異世界召喚されたけど定番のチートも逆ハーレムも番も溺愛もエロもありませんでした。 無ければ自分で作れば良いのでは? よし、私頑張ります!!

福富長寿

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68話 いつか来る日

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スッと冷めた心でハルミは目の前のグレンを見つめた。

(…………………。別にグレンさんは悪くない……。これは私の問題だ………)

不安そうにこちらを伺うグレン。手はやはり震えている。

(悪い条件じゃ無いよね……、だって私だっていつかは奴隷買ってベルの所を出ようと思ってたもん。…………いつまでもベルに迷惑かけられないし………アーノルドさんにも……、……………。優しい人達に迷惑かけたくない………。それならグレンさんの専属娼婦も悪くは無いかもね。私も精液貰えるしグレンさんも性欲処理出来るし、罪の意識も薄れる……ならWin-Winだよね……………)

そこまで考えて胸が苦しくなる。

(………………ベル……………ベル。会いたいよ………………)

思うのはベルの事だ。本当はベルとまたあの森の中の家で暮らしたい。こっちに来て、少しの間だったけどあの日々は凄く幸せで楽しかった。ベルはイケメンじゃない。それでも側にいると安心するし優しくされると嬉しくなる。それに笑顔は可愛いし声も好き、どうしてなのかはわからないがどうしようもなく好き。

恋に落ちるとはこう言う事なのだろう自分ではどうしようもない。ベルが退院したら
またあの日々に戻りたい。でも、それはハルミの我儘だ。ベルには妾……愛人が四人も居るらしい。その内の一人をベルは多分本気で好きなんだと思う。写真を枕に入れていたのだから間違い無い。

(……………恋人居ないって言ったのに嘘つき……。妾って…………愛人だよね?こっちは一夫多妻なのかな?…………………その中でもあのマリア……さん?だっけ。彼女を好きなんでしょ?なら本命がマリアさんで残りが妾さんかな?子供も全員と作るんでしょ?なら私は……邪魔だもん。……弱みにつけ込んで一緒には暮らせない。どうせいつかは離れないといけない、だって私が奥さんや愛人さんだったらそんなの嫌だもん。
知らない変な女が愛する人の側に居るなんて……………)

ハルミだっていつかはベルの子供が欲しい。でもそれはまだまだ先の話だ。ベルが奥さんや妾さん達と子供を作った後、どうにか頼み込んで一度抱いて貰う。そして子供を身籠る。そう身勝手に夢を見ているのだ。

黙り込んだハルミをグレンは青い顔で見ている。

それにハルミはハッとする。自分の世界に入ってしまっていた。

「…………すみません。グレンさん、お気持ち凄く嬉しいです。…………でも、今すぐにはお返事は……出来ません。…………ごめんなさい、私もまだこの世界に慣れてないですし……。少し混乱してて……色々と………あの………………。その……もし、今後私が行く所が無くなったら………少しの間お世話になるかもしれません。それでも良いですか?」

そう尋ねて自分に呆れる。

(キープ………はは、私ってずるい……)

結局は一人で生きるのは怖いのだ。だからグレンの手を振り払えない。内心で傷つきながらもこうして自分勝手に繋ぎ止めてしまう。

(…………………………こんなんだから駄目なんだ私。……………………………誰にも愛されない……)





▷▷▷▷▷▷





「あ、……ああ!!!勿論良いですとも!!!少しの間だなんてそんなに遠慮しなくとも、俺は必ず貴女を一生面倒見ますよ!!!!………でも、すまない。いきなりで急過ぎただろうよ?確かに……混乱するだろうな…、ころころと環境が変わっては貴女も落ち着きませんよね?………困らせたい訳じゃ無いんだ。…………貴女の気持ちが落ち着くまで俺は待っていますから、だから………その………。少しずつでも……俺の事も知って欲しいし…貴女の事も……これから知って行きたい…………。とりあえず今日は帰りますよ。また………すぐに呼んで欲しい……、はあ♡離れるのが名残惜しいです………」

