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桜島晴人

14話 三度目の正直☆

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「え…………?」

ポカンとしたマヌケな表情で、桜島は動きを止めた。

(…………私みたいな地味な女に、振られるとは思いませんでした?……残念でしたね。桜島君)

「桜島君のお気持ちは、本当に嬉しいです。………でも、お付き合いは、出来ません。今は恋愛をしている状況じゃ無いですから………。あの、本当に、ごめんなさい」

琴音は申し訳なさそうな顔を作って、ペコリと頭を下げた。

「え……、え?……………え?」

琴音の言葉に、動きを再開させた桜島は困惑した様子で、オドオドと視線を彷徨わせる。

「桜島君、本当にごめんなさい」

もう一度琴音が頭を下げると、桜島は口元を抑えた。小さくなんで、嘘だろ?と聞こえて、琴音は内心で、ため息を吐く。

(……………そんなに驚きます?まあ、そうですよね。今をときめくアイドルのハルトが、私みたいに地味で、取り柄の無い女に振られるとは思いませんよね?桜島君は私を男好きだって思ってますもんね?…………はあ。いえ、それは今回の桜島君には関係ないです。…………でも、この反応って事は、やっぱり、そう思っていたって事ですか?)

今回の桜島は前回の桜島とも、前々回の桜島とも、その前の桜島とも違う。だから、共通ルート中に無視をしたり、特別に冷たく接したりはしなかった。だけど、わざわざ、企みに乗ってやる必要も無い。今回は捨て周回。やっと自由タイムになったけど、残りは引き篭もって、寝て過ごす。もう、今日以降桜島と会う事も無いだろう。

(…………いつもなら短い一週間が、今回は長く感じそうですね)

今回は前回と違い、桜島が琴音に告白をした。桜島の本心を知らなければ、きっとこの大チャンスに飛びついただろう。だけど、琴音は知っているのだ。桜島は役立たずな琴音を嫌っていると言う事を。告白に喜んで、受け入れた瞬間に、嘘だと笑われるか、それとも、暫くお付き合いをした後に、嘘だったとバラされるのか。大方、そのどちらかだろう。前回よりも質が悪い。と言うよりは、周回を重ねるごとに、酷くなっている。

(…………やっぱりバグですか?桜島君とはエッチしてないのに、バグが起きた?……誰としたとかは、関係無いのでしょうか?誰かとエッチすると、バグが起こる?……本来ならモブの私が、攻略対象と接触する事で、シナリオには、直接影響しないバグが起こるとか?……同じ事の繰り返しの退屈な日々でしたけど、こんな変化は嫌です。桜島君のバグは………いつまで、続くのでしょう?早く終わってくれれば良いのに………、その内終わりますよね?エヴァさんや和泉先生のバグも終わりましたし………)

エヴァや和泉のバグも終わった。今回も二人に変わった様子は無かった。

きっと桜島のこれも、すぐに終わる筈だ。チラリと視線を向けると、桜島は、まだ自分が振られたのを信じられない様子で、視線をキョロキョロと彷徨わせている。

(……………振られて、プライドが傷つきましたか?だけど、お互い様です。私だって傷ついてますもん。………桜島君の馬鹿)

「…………ごめんなさい。桜島君」

もう一度、琴音が謝罪の言葉を口にすると桜島の顔が盛大に歪んだ。

「え?なんで?だ、だって、そんなの、有り得ないっしょ?え?………は?」

震える声で桜島はそう言うと、琴音を睨みつけるように瞳を細めた。

(……………また、逆ギレするんですか?…………はぁ。怒鳴られるのは、嫌です)


琴音は自身の体を抱きしめるように体の前で腕を組んだ。





◇◇◇◇◇◇





前みたいに、桜島から酷く責められるんじゃないかと身構えていると、ギンっと目つきの悪くなった桜島は、琴音が思ったよりも静かに口を開いた。

「なんで?……だ、だって……琴音チャン、お、俺と仲良くしてたじゃん?俺の事嫌いなの?どうして?…………俺、もしかして何かしちゃった?怒ってるの琴音チャン?ね、ねえ……?なんで?なんでなの?琴音チャン。………俺達仲良しじゃん?」

