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アノニマス

31話 果たせない約束と果たせた約束

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「琴音♡愛してるよ♡はは♡……沢山出たから子供が出来てしまったかも知れないね?……もし……出来てたら産んでくれるかい?」

琴音のお腹を撫でてエヴァは幸せそうにそう言う。

「ん♡子供………、出来てたら産みます♡産みたいです♡はぁ♡お腹熱い♡」

ズルリとおちんぽが抜かれるとこぽこぽ精液が溢れてくる。ムワッとした少し臭い精液の匂いが広がる。やはりエヴァの精液は少し臭い。それでもその匂いに琴音はうっとりとした。

(ん♡初めて嗅いだ精液の匂いはこの匂いでしたもんね♡…はぁん♡臭いけど……好き………。エヴァさんとのラブえっち最高ですね♡……こんなバグなら毎回でも良いです♡…………あー。でも他の人とえっち出来無いのは少し困りますね。毎回エヴァさんだと飽きちゃいます。…………だって此処からは一生出られないんですもん)

琴音に腕枕するエヴァの胸元にすり寄ってそんな事をぼんやりと考える。ふと見上げたエヴァの顔はやっぱり泣きそうで琴音はなんでだろうと思う。

「嬉しいよ琴音………、私と琴音の子供ならきっと………可愛い」 

(たまーに。泣きそうな顔しますよね……、嬉し泣き?………そうは見えませんけど。なんでですか?エヴァさん?)





◇◇◇◇◇◇





エヴァとの監禁生活も残す所、後半日を切った。意外と楽しめたなと琴音はエヴァから貰った髪飾りを撫でながら思う。

「琴音、はい。あーん♡」

朝ご飯をエヴァが口に運んでくれる。それを琴音は素直にパクンと食べてニッコリと笑顔をエヴァに向けた。

「美味しいです♡エヴァさん♡ありがとうございます♡」

そう告げるとエヴァも微笑む。幸せそうなその顔に少しだけ胸が痛んだ。

エヴァとちゃんと最後までセックスしてから、エヴァは琴音に何度も何度も一緒に帰ろうと言った。エヴァの世界に一緒に行って結婚しようと。それに琴音も調子良く答えていたが、死が迫った今になって少しだけ罪悪感を抱いたのだ。

「琴音……♡私の世界で暮らすのは最初は大変だと思うけど、でも私が必ず幸せにするし不自由はさせないよ?………結婚式はどうしよう?琴音の世界の式とは違うかもしれないな……、琴音はどんな風にしたい?はは。楽しみだなぁ」

エヴァはまた琴音にそう言う。

(…………エヴァさん。ごめんなさい。一緒には行けないんです。………だって私が死んだら全部リセットされますから。この貴方とは今日でお別れなんです……)

今回のでろ甘なバグエヴァとの別れ。それに琴音は今までに無い寂しさを胸に抱いた。

(………なんだかんだエヴァさんが私の初めてのひとですもんね。………こんなに仲良くなったのに。全部消えちゃうなんて………。やっぱり少しだけ寂しいです。……………)





◇◇◇◇◇◇




アノニマスに食べられるまで後1時間ほど。だけど琴音はベッドに鎖で繋がれていた。エヴァもまだ起きている。琴音の髪を優しく撫でてニコニコとしていた。

(どうなるんでしょう?……後1時間も無いですけど……)

現状。琴音とアノニマスが会う事は不可能に思える。だが琴音がそう思った時コンコンと扉が鳴ったのだ。

(……………アノさんでしょうか?)


ほんの少し表情を曇らせたエヴァは剣を片手に立ち上がった。それに琴音は眉を寄せた。

(エヴァさん?………なんで剣なんて)

そう思ったがエヴァがドアノブに手を掛けた瞬間扉ごとぶっ飛んでその衝撃に琴音はその疑問も吹っ飛んでポカンと口を開けた。

ドゴッ!!!!!

パラパラと小さな破片の落ちる音と扉と壁ごと吹き飛んで奥の壁にエヴァがおもいっきり叩きつけられた音。そして床にドシャリと落ちた。だが気絶はしてないようで何とか起き上がろうとしている。

部屋の入り口はもうもうと粉塵が舞っていた。そして人影が見えた。

「…………ちっ。……一撃で仕留め損なった……。起きてくる………ハルト!!!!早くっ!!!」

そう言うノアの声がしてそれから煙の中から桜島が琴音の側へと走って来た。

(え?………ええ?!なんですかコレ?!)





