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桜島晴人

2話 プランA

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「とは言った物の………、どうしましょう。縛りプレイ……、縛るんですから、ロープや手錠がゲット出来れば良いんですけど……。エヴァさんは沢山持ってましたし、探せば有るってことですよね?」

桜島をヤってやると決めたは良い物の、先ずは準備が必要だ。作戦も考え無いといけない。

(うーん。二人っきりになるのも、難しいんでした……。自由タイムに誘っても、アイドルだからって、断られますよね?うーん)

むむむと眉を寄せて考える。それから、はあと大きくため息を吐いた。

(……わざわざ食料を押し付けてまで、悪口言うなんて……。前回は、そこまで性格悪く無かったですよね?やっぱりバグってます?今までだって、心の中では不満に思っていたんでしょうけど、表立って言ったりは無かったですよね?前回の時も、言うつもりは無かったって、言ってましたもんね?)

前の周回の桜島はうっかり、本心を溢してしまうまでは、ずっとチャラいけど優しく接してくれていた。それこそ、桜島は緑子や美奈、琴音に対して露骨に態度を変えたりしなかった。女の子には分け隔てなく優しかった。食料を貰いに行くと、何時もニコニコ笑顔で、楽しそうに話掛けて渡してくれていた。だからこそ、琴音は、桜島の本心を知って、余計にショックだったのかも知れない。

(だけど、演技だったのなら全員平等なあの態度にも、頷けますね。………チャラくて女好きを演じていたから、私にも優しかったんですね?アイドルとしての、『ハルト』のイメージを崩さない様に……。やっぱり努力家で、真面目な面も有るんですね。桜島君………。若干素の性格は悪いですけど)

そんな外面の良い桜島が、エヴァや和泉と悪口で盛り上がっていた。それも、わざわざ琴音に食料を押し付けてまで。確かに、若干性格は悪かったが、どうも腑に落ちない。そんな事をしたら『ハルト』のイメージが悪くなる気がする。

(男同士だから?うーん。分かりません。……どうして今回に限って、陰口なんて………)

そこまで考えて、ハッとする。

(今回は私が共通ルートで、ちゃんと自分の役割を全うしていないから?)

このゲームでの琴音の役割はヒロインの緑子と、攻略対象との好感度上げイベントの為に死ぬ事。そして、もう一つは、ヒロインの緑子との対比の為だ。緑子を良く見せる為には、引き篭もり、何もしないのに食料やアイテムを受け取る琴音が必要なのだ。

(それなのに、私が自分で食料を探したり、男性陣から受け取らなかったから、バグが発生したのでしょうか?強制力のせいで、表向きは誰かから、貰った事にはなってますけど。ほんの僅かに何か影響が?………シナリオには直接的な関わりは無いですけど、……その代わり、余計に皆さんに嫌われた、と言う事ですか?そんなぁ……ヒロイン補正の悪い影響って事ですか?そう言えば、さっき緑子ちゃんの名前も聞こえました。)

今回の緑子はアノニマス狙いだが、それでも攻略対象達からの好感度はモブの琴音とは比べ物にならないくらい高い。ルート確定までは逆ハーレムと言っても良い。

そんな中で、何度も味わったモブとヒロインとの差。それが今回、桜島のバグと言う形で現れたのかも知れない。

(なるほど。………どうしたって、やっぱり私は役立たずのモブですもんね。役立たずのモブじゃないと駄目なんですね?)

自分の考えに、しゅんと肩を落とす。反省して、自分の事は出来るだけ自分で頑張ろうと決めたのに、全てが裏目に出たのだ。流石に少し落ち込む。

(今回の周回では、皆さんから嫌われてるんでしょうか?……エヴァさんや、和泉先生にも?お二人も桜島君に賛同して、楽しそうに笑ってました……。)

チクリと胸が痛んだが、パンパンと頬を打って気分を入れ替える。悩んでいても始まらない。どうせ、次の周回になれば全部無かった事になるんだ。だから全然平気だ。

(そうですよ。ウジウジしてたら折角の時間が勿体無いです!!!アレは完全にバグでしたけど、エヴァさんや和泉先生から、凄く好かれる周回も有ったんです。なら、嫌われる周回が有ってもおかしくは無いです。……それに今までだって、似たような事は沢山あったじゃ無いですか……。もう、慣れました。そんな事より、桜島君です。……バグのせいだとしても、そんなの関係ないです。…………私だって、陰で悪口言われたら、怒るんですからねっ!!!文句が有るなら前みたいに、直接言えば良いのに……。そっちの方が全然良いですよ)

プンプンと頬を膨らませて、琴音はぎゅっと拳を握りしめる。

(必ず謝って貰いますよ!!!!桜島君っ!!それから、惨めに私の中で、射精させてやります!!!ふふふ♡)






