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8話 拒絶
しおりを挟む流されるままに裕子は誓いの言葉を口にして、そしてディアと口づけをした。してから裕子はハッとする。雰囲気に流されてちゃんと話も聞けていない。なのに気づけばいつの間にか薬指には指輪まではまっていた。
神父もいつの間にか居なくなっていた。
「あ………っ、ま、待ってディア……、これはどう言う事なの?!」
裕子がディアに尋ねるとディアはニコニコとして裕子の指にはまった指輪を大切そうに撫でている。
「…………もう僕達は結婚したのだから旦那様と呼んでほしいなぁ」
ディアはそう言う。その声は甘い。
(え?!ええっ!!!!し、しまったわ!!!ロマンチックな雰囲気に流されて……、私ったら!!!!!)
裕子は今更愕然とした。流されやすい日本人気質が此処で発揮されてしまった。
(けっ……結婚?ディアと……私が………夫婦?)
それからなんだかヘタリと腰が抜けそうになり、それはディアが支えてくれた。
「………………ごめんね。裕子…………卑怯な手を使ったけど……本当に君を愛しているんだ。……………………確かに僕達は余りお互いの事を知らないけどそれでもこれから知って行けばいいんだし…………何も問題は無いだろう?時間はたっぷりあるんだ♡それに裕子と僕は趣味も合うしきっと幸せになれる♡」
そう言って裕子を軽々抱き上げるとディアはウィンクした。そのキラキラした笑顔とウィンクに裕子は目を瞑る。
「う…………眩しい………」
つい口に出してしまうとディアはクスクスと笑った。
「…………と言っても貴女にもちゃんと納得はして欲しいし………、……キチンと説明はするよ。…………裕子………お願いだ……。お願いだから僕を愛して?僕は必ず君を幸せにしてみせるから」
説明すると言った後ディアは少し不安げな顔で裕子に縋るような事を口にする。
(………………ディア。良くわからないけど……、でも私……………嫌じゃないのよね……。…………………………むしろ嬉しい……)
ディアにお姫様抱っこで運ばれて控室に戻る。ルビーは二人の姿を視界に入れるとひらひらと手を振って帰って行った。
ソファーに優しく降ろされて今はディアと二人きりだ。
「…………なにから話せばいいかな?……裕子は……僕。鉄壁の守護騎士の事はどれくらい知っているんだい?」
(え?…………………良くは知らないわね)
「……………その。基本的な事だけよ………、……えっと守るのが凄いって聞いたわ」
そう裕子が答えるとディアはケラケラと笑う。そうしていると凄く若く見える。
(ディアって何歳なのかしら?)
「ディア………貴方何歳なの?」
そう尋ねるとディアは笑うのをやめて少しだけ真面目な顔をした。
「……………20だよ。ちゃんと成人はしているから安心して?もしかして……、年下は嫌い?だけど………こればっかりはどうしようも無いから………ごめんね」
そう言って髪をそっと撫でられる。
「えっ!!!!やっぱり若いのね。…………ディアは私なんかで本当に良いの?私の方こそちゃんと言ってなかったけど結構年上よ?」
(日本人ってこっちじゃ若く見えるみたいだけど………。本当は…………10以上上なのに……)
そう告げるとディアはポカンとしてからまた笑う。
「良いも何も…………貴女の事なら全部知っている。…あの最初の日…………貴女にいやらしい事をされた日、あの後直ぐに調べたんだ♡…………貴女の事で知らない事なんて何も無いよ?」
ディアはそう言ってから裕子の頬をそっと撫でて瞳を細めた。まるで捕食者の瞳だ。
「………………え?…………あ、そうよね、名前も………職場も……知ってたものね」
「…………………うん。……………ねえ裕子。話を戻すね?………………僕は鉄壁の守護騎士なんて呼ばれている。………僕に攻撃を当てられる者はいないともね………。随分と誇張した話だと思うだろう?ふふ……………。でもねそれは事実さ…………。
と言うより僕に触れられる者は居ない………、生あるものは例外無くね」
ディアはそう言って裕子の頬を撫でている。
(触れてるじゃない。…………自分から触れるのはオッケーって事かしら?あら?でも………お尻…触れたわよね?)
裕子が考えているとディアはクスクスと笑う。
「誰も………僕からも相手からも触れられない。それが僕の神から授かったギフト。……『拒絶』の力なんだよ」
ディアはそう言いながらも裕子の頬を愛しそうに撫でている。
「触ってるじゃないの?」
思わずそう告げるとディアはとても幸せそうに笑った。
「そうだよ、裕子…………君にだけ触れられる。この世界で僕に触れられるのも僕が触れるのも君だけだ…………僕の運命の人…………」
そう言ってディアの顔が近づいてそうして唇に柔らかな感触。本日2回目のキスだ。一回目はぼんやりとしていたが今回は意識がハッキリしているので裕子は驚きに目を見開いた。
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