◇◇◇◇◇◇



何故か桜島が触れると鎖が跡形も無く消えた。それからいきなり抱き上げられて琴音は桜島にしがみついた。

「ひゃあああ!!!!桜島君っ?!ノアさんっ?!なんで?!」

「ごめん!!!!琴音チャン!!!!!説明は後でっ!!!!……………マジでごめん……」

泣きそうに顔を歪めて桜島はそう言うと廊下へ飛び出して走り出した。

(ひゃぁぁ!!!揺れます!!!!怖っ!!!!!ング!!!!…………舌噛みました……ひぃん)

暫く走るとアノニマスが立っているのが見えた。すると桜島は走る速度を緩めた。

「アノニマス!!!!琴音チャン連れてこれたから!!!!俺はノアさんの加勢に戻るから早くっ琴音チャン連れて結界の外に逃げて!!!!アノニマスなら絶対平気なんでしょ?後は任せたからなっ!!!」

「………………コトネ。………」

「ひゃっ!!!!」

まるで荷物を渡す様に桜島はアノニマスに琴音を渡すと来た道を走って戻って行った。

(……………ふふ。なるほど。私を助けに来てくれたんですね?…………やっぱり強制力って凄い………)

琴音は走り去る桜島の背中を眺めて小さく笑った。

(やっぱり…………。どうしたって私は死ぬんですね。)

「……………コトネ。……ハルトから聞いた。………おれ達のタメに……コトネェ……ゴメン。………もうダイジョウブ。逃げようコトネ?おれが守る……。コトネ、約束……ダカラ。これからはずっと一緒………」

ぎゅうっとアノニマスに抱きしめられて琴音はハッとする。

「あ………、アノさん………。っ……いえ。謝らないでください……。」

(まだアノさんですね………。ですけどもうすぐ………)

きっともうすぐ琴音は食われる。強制力にはどうやっても抗えないのだ。

「アノさん……。そう……ですね、ずっと一緒ですよ?ふふ…………アノさん…。」

そう声をかけるとアノニマスの体がふるふると震えだした。それを見て琴音はエヴァから貰った髪飾りを取り外した。

(ああ。………時間切れですね。でもこっちの約束は果たせますね。アノさんのお腹の中でアノさんが死ぬまでは一緒に居られますもんね。……エヴァさん。ごめんなさい、エヴァさんとの約束は………やっぱり無理でした。)

ぐにゃりと歪むアノニマスの顔を見て琴音はニッコリと笑った。




ぐちゃり


緑子の悲鳴と硬い物が床に落ちる音がした。








◇◇◇◇◇◇






「ミドリコ………。いい匂い?ナンデ?」

クンクンと緑子の髪をアノニマスは嗅いで不思議そうだ。

「ん………アノったらくすぐったいよ?シャンプーかな?……そんなにいい匂いかなぁ?」

クスクス笑って緑子は自身のふわふわの髪を嗅いで首を傾げている。仲睦まじい二人の姿をこっそりと眺めて琴音は小さく溜め息を吐いた。

(……………今回の緑子ちゃん(の中の人)はアノさん狙いですか。……残念です。アノさんリベンジならずですね。)

仲良く去って行く二人を見送って琴音もその場を後にする。いつも通り次に意識がハッキリとしたらゲームスタート時の洋館の前だった。もう慣れっこだ。

今回の周回の共通ルートも既に14日目。2週間が経っている。緑子はこのまま行けば問題無くアノニマスルート確定だ。今回は特に目立ったバグも無く琴音はホッとしていた。だが最近になって少しおかしな事が始まったのだ。

(…………………毎回毎回。バグが起こりますね?………いえ、ですけど今回のはまだバグかどうかはわかりませんね。……だって、もしこれがバグなら予想が外れてしまいますし………。はあ………)

そんな事を考えながら暫く廊下を歩いて曲がり角で一度立ち止まる。キョロキョロと辺りを見回して、琴音はふうと息を吐いた。

(………良かった。今日は居ませんね………)

ホッと息を吐いた所で後ろからポンッと肩を叩かれた。

それに琴音はビクリと肩を揺らす。

「ひぃぃぃ!!!!!」

「うわっ?!琴音チャン驚きすぎだってー☆ナイスリアクション☆……ねー?今、一人?あ、良かったらこれ貰ってくれない?沢山見つけたから早く食べないと腐らせたら勿体ないしさー☆ね?ほらーこれ全部あげるよ?」

そう言って紙袋を差し出されて琴音はまたビクリと肩を揺らした。

(う…………。またですか?桜島君……。なんで?………………だって……、本心では何もしない私の事嫌ってるんでしょう?)




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