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55話 お願い
しおりを挟むボロボロと泣くグレンを眺めてハルミはため息を吐く。
(…………………私の態度も悪かったのかも、確かに女一人だったから心配して追ったとか言ってたし……逆光で良く見えなかったから怖くて私も怯えすぎたかも。………それに私あそこびしょ濡れで発情してたし……………匂い凄かったし……、グレン…さんがムラムラするのも仕方ないのかな?…………うーん、でも、これ私相手じゃなかったら裂けてたよ?そうなってたら大惨事じゃん………。んー、でもすぐに回復魔法かけるって言ってたっけ?ガチクズって訳でもないか?…………うーん。つーか、童貞……だったんだよね?この人?…………はあ)
ぐるぐると考えて、それからもう一度ふうと息を吐いてグレンに声をかける。
「あの、…………警察は行きません。その代わり私のお願い聞いてほしいんですけど」
ハルミの言葉にグレンはハッとした顔をした。
「…………死ねと言うなら死ぬ」
「いやいやいや、なんでやねん!!!!」
ハルミは思わず突っ込んでしまう。
「では………何をすれば?」
ゴシゴシと涙を拭ってグレンは不思議そうな顔だ。腫れた目元と赤い鼻。その顔を見てるとなんだか怒りは萎む、結果的には気持ちよかったし精液も摂取出来た。それにグレンは容姿が良い。
(………イケメンで良かったね?親に感謝しなよ)
内心でそう思う。
「グレンさん。私…………精液を摂取しないとガチのマジで死ぬんです。知ってますよね?資料?に書いてあるんですよね?………それでさっき、実は死にかけてました。多分。……………なので、結果的には助かりました。だから今回の事は許します。でも今後は絶対に女の人をレイプなんてしないでください。………私が異世界人じゃなかったら大惨事でしたよ?こっちの女の人なら絶対に裂けてます。…………はあ。」
そう告げるとグレンは真っ青になる。
「っ………!!!もうあんな事は絶対に二度としない!!!…………本当に……俺は頭がおかしくなっていたんだ…………っ、これまでだって女性に乱暴を働いたことなど無いっ!!!本当にすまない。………すまない」
そう言ってグレンはしょんぼりと項垂れている。
(…………色々と悪い状況が重なって、最悪のパターンになっちゃったのかな?………ふう……まあでも、もうしないって言うなら。…………うん)
「で、して欲しいことなんですけど、まずはアーノルドさんに謝ってください。……………はっきり言って私そっちの方がムカついてます。………………ちゃんと謝って」
実際そっちの方が本当に腹が立っている。自分勝手な八つ当たりと嫉妬でアーノルドを傷つけるような事を言われたのだ。ちゃんと謝罪がなければ絶対に許せない。こればかりは絶対に譲れない。
「…………勿論だ。本当に…………すまない。恋人を馬鹿にされて………不愉快だっただろうよ?……………………すまない、今回貴女を無理矢理抱いたのもアーノルド・スピネルには謝罪する。それで、例え殺されたとしても
仕方ないさ」
そう言うとグレンはまた土下座した。ハルミは眉を顰めた。
「………………私にはもう謝らなくて良いです。アーノルドさんに謝ってくれればそれで良いです。……………後、別に私とアーノルドさんは恋人じゃないですから、この事も………、レイプの事は言わなくて良いです」
そう告げるとグレンはキョトンしている。
「…………恋人では無い……?では……なんだ?」
そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
(……………先生と患者?うーん違うか……
……セフレ?だって………アーノルドさんは私がベルを好きって知ってるし、別に恋愛感情は無いよね?やっぱりセフレかなぁ)
すぐに頭に浮かんだのはそれだ。精液摂取以外でも最近は肌を重ねる。紅葉が入院してからは夜は一緒に寝てるしキスもいちゃいちゃもする。恋愛感情無しでそう言う事をするのはセフレなのかな?と思う。
(………………えっちしてから変に優しいし。
かわいいって言ってくれるけど、…………好きとは言われたこと無いし。………性欲処理出来る同居人?………いや、それは言葉が悪すぎだわ。……本当に私って可愛げない、……………セフレかぁ………。少しやだなぁ。でもだったらなんなの?)
考えていると胸が何故か痛む。言葉に出来ないモヤモヤした物が湧いてくる。
(………………なんだろうこれ?アーノルドさん………。何………?)