「………お友達として、仲良くさせて頂いてました。…嫌いと言う訳では、ありませんし、桜島君が何かしたとか、悪いって事では無いです。………それに先程も言った通り、今は恋愛をしている場合じゃないので」

キッパリとそう告げると、更に桜島の目つきは悪くなる。その鋭い視線に、琴音はほんの少しだけ冷や汗をかいた。

少し怖い。桜島のこんな顔は初めて見た。一番最初に逆ギレされた時より、怖い表情だ。眉間に凄く皺が寄っている。

(私なんかに振られて、……思い通りに行かなくて、苛ついてます?……………怖い)

ふるりと無意識に体が震えてしまう。それを見た桜島は、ハッとした顔をしてから、嘘くさい笑顔を作った。

「ご、ごめん。琴音チャン。俺、君を怖がらせる気は無いんだ。これは違くて………えっと、ごめん。……あ、もしかして、俺に遠慮してる?俺がアイドルだから?それなら気にしなくて良いよ?此処では、そんなの関係無いし、此処から出た後も、心配しないで?暫くは世間には内緒で付き合う事にはなるけどさ、でも、絶対に俺、琴音チャンの事、大事にするし、優先順位も一番にするよ?浮気だって絶対にしないって誓うよ?……それにさ、こんな状況だからって、好きって気持ちを隠さなくても良いって。確かに、不謹慎ってヤツかもだけど……。ほら、だってさ、緑子チャンも元気と良い感じだったじゃん?あの二人も多分付き合ってるんじゃない?だから俺らも気にしなくて良いって。………ね?琴音チャン。自分の気持ちに素直になって良いんだよ?俺の事、本当は好きでしょ?ね?俺も好きだし、俺達両想いだよ?………ねえ、好きだよ、琴音チャンも素直になってよ」

琴音を安心させるような、優しげな笑み。だけど微かに目元がピクピク動いているし、口の端も引き攣っている。

(………………キッパリお断りしたのに、まだ、諦めないんですか?そんなに、私を傷つけたいんですか?……………酷いですよ。桜島君………、無理しちゃって、演技が剥がれかけてますよ?………はあ)

振られても諦めない、必死な姿の桜島。何も知らなければ、きっと嬉しく感じるだろう。だけど、本心を知っている琴音は、胸が悲しみで、ぎゅうっと締め付けられた。

「桜島君、………本当に、無理なんです。ごめんなさい。桜島君の事を異性として、見れません」

「は?……………………」

もう一度、琴音が謝罪の言葉を口にすると、桜島はピクッと眉を動かした後に、無表情になった。漸く、取り繕うのも演技も辞める様だ。

「………………は?なら、何で俺に良い顔してたんだよ?………思わせぶりな態度でさ?物だって受け取ってさ、………それは無いだろ?なあ?だったら、……………返せよ?」

(う………ほら、やっぱり。こっちが本音ですよね?思わせぶりな態度?そっくりそのまま、お返ししますよ………)

「………………物は、私から欲しいなんて一言も言ってません。……返せと言うなら、全て返しますよ?……食料も、日持ちする物には、手を付けてませんし、食べてしまった物なら、何か代わりの物をお返しします。お好きな物を持って行ってください」

桜島から受け取った物を食べる気にならなくて、琴音は素直に受け取ってはいたが、日持ちする物には手を付けずに、部屋の隅に置いていた。菓子パンや野菜や果物は、緑子や美奈に渡して他の物と交換していたので無いが、代わりの物なら沢山有る。今回の周回は自由タイムに入ったら、最終日まで引き籠もるつもりだったので、今日の昼間に、一人で探索に出掛けていたのだ。

アイテムの有る場所を知っている琴音は、簡単に沢山の食料を手に入れる事が出来た。それを全部桜島が持って帰ったとしても、問題は無い。また探しに行けばいいだけの話だ。

琴音が言い返すと、桜島は更に顔を歪めた。

「っ……は?なんだよ。それ……、っ……駄目だ。だってそれ、誰かから貰ったんだろ?そんなの、ちゃんと返した事にならないっしょ?それに欲しいって言ってないとか、そんなの通用しないでしょ?だって、琴音チャン、探索に行ってないんだし、欲しいって言わなくても、持って来て貰える事は分かってるじゃん?断ったりもしなかったし、そんなの……狡いだろ…………」