◇◇◇◇◇◇






「琴音っち?……………なんや物騒な物持ってんなぁ?貰ったん?………」

「あ……。美奈ちゃん。……あ、はい。貰ったんです。何かの役に立つかもしれないって思って」

ロープを手に持ち、るんるんで廊下を歩いていると、後ろから美奈に声を掛けられて、琴音はビクリと肩を揺らした。

(み、美奈ちゃん。この時間にお一人なんて、珍しいですね…………)

マップで確認すると、今は皆で緑子を囲む様に談話室に居る。美奈もいつもなら、そこに居る筈だ。

「そうなんや?………、ロープなあ?」

そう言って、美奈は琴音の手の中のロープをじっと見ている。その視線に何故か琴音は嫌な汗をかいた。

だが、すぐに美奈はロープに興味を無くしたように視線をそらすと、ニコッと笑った。

「琴音っち、……なんやキャラ変わった?そんなに、アグレッシブな感じやっけ?………こんな状況やもんなぁ。ハイになってるん?せやけど、………此処は危ないし、琴音っちも、怖いんやろ?…………出来るだけ、部屋で大人しくしてた方がええんちゃう?……………じゃないと、化け物に食べられて、死ぬかも知れへんで?」

「え………。」

美奈の言葉にポカンとしていると、美奈は声を上げて笑った。

「琴音っち、その顔めっちゃ間抜けやんなぁ!!!あはは、もー、ちょっとしたジョークやんジョーク!!!あー、せやけどごめん。こんな状況で言っていい冗談や無かったな。ごめんやで、琴音っち。部屋に戻る所やったんやんな?邪魔してごめんなー。うちは談話室行くわ。ほなね」

バンバンと琴音の背中を叩くと美奈は、あははともう一度笑うと、談話室へと向かって行った。その背を琴音は見えなくなるまで、じっと眺めていた。




◇◇◇◇◇◇




(少し、ドキリとしちゃいましたね。………ふう、談話室に行く所だったんですね)

自室に戻って、琴音はドキドキとする胸を抑えた。まるで美奈に全てを見透かされた様な気がした。美奈にも自我が?と一瞬思ったが、冗談だった様だ。

(心臓に悪い冗談ですね。はあ………。部屋で大人しく……ですか。……美奈ちゃんは、どの周回でも、結構私の違和感に気付きますよね。流石お助けキャラ。……周囲をよく見てますね。………共通ルート中は、余り役割から逸脱した行動はしない方が、良いのでしょうか?……余り怪しまれたり、シナリオに影響が出ちゃうと判断されると、完全にオートモードになってしまうかも知れません。それは、辛いので、嫌です。…………どうせなら、自我も消えてくれれば良いのに……)

共通ルート中に、余りにも度が過ぎた行動を取ろうとすると完全オートモードの様に、自我が有る状態で、次の周回まで一切、自由に動けなくなる。それは、緑子が地下へと行った後もだ。死ぬその日まで、ずっと部屋で壁を見つめ続けるなんてゴメンだ。そんな事が有ったから、琴音は早々に自分には何も出来ないと、色んな事を諦めたのだから。

(……………はぁ。最近は結構、周囲もバグってたので、忘れてましたけど、共通ルート中は、少し行動に注意を払う必要が有りそうですね。………美奈ちゃんは要注意です。………むぅ)

偶然だろうが、美奈からモブはモブらしく、役割通りに部屋で大人しくしていろと釘を刺された様な気がして、琴音はモヤモヤとした。

(……………むう……。でも、本当は美奈ちゃんだって、探索に行かない私を悪く思ってるんじゃ無いですか?……良いなぁ。美奈ちゃんは。緑子ちゃんの親友で、情報屋さんですもんね。……………モブなのに、死んだりしないですもんね。羨ましいです)

そこまで考えて、ブンブンと首を振る。後2日後には自由タイム。シナリオと関係のない、その期間だけが、本当の意味で琴音が自由に過ごせる時間なのだ。美奈も緑子も居ない。何をしても、体は固まらない。最高の一週間。それをこんな鬱々とした気分で過ごすのは勿体無い。

「ふふふ。そうですよ!!!私には落ち込んでいる暇なんて、無いです!!!ロープは見つかりましたから、これで準備は完璧ですね。後はなんとか、桜島君と二人っきりになりさえすれば、スキを見て、ロープで縛って、逆レイプです♡おまんこの準備も万全ですし、後は待つだけです♡」

