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3話 お願い
しおりを挟む「そんなに緊張されなくても大丈夫。気楽にしてください」
ニコニコと対面の席で笑顔を作るイケメンに裕子は内心で怯えていた。何故か男はレストランの個室に裕子を連れて来てずっとニコニコとしている。怒ったら笑うタイプなのかも知れない。
(うわぁぁぁ!!!!!このお兄さん………この声、絶対にあの被害者男性だわっ!!!)
自分がマッチング相手と間違えて路地裏でガチの痴漢(痴女)をしてしまった相手だと確信する。こんなイケボが何人も居るはずがない。男の容姿は裕子よりかなりの年下だ。多分20歳前後。この世界に来てから王子以外で初めて見るガチのイケメン。なんなら王子より王子っぽい頬にかかる程のサラリとした金の髪に透き通るような青い瞳。ニコリと微笑まれたら女性なら誰でも恋に落ちそうなそんな男だ。腰には高そうな装飾の剣を下げており服の上からでもわかる程の良い体。騎士か冒険者辺りだろう。絶対に強い(確信)
(ひぃ……………、絶対に殺される…………。
あの剣で切り捨てられる…………。うう……………)
ガクガクぶるぶると震えていると男は白い歯を見せてキラリと笑う。
「………………ふふ、この間とは随分と………様子が違うのだね?……………あんなに積極的で強気だったと言うのに」
ニコニコと笑顔で告げられて裕子は席を飛び跳ねるように立って床に頭を擦りつけた。日本の伝統☆土下座☆である。更にはジャンプのオマケ付き、ジャンピング土下座である。
「すっ!!!すみませんでしたぁ!!!あれは人違いだったんですぅぅぅ!!!!!殺さないでくださいぃぃぃぃ!!!!!」
そう叫ぶと男は人違い?と小さく呟いた。
◆◆◆◆◆◆
「なるほど。…………出会い酒場……。ああ………確かにそんな所が有るとは聞いた事が有る………。…………人違い………、
ふーん?……確かにあの日デリルの花を胸に挿していたよ……。へえ…………それでお相手と僕を間違えたと…………」
裕子が土下座からの号泣でなんとか説明すると男は顎に手を当てて眉を寄せている。
「本当に…すみませんっ…でしたぁ……、………………どうぞ警察に通報してください……罪は償いますぅ……うゔ」
最早土下座と言うよりは地面に蹲ってただただ泣いている。
(ううう………捕まらないようにお店を利用したのに…………、こんな最後なんて……………。……………まあでもイケメンさんのおちんぽを舐められたから良かったのかもしれないわぁ。うふふ…………皮被ってたしチンカス塗れだったけど………うふふ)
ぐすぐす泣きながら現実逃避していると男がクスリと笑うのが聞こえた。恐る恐る顔を上げると爽やかなキラキラの笑顔を向けられて思わず目を瞑ってしまう。
(うぐぅ……………眩しい………)
そんな裕子を見てまた男はクスリと笑う。
「痴女さん。………………心配しないで、貴女を警察に通報するつもりなら既にしています。……………グソーの食堂で働かれている異世界人の山田裕子さん」
そう言って男は今度は少しだけ意地が悪そうに笑った。
(全部バレてるぅぅぅ!!!!!!個人情報保護はー?!どうなってるの異世界いいいい!!!!!)
またガクガクと体が震える。
(………………職場もバレてるし名前も?なんでぇどうしてぇ?ううう……………通報しないって………………まさか私売られるの?……………奴隷なんて嫌よぉ)
涙がだらだらと流れる。奴隷になるくらいなら捕まって数年臭い飯を食べる方がマシだ。
「いやぁ……奴隷だけは奴隷だけはぁやめてください!!!!お願いします!!!!どうか警察でっお願いします!!!!」
またペコペコと必死で頭を下げると男は困ったように笑った。
「……………奴隷だなんて、女性にそんな酷い事はしないさ。……………………ただ一つだけ僕のお願いを聞いてもらえればそれで構わない。………………無理だと言うのなら……、貴女の言うように警察に行く事になるけど………」
◆◆◆◆◆◆
美しい劇場の前で裕子は立ち尽くしていた。2日前に痴漢被害者の男、ディアと名乗った彼は裕子にお願いをした。
『……………また、あんな風にして欲しい。………あの日最初はとても驚いたけど凄く興奮したんだ。気持ちも良かったし………、………………貴女はそう言うのが好きなのでしょう?それなら僕ともう一度シテも問題は無いだろう?それで今回の件は双方忘れると言う事でどうだろうか?』
(お願い内容には驚いたけど………。でもあり得ない話では無いわね。…………彼……ディアって若いし、性的な事に興味が有るのは当然だわ。もしかしたら童貞なのかもしれないし……、…うん。あり得るわね。イケメンだけど皮被ってたし……、それがコンプレックスで童貞なのかもね。
……………あんなイケメンともう一度痴漢プレイが出来るのならこっちとしても悪い話じゃないわ)
裕子はそう思い二つ返事でオッケーしたのだ。その時に次はどこでしようか?と言う話になり、かなり悩んだ。
(うーん。電車やバスとか乗り物が鉄板だけれど………、こっちには無いし…………。それなら劇場とか………公園とか?)
悩んでそれを伝えるとディアはニコリと笑った。
「それじゃ、劇場にしようか?チケットを裕子宛に送るよ2日後に来て。……………………隣の席にしておくから」
ディアからの提案に裕子は頷いた。だって、てっきり小さな小劇場かと思ったからだ。なのに来てみればめちゃくちゃデカくて綺麗で観劇のお値段も高い街でも有名な大劇場だった。
(此処で痴漢プレイするの?…………………嘘よねぇ)
裕子の顔は引きつった。それからポケットからチケットを取り出して眺める。裕子の給金一月分の価値のあるチケット。
(…………………ディアって何者なの?痴漢プレイの為だけにこのチケットを買ったのよね?めちゃくちゃお金持ちよね?)
覚悟を決めて劇場に入るとすぐにスタッフが席に案内してくれる。後ろの奥の席にディアは既に来ていた。
(っ…………やっぱりイケメンね)
知らぬ顔をして裕子は隣に座る。ディアも反応しない。今回も他人設定なのだ。劇場が暗くなったら痴漢プレイスタートである♡
(………………………どうせなら楽しまないとね)
裕子はクスリと笑うと持って来ていた膝掛けを鞄から取り出して膝に掛けた。
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