(狡いですか………。危ないから、探索に行かなくて良いって言ってたのも、やっぱり嘘だったんですね?…………嘘つきは、桜島君じゃ無いですか……)

「それなら、どうしたら良いですか?………桜島君の言う通りに、しますよ?」

琴音が静かな口調で返すと、桜島はギリギリと歯を噛み締めた。

「っ…………クソッ……、……もう、良い……。マジで、幻滅したよ。琴音チャン。……俺の事、利用してたんだな?物だけが目当てだったって訳?………………ちっ……うぜぇ、……俺に、二度と話し掛けんな、……………クソ女」

そう言うと、桜島は部屋を出て行った。バタンと大きな音を立てた扉が閉まる音に、琴音はビクリと肩を揺らした。

(…………話し掛けるなって、桜島君から、勝手に来てた癖に…………はあ。揉めたくないのに、結局こうなっちゃいました、……………苦しいです)

お断りして、気まずくはなるだろうが、それで後は顔を合わせないで終わり。そう思っていたが、そう簡単には行かない様だ。怒鳴られて、怒りをぶつけられて、結局、喧嘩になった。

(…………………桜島君、私、このままだと、貴方の事を嫌いになっちゃいそうです。私の方こそ幻滅ですよ)

バグのせいだとは分かっている。それでも、桜島の裏の顔。いや、本性を見る度に、琴音の中で桜島に対しての好感度は下がって行く。勿論、嫌な面ばかりじゃ無い。桜島にも良い所が有るのを、知っている。だけど、それは緑子に対してだ。琴音に対しては、嫌がらせの様な事をしたり、悪意をぶつけてくる相手を、好意的には見れない。

(……………結局は、私が騙されたフリをする方が、結果的に精神的ダメージが少なく済みそうですね?……もし、また桜島君がバグっていて、同じ事が有れば、次回からはそうしましょう)

そう考えて、胸がズキンと痛む。

(…………………苦しいです。……嫌われるのって辛いですね……。太陽君、早く会いたいです……。よしよしして、ぎゅうってして欲しいです………)

その後、エヴァやノアが何度か訪ねて来たが、琴音はそれを無視して誰にも会わずに、最期の日を迎えた。





◇◇◇◇◇◇





「どうして、ですか?」

ぶるぶると琴音は震えた。

最低な長い一週間を耐えて、やっと前回の周回が終わったのに、また緑子(の中の人)は太陽を選んだのだ。

「ミーちゃん。手ちっちゃい……。可愛いッス」

「元気君が大きいんだよ?私はそんなにちっさくないもん………プンっ」

ぷくーっと頬を膨らませる緑子の頭を太陽が撫でている。仲睦まじい二人。それを見ていたくなくて、琴音は、その場を足早に立ち去った。

(………………………はあ)


「あ、琴音チャン♡奇遇だね☆」

頬を染めた桜島から声を掛けられて、琴音はうんざりとした。だけど、顔や態度に出すのは堪えて、ニコリと笑顔を作る。

「こんにちは、桜島君。……奇遇ですね」

「うん♡………運命って感じ?なんちゃって☆……あ、俺さ、これから談話室行くんだけど、琴音チャンも行かない?……それか部屋に来ない?えっと……食料沢山あるからさ、欲しい物あげるよ?」

「…………ありがとうございます。談話室に、ご一緒しますよ」

「そう?じゃあ行こっか?…………へへへ♡琴音チャンって手ちっちゃくて柔らかいね♡………可愛い」

勝手に手を繋がれて、先程の太陽と緑子の会話と似た事を言われて、琴音はチクッと胸が痛んだ。

(……………どうして、これが太陽君じゃ無いんでしょうか…………)

やっぱり今回も桜島はバグっていて、表面上は友好的な顔で近づいて来る。今回も、エヴァや和泉はバグっていない。談話室に着くと、エヴァと和泉とノアが思い思いに過ごしていた。