ドキドキと胸が高鳴る。今回も、サクッと手に入れたナスで処女を喪失済みだ。喪失が遅かったので、まだ少し痛むが2日後には完璧な非処女おまんこになっている筈である。

(………暫く様子を見てましたが、やっぱり今回の和泉先生も、エヴァさんも、バグっている様子は無し。アイコンも普通でした。完全に普通の状態に戻ってます。なんだか懐かしく感じますね。ふふ。………風紀委員長のノアさんも居ませんし、なんだかんだ、久々に結構、やりたい放題出来そうです♡最悪、桜島君を襲うのに失敗しても、お二人の内、どちらかが、性欲処理で、抱いてくれるかも知れませんし。………桜島君のバグのせいで、嫌われているかも知れないのは、少しネックですけど、そうなると和泉先生は難しそうですが、性欲の強いエヴァさんなら、いやらしく迫れば抱いてくれそうです。……今回は処女じゃないですし、多少乱暴にされても問題は有りませんし、寧ろ久しぶりに少し乱暴なエヴァさんとのエッチも逆に良いかもです♡……むふふ、どっちに転んでも楽しめそうですね♡太陽君は今回はノータッチですけど、時間が有れば少し、情報を探っても良いかもしれません。完璧なプランですね♡)

むふふ、むふふと琴音は笑った。





◇◇◇◇◇◇




「緑子ちゃん?皆さんで何処へ行くんですか?」

「あ、琴音ちゃん。私達暫くは別行動するから、……此処から出られる様な方法が何か無いか探すの。だから琴音ちゃんはお部屋から出来るだけ出ないで待ってて。それじゃあ行ってくるね。」

(はーい♡行ってらっしゃい♡)

いつも通り、緑子達を見送り、琴音は早速桜島の部屋に向かう。

(…………とりあえず、プランAを試してみましょう。駄目ならプランB、Cと考えて、有りますし)

コンコンと扉をノックすると、すぐに桜島は出て来た。

「あれー☆おはよっ☆琴音チャン。琴音チャンから来てくれるなんて、初めてじゃない?あ、もしかして朝ご飯?……お腹減ってるの?甘いパンが有るから、あげるよ?遠慮しなくていいからね?」

ニコニコと微笑む桜島。だが、そんな優しい顔の裏では、琴音の事を悪く思っているんだと思うと、イラッとする。だが、琴音も、にこやかな笑顔を返した。

「ありがとうございます。桜島君、それなら有り難く頂きますね。………あの、でも用事は他に有って、朝ご飯を貰いに来た訳じゃないんです………。」

「え?……そーなの?俺に用事って?」

桜島はキョトンとした顔だ。

「あの、……いつも頂いてばかりなので、その、申し訳なくて。……なので、もし良ければ頂いた食材で夕食を作るので、今晩食べに私のお部屋に、来てくれませんか?…………駄目でしょうか?」

おずおずと上目遣いで告げれば、桜島は更にポカンと口を開けた。

「え?…………夕食って、俺に作ってくれるって事?……手作りの料理って事?」

「はい、………あの、そんなに手の込んだ物は無理ですけど、……頂いた缶詰もまだ沢山有るので、それを使ってご馳走できればなと思って。……桜島君さえ、良ければになるんですけど。無理にとは、言わないです。でも……お礼がしたいんです」

琴音がそう告げると、桜島は何かを考えるように視線を動かした。

「あー、マジ?……んー。そんなの気にしなくて良いのに。………ん。……でも、そこまで言ってくれるなら………、えっと、でも、夜に部屋かぁ………んー」

「あ、はい。…………あの、桜島君、アイドルさんですもんね。もし、二人っきりが駄目なら他の皆さんも誘いますけど、どうでしょうか?お礼がしたいんです」

本当は他の皆を誘うつもりなんて更々無いが、そう言ってみる。押して駄目なら引いてみる作戦だ。

そう告げると桜島の視線がまた、悩む様に泳いだ。

「いや、………でも、皆の分作るってなると大変でしょ?……あー、どうしよっかな……。………」

(やっぱりプランAでは、駄目ですか?……私、嫌われてますもんね。んー、仕方ないですね。ここは一旦出直してプランBでしょうか)

「すみません。やっぱり忘れてください。………ご迷惑掛けたいわけじゃ無いんです。そうですよね、桜島君はアイドルさんですし、………余り良くないですもんね。手料理とか、そう言うの。今言った事は、本当に忘れてください」

そう、あっさりと引き下がると、桜島は困った様に笑った。

「あ……、いや。待って。その、俺、別にそう言う訳じゃ無くてさ………。あのさ、……何時くらいに行けば良い?他の人は呼ばなくて良いよ。………俺、一人で行くし」

(え?…………これはプランAは成功と言う事ですか?なんだか、思ったよりアッサリで、少し意外ですね。)




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