胸がぎゅっと締め付けられる。なんだかこれ以上考えるのは良くない気がする。
「ただの同居人です。本当に恋人じゃないんです。元々保護者の………ベルのお友達で、ベルが入院しちゃったので今は代わりに面倒を見てくれてるんです」
当たり障りなく答えるとグレンは困った様なそうでない様な良く分からない顔をしていた。
「………そう……なのか?…………そうか………」
そう言うとグレンは俯く。
「………そうです。だからその話は別に良いです。えっと、それでもう一つ頼みたい事があるんですけどそっちの話しても良いですか?」
無理矢理話を切り替える、なんだかこの話題は続けたくなかった。
「……………ああ。話してくれ。俺にできる事なら何でもするさ。俺に拒否権は無いだろうよ?………。……っすまない。今のは嫌な言い方でした……、俺は捻くれているから……。いつも一言余計だと……言われるし」
グレンはしゅんとしている。嫌味を言うのは元々の性格もあるようだ。
「別に大丈夫ですよ。それに今から頼む事は別に無理なら断ってもらって大丈夫ですし…………、あの本当にたまにで良いのでまた精液くれませんか?……実は精液くれる人が余り居なくて………」
ハルミがそう言うとグレンはポカンと口を開けていた。
(………………間抜けな顔だなぁ)
▷▷▷▷▷▷
「精液を……また?」
そう呟いてグレンは胸元をぎゅうっと握りしめている。
「…………嫌なら無理にとは言いません。………奴隷の事とかもグレンさんは知ってるんですよね?紅葉君の調査と検査とかも詰め所でしたんですよね?………私、精液を貰う為に奴隷を買いました。………そうしないと死ぬんでそうするしか無かったんです。……………ちゃんと説明して紅葉君とは同意の上です。この世界じゃ軽蔑される様な事でもするしかないんで……、私そうまでしても生きたいです……。世間から汚いと思われても……死にたくないです。…………グレンさんが言った通り、私の相手してくれる様な男の人って殆ど居ないんですよ……」
ハルミがそう言うとグレンはハッとしている。
「…………ああ。確かに………、そう言う話だと聞いていますよ。………アーノルドが提出した書類にもそう書いてあった。同意の元しっかりと報酬も払うと、奴隷本人もそう言っていたので、虐待の疑惑は晴れました。…………………あの、貴女に言った言葉は殆どがただの八つ当たりで本心では無い…………………貴女は何も悪くないのにそれを汚いと言った事、醜女などと言った事………。本当にすまない……、……………本当に…ぐっ………すまない………っ……」
グレンの赤い瞳からまたポタリと雫が落ちた。
「…………………結構ショックでした。」
そうハルミが言うとグレンの瞳からボロボロ涙が溢れる。そしてグレンは真っ青な顔で震えてひたすら謝罪の言葉を口にしている。
(…………はあ、私…………また、泣かせて何やってるんだろ。これじゃ話が進まないよ。でも……………)
『………………汚らわしい女だ。そうまでして生きたいとは俺には………理解出来ないな』
初めて会った時にそう言われて実は結構傷ついていたのだ。醜女に関しては仕方ないかなとは思う。精液摂取の相手が中々見つから無いのは事実だし、だから胸は痛むが、怒りは湧かない。
▷▷▷▷▷▷
「………もう落ち着きましたか?」
声をかけるとグレンはビクリと肩を揺らした。また目が腫れている。
「……っ………はい。………もう大丈夫です。先程のお願いだが……、貴女の命がそれで助かるのなら…………俺の精液で良ければいくらでも使ってくれ、どのようにお渡しすれば良いですか?アーノルドには伝えるのか?」
(………どのように?……どうしよう)
頼んで見た物のそこまで考えていなかった。どうせ一回セックスをしたし今後もたまにセックスして精液を貰えたらなと軽く考えていた。6回出してもまだピンピンしているのを見るに魔力も多そうだ。それに
(また新しい奴隷買うよりは一度えっちしたグレンさんの方が全然良いし…………。デカちんも結構良かったし……、容姿も悪くないし………一応は謝って……くれたしね)
「あの、本当にグレンさんが嫌じゃ無ければですけど、たまに私とえっちして欲しいです。……………無理強いはしたくないので良ければでいいんで…」
そうハルミが告げるとグレンの顔は真っ赤に染まり口元を両手で押さえて恥じらう乙女の様なポーズだ。瞳もめちゃくちゃ泳いでいる。まるでこちらが凄い恥ずかしい事を言ったような空気だ。
(はあ?レイプしといてその反応って何?)
イラッとした。
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