ぎゅうっと力の籠もるグレンの手をハルミも握り返して微笑む。作った笑顔だ。それでもグレンは気づかないでニコニコと頬を染めている。




▷▷▷▷▷▷





グレンの帰った部屋でソファーに腰を降ろして大きなため息を吐く。

(……………………ベル。会いたいよ。…………………顔がみたいよ)

花びらの栞を眺めて居るとじわじわと涙が溢れてくる。

(…………………駄目、駄目泣くな。今泣いたら………我慢出来なくなる…………っ…………割り切れ、割り切らないと。………………たまにベルの顔が見られればそれで良いんだ……そうでしょ?)

ぎゅうっと唇を噛んでなんとか泣くのを堪える。暫くそうして俯いているとコンコンと扉が鳴った。

(……………だれ?………アーノルドさん?帰ってきたのかな?) 

ハッとして扉に向かって開くとやはりそこには疲れた顔のアーノルドが居た。

「……………ハルミ、今帰ったぞぉ。起きていたかぁ。…………?唇をどうした?血が出ている……、まさかグレンに何かっ!!!」

「違いますよ、グレンさんには何もされてません。少し自分で噛んでしまって………」

ハルミが苦笑して告げるとアーノルドはそっと唇に指を這わしてそれから優しくキスをする。

「唇を自分で噛んだのか?……………そうか。………小さな傷だが消毒したほうが良いなぁ」

アーノルドはちゅるっと舌で唇を舐めてそれから凄く優しく抱きしめてくる。

「ハルミ………、共に寝よう?………………少し疲れた」

そう言ってアーノルドは甘える様にハルミの髪に顔を埋めてくる。

(アーノルドさん………)

またよく分からない気持ちが胸に湧いてくる。

「………………お疲れ様です。…………ん、それじゃあお部屋行きますか?」

ハルミが尋ねるとアーノルドは優しくハルミを抱き上げた。

「………………早く行こう。倒れそうな程に眠い……」

そう言うアーノルドの目元は酷い隈だ。本当に眠いのだろう。

「あ、あのグレンさんの精液採取しましたよ、持っていきますね」

そうハルミが告げるとアーノルドは不機嫌そうに眉を寄せた。





▷▷▷▷▷▷






ベッドの中で腕枕をしてアーノルドはハルミの頬を唇で優しく啄んでいる。何故か今日は甘えん坊だ。半分寝ている様でいつもよりふにゃふにゃしている。

「アーノルドさん。ほら、ちゃんとおねんねしましょうね?」

よしよしと頭を撫でると擦り寄ってくる。

「…………ん、ねる、………だが声を……聞いていたい。何か………話してくれ……ねるまで………」

アーノルドはぐずるようにそう言う。それにハルミはクスリと笑った。

(……………ふふ。可愛い♡………少しだけ気が紛れるなぁ…………)

ちゅっと瞼にキスを落としながらハルミは口を開く。

「お話?んー。難しいですね。…………お話じゃなくてお歌にしましょうね?………………アーノルドさん、私の世界の子守唄ですよ」

そう告げてハルミは歌を歌う



「………………ハルミ……拙者は………君が…………………」

アーノルドはうっとりとそれに聞き入るように目を閉じてそのまま何かを呟いて眠ってしまった。

「お休みなさい
アーノルドさん。」

ちゅっと優しく唇にキスをしてそしてハルミも目を瞑る。

(…………………………少しだけ元気でたなぁ。ありがとうございます、アーノルドさん)

落ち込んだ気分も少しだけ晴れる。

(……………………お仕事忙しいんだよね?何か私もお手伝いとか出来ないかなぁ?………………助手とかで雇ってくれないかなぁ?そうしたら…………迷惑じゃないかな?役に立てるかなぁ?アーノルドさんの役に立てたら………………此処にずっと居させてくれるかな?もしベルの所を離れたとしても……)

そんな事を思いながらやってくる眠気に身を委ねた。傍らの温もりに何故か胸が甘く鼓動を早めた。

でもそれには気づかないフリをした。








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