「…………おや、仲が良いんですね。とても良い事です。……学生さん同士でお似合いですね。………若いって、良いですね」

「………ははは、見せつけてくれるね?………………羨ましいよ」

「……………ふん」

和泉とエヴァは琴音にベッタリな桜島を微笑ましい顔で見ている。ノアは呆れた顔で鼻を鳴らした。

「へへ♡………良いだろ、エヴァ。俺と琴音チャン、めっちゃ仲良しだから羨ましい?………ねー、琴音チャン。あっち座ろっか?……あれ?アノニマスは居ないんだ?」

桜島は和泉の言葉に嬉しそうに、はにかんで、それからエヴァに得意げな顔を向けて、奥のソファーを指差して、談話室をキョロキョロ見回している。

桜島の言う通りアノニマスは居ない。今回も姿を殆ど見ていない。

(…………これじゃあ、他の方と過ごすって訳にも、いきませんね)

和泉は太陽と共に地下に行くので、どっち道無理。エヴァと桜島は仲が良いから、エヴァに行くのも無理だろう。ノアも無理。アノニマスは、見つける所から始める必要がある。かなり面倒くさい。

(…………そんな気分じゃ無いので、別に構いませんけど、………はあ)

「ねえ、琴音チャン♡聞いてよ、俺さー」

目の前でニコニコと他愛もない話をし続ける桜島をチラリと見て、琴音は、げんなりとした。

(…………嫌がらせバグ、とでも名付けましょう。……………一度盛大に騙されてあげれば、バグが直ったりしませんかね?………一度直れば二度と起きないとか?………はあ、でもバグですから、どうなるかなんて、誰にもわかりませんよねぇ……。とりあえず、今回は流れに身を任せてみましょう)

明後日には、緑子は太陽ルート確定だろう。そうなれば、きっと桜島は琴音にまた、何かしらで接触してくる筈だ。琴音から告白する事は無いから、前回と同じで、告白されるのかも知れない。

(……………………騙されたフリをして、泣いて見せれば、良いんでしょうか?そうすれば満足しますか?桜島君………)

笑顔で話しかけて来る桜島に、上の空で相槌を打ちながら、琴音はそんな風に考えていた。





◇◇◇◇◇◇







「ねえ、琴音チャン♡好きだよ♡………俺達付き合おう?」

自由タイム一日目、前回と同じ様に告げられた言葉に、琴音は内心で乾いた笑いを零した。

(……………やっぱり、また同じですね。………はあ、仕方ないです。ササッと終わらせてしまいましょう)

「………嬉しいです。桜島君、………私も好きですよ」

琴音が笑顔で答えると、桜島は目を見開いた。それから、俯いて震えている。

(思い通りに騙せて嬉しいですか?笑いを堪えてます?良かったですね。これで、満足でしょう)

震えながら俯く桜島を、琴音は冷たい瞳で見下ろした。

後少ししたら、きっと桜島は顔を上げて、騙された琴音を笑うのだろう。

(………………っ……嘘泣きの必要は無さそうですね)

悲しくて、じわりと涙が滲む。だが、まだ泣くのを堪える。泣くのは桜島が顔を上げてからだ。眉間に力を入れて、暫く待つ。

数分待っただろうか、やっと顔を上げた桜島はドン引きするくらい、泣いていた。鼻から鼻水も垂れている。アイドルらしからぬ酷い顔だ。

「え?…………桜島…君?」

「琴音ヂャン……俺、めちゃくちゃ嬉じぃ……。グス………っ俺、絶対に幸せにするから……。っ……俺っ!!!!大好きっ♡♡♡♡マジで好きっ!!!!琴音チャンっ♡琴音チャン♡琴音チャン♡うぅ……、好き♡」

鼻水を垂らして号泣する桜島から、ガバリと勢い良く抱きしめられて、琴音は頭の上にハテナを浮かべた。

(う……えええええ?!何事ですか?えっ???!)





