」

 なるほど、そんなこともあるのか。

《オシャベリシテルヒマ、ナイヨ?》
《サラガ、マタ、チカラヲマシタナ》
《えっ》

 見れば精霊たちの言うとおり、《皿》はますます反発を強め、今にも《光る網》を消しとばしそうなまでに膨張していた。

《ソウダナ。ハヤクトリカカルトイタソウ》

 四色の光は一度パッと散開すると、すぐに反転し、一斉にシディに向かってきた。

《えっ? あ、あのっ》
《シンパイシナイデ》
《イチド、オマエノナカニハイルンダ》
《えっ、えっ……? オレの中に……?》
《ソナタノカラダノナカデ、マリョクヲマゼアワセル。ソウシテ、ゾウフクサセルノダ!》
《増幅……》

 なるほど。
 どうやら、かれらの魔力を一旦シディの中で馴染ませる過程が必要らしい。

《ダカラ、トジナイデ、クロイコ》
《コワガラナイデ、ココロヲヒライテ》
《オレタチヲ、ウケイレルンダ!》
《は……はいっ》

 返事をしたとたん、目もくらむようなまばゆい光が全身を包み、凄まじい魔力が流れ込んできた。体全体が熱く燃え上がり、光り輝く感覚。
 あまりの衝撃で、シディは一瞬、気が遠くなりかけた。
 「シディ、しっかり!」というインテス様の声が届かなければ、あやうく失神する手前だった。

《ダイジョウブ?》
《シッカリスルンダ、クロイノ》
《ソナタガキヲウシナッテハ、モトモコモナイゾ》
《は……はい》

 そうは言ったが、くらくらする。全身の細胞が蒸発してしまうのではないかと思うほどの衝撃。

(なんだ……この魔力は!)

 なんという力強さ。そして、量。
 それが一気に自分ごときの器に流れこんできている。自分という「器」の表面が、恐ろしいほど薄く感じられて心細い。あまりの魔力の圧力で、今にもパリンと粉々になってしまいそうだ。ともすれば、自分が自分であるという認識すら手放してしまいそうになる。
 気がつくと、背中のインテス様もひどく苦しそうになさっていた。

《だいじょうぶ、ですかっ……インテス、さまっ……》
「……私のことは心配するな、シディ。集中するんだ。ほかのことはいい」
《でもっ……》
「いいから。自分自身に集中してくれ。シディ!」
《……は、はいっ……》

 そんなギリギリのこちらの状態とは裏腹に、精霊さまたちの暢気のんきそうな会話が耳に届く。

《ソウイエバアイツ、コナイノ? コンナトキニ》
《ナンダ。マダヘソヲマゲテイルノカ、アヤツハ》
《ソウラシイネー》
《ナニヲソンナニスネテルンダ? シカタガナイダロウ》
《ソウソウ。ヤツガアンマリアバレルト、ニンゲンハコマルンダカラヨ》
《ソウナンダヨネー》

 いったい何の話だろう、と思考することすら難しかった。
 シディは自分が自分であることを維持するだけで精一杯だったのだ。体内で暴れまわる魔力の奔流は、それほど凄まじいものだった。
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