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96話 呪いの言葉
しおりを挟む「ああ♡ハルミ殿♡俺は幸せです♡………必ず♡必ず幸せにしますから♡はあ♡もう我慢できんよ♡貴女を抱きたい♡」
そう言うと、グレンはハルミを抱き上げて部屋を出た。部屋のすぐ横の扉を開けるとそこはシンプルな寝室だ。多分此処はグレンの部屋なのだろう。
「あ、あのグレンさん、………ちょ、ちょっと待って………」
(ひぃ………、やばい、このまま流されてえっちするのは駄目だ。………………早く話さないと、そうしないと、もっと誤解が酷くなる。良くある泥沼パターンじゃん!!!)
ハルミは焦る。蕩けるような瞳でハルミを見てくるグレン。きっとこの世界でグレン(のちんぽ)を受け入れられる女はハルミだけだ。だからグレンは責任を取ると言う理由も有るのだろうけど、要するに性欲処理の相手、専属の娼婦としてハルミを囲うと言う事だ。それに了承したとグレンは勘違いしている。
(っ………もし、アーノルドさんから好きだって言われてなければ、それも有りだっただろうけど………。でも無理。………やっぱり、ちゃんと愛されたいもん)
一度愛されてするセックスを知ってしまったら、いくら体を求めてくれていても、精液をくれても無理だ。満足出来ない。
それにアーノルドの側に居たい。シュエルの子供も産むと約束した。だから、グレンの所に来る事は出来ない。
「………すまない。ムードも何も無かったですよね?……………つい、早く貴女を抱きたくて、焦ってしまったよ……♡許して欲しい……。………ハルミ殿♡服も髪飾りも本当によく似合う♡贈ったピアスも……、俺や周りに良く見えるようにしてくれたんだろうよ?はあ♡なんて可愛い事をしてくれるんだ♡貴女はこれで本当に俺のモノだ♡…………本当に夢の様だ♡貴女と一緒に暮らせるなんて♡はあ♡貴女はこんなに素敵な女性なのに……、どうしてあの時の俺は、あんな酷い暴言が吐けたのか本当に謎だよ……。俺は初めて貴女に出会った日を何度やり直したいと願ったか……。やり直せたら、次は沢山賛美の言葉を掛けるのに♡いえ、今からそうしましょうか?ね♡ハルミ殿っ♡」
そう、うっとりと言うとグレンは優しくハルミをベッドに降ろした。嬉しそうな満面の笑みのグレン。ズボンもパツンパツンに膨らんでいる。
(う………………、ええ………?グレンさん?そんなに嬉しいの?まじで?)
大喜びのグレン。そんなグレンに真実を伝えるのは正直キツイ。罪悪感が凄い。
(……………で、でも、えっちの相手はこれからもするんだし……。私悪くないよね?買ってくれた物は、アーノルドさんに理由を説明して、こっちで買い取ろう…………。………、…………う………言いにくい)
じっとグレンを見つめると、はにかんで、もじもじしている。
(うぐぅ…………。グレンさん最近可愛いんだもん………。前みたいに意地悪なら、気にしないで言えたのに…………)
「あ、あのグレンさん…………」
「はい♡なんでしょうか?ハルミ殿♡」
うるうるキラキラの瞳で、甘く返されてハルミは冷や汗ダラダラだ。
「……………ご、ごめんなさい。この家に来る事は出来ません。グレンさんと一緒には暮らせません。…………………私アーノルドさんと結婚するんです。だから、責任とか取ってくれなくて大丈夫ですよ?私もアーノルドさんも、もうグレンさんに怒ってないですし……」
そう告げるとグレンはポカンと口を開けて固まった。
▷▷▷▷▷▷
「え…………?」
大きく目を見開くグレンの顔を見て、ハルミは冷や汗がダラダラ流れる。
「………………引っ越しに掛かった費用はお支払いしますし、物は買い取ります…………。ごめんなさい。私が前に誤解を招くような言い方をしてしまったから………、だから。本当にごめんなさい。…………………でも、えっちは、これからも………その……、グレンさんのしたい時にお相手しますよ?だから……性欲処理はこれからも出来ます。アーノルドさんも良いって言ってますし、私も………精液が必要ですから」
引き攣った笑みでハルミがそう告げると、グレンの顔は真っ青になる。
「っ…………恋人では無いと……、言っていたでは無いか……………」
震える声でグレンはそう言う。青鬼みたいに顔は真っ青だ。
「っ………あ、あの時はまだ………違いました。でも………、一昨日好きだって、愛してるって言ってもらったんです。ずっと側に居たいって…………妻にしたいって………。だからグレンさんが責任感とか、申し訳ないとか考えなくて良いんです。…………ね?」
そう告げるとグレンの瞳から光が完全に消えた。