◇◇◇◇◇◇



「………そう、二人は付き合ったんだ?おめでとう、ハルト。……琴音殿」

「へー?………おめでとう………酷い顔。……鼻水拭きなよ」

「ありがとう。二人共、俺めっちゃ幸せだよ☆でへへへへ、ん……」

桜島は照れた様に笑って袖で顔を拭いている。

「あ、ありがとう、ございます?」

そして、琴音は困惑した顔で、二人にペコリと頭を下げた。

(……………え?本当に、私達、付き合うって事なんですか?え?)





◇◇◇◇◇◇





桜島は、ぎゅうぎゅう琴音を抱きしめて、みっともなく泣いていたかと思うと、いきなり琴音の手を引いて部屋を出た。

困惑したまま、連れて行かれた先は談話室で、桜島はそこに居た、エヴァとノアに琴音と付き合う事になったと報告した。

(ええ?………あれ?どう言う事なのでしょうか?……あれ?)


エヴァとノアの二人から祝福されて、桜島は嬉しそうに、はにかんでいる。

琴音の思い描いていた光景とは全然違う。

(あれ?………え?だって、私を騙して、……笑うんじゃ?………え?どう言う事ですか?)

眉を寄せて、困惑して突っ立っていると、ノアが怪訝な視線を琴音に向けていた。それから、呆れた様に息を吐くと桜島に声を掛けた。

「…………………ああ、……ハルト。彼女拗ねてるよ?折角気持ちが通じたんなら、ボク達の所に来るより、あの子と二人で過ごした方が良いんじゃないの?」

そう言われた桜島は、ハッとした顔をした後、エヴァ達から離れて、琴音の方へ駆け寄って来た。

「ごめん!!!!琴音チャンっ!!!俺嬉しくて、早く皆に自慢したくて、………でも、ノアさんの言う通りだよね?ごめん。部屋戻ろ?……俺の部屋行こっか?………ごめん。……でも、今からは、ずっと二人っきりだよ♡………琴音チャン♡」

蕩けた瞳でそう言われて、背後には犬尻尾の幻覚すら見えそうな勢いだ。琴音は唖然とした。

(え?………これ、演技ですよね?皆さんで私を騙してるんですか?………っ……どう言う事ですか?)





◇◇◇◇◇◇




談話室を後にして、桜島の部屋に着くと、桜島は琴音をまた強く抱きしめてくる。

「琴音チャン♡好き♡めっちゃ好きだよ♡俺、夢みたい♡……すっげぇ好き♡…………はあ♡俺、マジで、こんな気持ち初めてで、怖いよ♡琴音チャン♡…………ねえキスしても良い?………俺達恋人なんだから、良いよね?俺我慢出来ないよ……」

「え?まっ……んん、…っ……」

琴音の返事を最後まで聞かずに、桜島は唇を重ねて来た。最初は軽く触れただけの唇。だが直ぐに、キスは深くいやらしい物へと変わった。

「ん……っ♡琴音チャン♡っ……んっ♡はぁ……♡」

「んっ………っ……ふぁ……」

相変わらず上手いキス。桜島の舌は巧みに口内を這う。蕩ける様なそのキスに、琴音は抵抗も忘れて、久々の性的な快感に体を震わせた。

(んんっ………、酔ってないのに、桜島君ってば……、ん、ど……して?本当に、私を好きなのでしょうか?……っあ………♡)

レロレロと上顎を舐められて、ピクんピクんと体は震える。気づくと桜島の手が、服の下に潜り込んでブラをたくし上げていた。

「んっ……♡琴音チャン♡かわいっ♡はぁ♡琴音チャン♡……♡」

「ひやぁ、……ぁ……っ……」

きゅっと乳首を軽くつままれて、甘い声が出る。暫くオナニーすらしていなかった体は、与えられる快感に喜んでいた。それに、桜島の愛撫はかなり上手い。琴音の体は徐々に高められて行く。

「ひぃ………。やぁ……桜島君……、やぁ。何で?」

胸を揉まれながら、耳を舐められて、琴音は震えながら、か細い声で問いかける。すると、熱い吐息が耳に掛かる。

「なんでって……、好きな子に触りたくなるのは当然でしょ?……俺、琴音チャンに沢山気持ち良くなって貰いたい♡触りたい♡……任せて、絶対に気持ち良くするからさ♡ね?良いでしょ?……だって俺達、恋人なんだからさ♡」 

「あ………、待って………」

そう言うと桜島はベッドに琴音を押し倒して、スカートに手を掛けた。



◇◇◇◇◇◇◇




「んっ♡あぁん♡桜島君っ……駄目ぇ!!!ぁっ!!!!」

酔っていた時の様に桜島は琴音のおまんこを舐め回して、何度もイかせる。だけど、あの時の様に無理やりでは無い。

「琴音チャンのおまんこ♡とっても美味しいよ♡俺、これなら、ずっと舐めてられるし、舐めてたい♡………はあ……、マジですげぇ美味い♡……俺知らなかった♡好きな子のまん汁ってマジで美味いんだね♡っ……はぁ♡もっと出して?琴音チャン♡沢山してあげる♡」

じゅるじゅると音を立てて、愛液を啜って、桜島は満足そうな顔をしている。前のクンニとは大違いだ。

(んっ………♡はぁ、……桜島君?……本当に私を好き?…………今回は、本当に嫌われていないのでしょうか?流石に騙す為に嫌いな相手に、わざわざこんな事しませんよね?だって今回は、誰かと間違えてませんもんね?私だって分かってて、舐めてくれてますもんっ………ふぁ…………)
 
おまんこがフヤケてしまいそうな程に、ずっと舐められている。桜島は完全にシラフだ。琴音の名を甘く呼んで、お互いに言葉を交わしている。これで誰かと間違っていると言うのは流石に有り得ない。

(んんっ……、は、気持ちぃ……ん♡)

ビンビンに勃起したクリを口の中で、ちゅるちゅる舐められて、足がピンッと伸びて、またイってしまう。

「ん♡琴音チャン、またイったね♡俺の舌、気持ちぃ?もっとしてあげる♡ほら、沢山イって?」

口元を愛液でベタベタにした桜島は、琴音に笑い掛けるとペロリと唇を舐めた。

(はぁ……はぁ……、……本当に、今度こそ信じて良いんですか?桜島君……、今回の貴方は、本当に、私を嫌ってない?私の事を好きなんですか?そうなら、……嬉しいです。ふふふ。………少し、ネガティブになり過ぎてました。そうですよね、他の、……エヴァさんや和泉先生と喧嘩した周回が有った様に、行動や接し方で、変わるんです。……絶対に仲良くなれないなんて、私の思い込みでした……。三度目の正直と言うやつでしょうか?)

ほんのりと胸が暖かくなる。

自分でも単純だと思うが、桜島に対しての嫌な感情が消えていくようだった。

「ん、待ってください桜島君、………私もしたいです。…………」

「え?……良いって、俺がするからさ♡ね?琴音チャンは寝ててよ。俺が沢山ご奉仕するからさ♡気持ちいいでしょ?………俺、琴音チャンが感じてる所もっとみたいよ♡だから、寝ててよ☆」

一瞬言葉に詰まった様子の桜島だったが、すぐに甘い声を出して、起き上がる琴音を制止する。

「…………でも、私もしたいです♡桜島君……♡」

やっと桜島と本当に仲良くなれたと言う事と、久々のエッチな快感で、琴音はテンションが上がっていた。されるのも良いが、琴音もしたい。触れたい。

(ふふ♡………折角なら、お互いに楽しまないと損ですもんね♡)

前は桜島が勃たなくて悔しい思いをしたが、今回は、そのリベンジだ。

(桜島君、…………私、嬉しいです。私も、沢山、してあげたい♡)

桜島の制止を無視して起き上がり、そっと体を寄せて琴音からキスをすると、桜島はビクリと震えたが、大人しく受け入れてくれている。

「あ………琴音チャンからの……キス♡っ……♡」

「ん♡桜島……くん♡」

(桜島君のおちんちん♡………………え?)

キスをしながら、そっと桜島の股間に手を伸ばして、琴音は愕然とした。柔らかな感触。

桜島の股間は、なんの反応もしていなかった。





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