「……一昨日だと?……………何故?俺の方が先に………貴女に話をしたのに?アーノルドは絶対に子を作れないのに、何故選ばれる?結婚なんて…………嘘だ」
グレンはそう呟いて、それからハッとして口元を抑えている。流石に、この状況でその姿を見てグレンの発言に怒りは湧かない。寧ろ更に罪悪感がやばい。
(う……………、めちゃくちゃショック受けてる……?そんなに?……………………………っ)
最近失恋したばかりのハルミは胸が痛む。グレンのそれは失恋とは少し違うだろうが、期待を裏切られたショックはハルミも知っている。
「あ………すまない。っ………悪く言うつもりは……ぐ……ぅ……………………だからか……。……こんな俺が……貴女に……選んでもらえるはずがない……っ…………」
そう言ってグレンはボロボロ泣いている。手を伸ばそうとしてハルミは止めた。泣かせたハルミが慰めるなんておかしな話だ。グレンは腰が抜けたように床に座り込み、嗚咽を零してボロボロと涙を流した、そして暫くして、少しは落ち着いたのか袖口でゴシゴシと目元を擦ると、ハルミをしっかりと見た。
「………………ご結婚されるのなら、いくらアーノルド・スピネルの許可が有ったとしても………俺が貴女を抱くわけには行かない。貴方に乱暴を働いた、こんな男の言う事など信じられないとは思うが、貴女を抱くのを性欲処理だなんて俺は……思ってない……。思ってないんだよ…………。貴女に、そんな風に思われたくない………。だから抱けない……。精液摂取は今後は何か入れ物に取ったものを……お渡しするよ。隣の部屋の物は俺が勝手にした事だ、……欲しい物があれば差し上げる。……………………買い取るなんて、そんな寂しい事を言わないで欲しい。……………結婚祝いに差し上げるよ。………っ…………………ハルミ殿………………………っ……もし俺が………初めて会った時に貴女に酷い事を言わなければ、………その後貴女を無理やりレイプなんてしなければ、俺にもチャンスは有りましたか?」
グレンはそう言う。
「っ…………グレンさんっ……」
「いえ、やっぱり良いです。何も言わないでくれっ………、…………………聞いても、今更だ。………っ……すまない。今日は貴女に精液を差し上げる事は出来ない………っ…………っう……」
またボロボロ泣き出したグレンをハルミは静かに眺めていた。
(………………グレンさん。……なんで?専属の娼婦にしたかったんじゃないの?いや、これが普通なのかな。普通は人の恋人とか伴侶とえっちはしないよね。っ………普通は……そうだよ。……………っ………良かった。ベルと最後までしなくて………)
泣いているグレンを見て、ハルミも泣きたくなる。
▷▷▷▷▷▷
一時間ほど泣き続けて漸くグレンは顔を上げた。
「…………ハルミ殿……、もう、少しだけ待ってくれ。…………………………送って行く」
泣き腫らして、ぼんやりとした瞳でグレンはそう言う。
「あ………あの、大丈夫ですか?無理しないで……ください」
おずおずと視線を合わせてそう告げるとグレンの瞳は揺れる。
「あ……………ハルミ殿……」
そっと手を伸ばされて、それからそっと頬を撫でられる。凄く優しい手付きだ。黙ってそれを受け入れていると、グレンの手は耳に移動してピアスを撫でた。
「っん……」
ピクんと反応してしまい、ハルミがハッと口元を抑えると、グレンは、じっとこちらを見ている。
「…………………ハルミ殿は子供はどうするつもりですか?…………勘違いしないで欲しいのだが、悪く言う気は無い。だがアーノルド・スピネルとは
子を作れないだろう……」
グレンは静かにそう言う。
「…………………子供は、………あの、その。奴隷のシュエルさんの子を産みます。…………頼まれたんです。生きた証を残したいって……、だから、その産まれた子をアーノルドさんとの、子として届けます」
「…………………………それすら、俺は必要ないのか………」
グレンはボソリと呟くと立ち上がった。
「……………少し待っていてくれ。顔を洗ったら送りますよ……………。……………今日はすまない、折角時間を作ってくれたのに……」
フラフラと歩いて行くグレンの後ろ姿を見送って、ハルミはため息を吐いた。
(……………私がずるい考えでキープなんてしたから、結果的に凄く傷つけちゃった。………っ…………)
折角前向きな気分になれたのに、やっぱり、この世界はどうしようもなく意地悪だ。
いや
(…………………私が悪いんだ。………っ……………怖い)
『そんなんじゃ誰とも上手く行かない』
いつもいつも呪いの様に、つきまとう。あの言葉をまた思い出してハルミはぎゅっと胸を抑えた。
(うるさい………。勝手に言ってろ…………)
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