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アノニマス

22話 意外な一面と揺れる心

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「…………白いおしっこが壁にいっぱい?……精液が………壁に?」

「…………ウン、そうソレ。ウソじゃナイ。ノアもハルトもセー液って言ってた。………セー液って白いしっこの事デショ?おれ覚えた……。……ニオイもしっこだった。凄くクサイ……床もドロドロ……」

「…………え、なにそれ怖い」

(覗きながら壁にぶっ掛けてたって事ですか?…………、私のナスオナニーを見ながらオナニーしてたんですか?………まあ元々オナニーする人だし………。おかしくは無いですけど。でも、ちょっと引きます……。血文字のほうがマシなんですけど……)

アノニマスから聞かされた想像よりも酷い壁の状態に思わず後退りするとノアと桜島が顔を顰めてこちらを見ていた。

「アノニマス………。言っちゃったの?琴音チャンに………。マジか………」

「……………っ……、仕方ないよ。彼女も知るべき事だし、……ボクがちゃんと話す………」

眉間に深く皺が寄ったノアが近付いて来た。桜島はハラハラとした様子だ。だがノアを止めたりはしないみたいだ。二人はアノニマスが精液の事を知っている事に特に疑問は無いようだ。アノニマスとの関係がバレなくて琴音はホッと胸を撫でおろした。

(流石に、それでバレたりはしませんか。…………はあ良かったです。……おっとノアさんが来ました。………平常心平常心)

「……………エヴァの事、信じたかったからボク、……一時的な物だと思いたかった。説得も出来ると思ってた。………でも、今のエヴァは本気でヤバイ。…………貴女に対して本気で何をするかわからない。………だから、さっきハルトとも話し合った。…………エヴァの時を魔法で止めようと思う。とりあえずは何時になるか分からないけど緑子達が帰ってくるまでは止めておこうと思ってるんだけど………、貴女はそれについてどう思う?」

(え………、時を止めるってアレですか?)

琴音が皆とセックスすると決意して挑んだ一番最初の周回の苦い思い出が蘇る。琴音もキレたノアに魔法で時を止められたのだ。

「ノアさん………、流石にそれはやり過ぎじゃない?それにさっきも言ってたけどさ、そんな事が本当に出来るの?エヴァ相手にさ」

桜島がおずおずと口を挟んだ。どうやら先程揉めていたのはその件のようだ。

(………エヴァさんの時を止める?そうなると桜島君達の護衛は無しになりますよね?それは勿体無いですね、折角桜島君と交流するチャンスなのに………)

正直壁に性液がいっぱいと言うのにはドン引きだが最悪エヴァに拉致されても無理矢理レイプされるだけなら、そこまで実害は無い。それよりも折角のチャンスを無駄にする方が嫌だ。アノニマスとセックスが出来そうな今、次回以降の為に桜島とも少しでも交流をして情報を手に入れておきたい。またこんな琴音に都合の良いバグが起こるとは限らないからだ。琴音がそう考えている間にもまた桜島とノアは揉めている。

「ハルトがエヴァを庇う気持ちはボクもわかる。ボクだって友達だ……。………でも、エヴァのした事は最低、これは友達だとかそう言うのは関係無い。………ねえ、貴女はどう思ってるの?部屋を………覗かれて………、着替えとか、……見られてたんだよ?」

ノアは嫌そうな顔で琴音に話を振って一度口を閉じた。琴音の返答を待っているのかじっとこちらを見ている。

(……………着替えだけで済めば良かったんですけどね……。ふふ…実はナスオナニーまで見られてるんですよ…ノアさん。…ふふ)

琴音は心の中で乾いた笑いを零した。それからふうと息を吐く。

「………、あ、あの、私も時を止めるのは………、その、少し可哀想かなって思います。覗かれたのは少し驚きましたけど。………時を止めるのは暫く様子を見てからでも良いのでは無いでしょうか?」

(…………やっぱりこのチャンスを逃すのは勿体無いですし。現状維持でお願いしたいですね)

琴音の返答にノアの眉間の皺は更に深まる。

「………貴女もきちんと隣の部屋の惨状を自分の目で見ておいた方がいいと思う。エヴァが何をしたのかちゃんと知っておく必要が有る。………見てないからそんな甘い事が言えるんだ。…………ちゃんと自分の置かれた状況を理解したほうが良い。…………じゃないと………………エヴァに無理矢理犯されるかもしれない、そうなってからじゃ遅いんだよ?心の傷は簡単には治らないんだから」

最後の言葉をノアは凄く小さな声で呟いた。

(ノアさん……?)



◇◇◇◇◇◇




「う………これは…………」

地獄のループで鍛えられた鋼メンタルの琴音はちょっとやそっとの事ではもう驚かないと思っていたが眼前の光景に普通に驚いた。壁に黄色い染みが沢山ベッタリとついている。覗く為に切り取られた穴。その少し下、穴を覗きながら背を丸めて立ったエヴァの丁度股間の辺りくらいの位置の壁は恐ろしいくらいにガビガビになって変色している。一体どれだけの量の精液を壁に掛けたら一ヶ月も経たない内にこんな風になるのか。

(っ…………、これって毎日毎日してたんですか?…………うわぁ………もしかして昨日も?………っ……)

壁から床にドロリと垂れた跡が有りそこから繋がる床部分に溜まる黄色いドロドロした物はまだ真新しい。量が多く下の方はまだ乾ききっていないのか誰かが動くと空気が動いてすえたような臭いがムワッと部屋を満たす。琴音は少しだけ気分が悪くなった。換気しようにも窓は開かない。

(隣でこんなになってたのにどうして気づかなかったのでしょうか?………強制力でしょうか?…………うぅ臭い……)

「………………エヴァが貴女に向けている感情や欲望がこれでわかったでしょ?……壁相手にこれだよ?ならエヴァの部屋に連れ込まれたらどうなるかわからない筈が無いよね?わからないなんてカマトトぶるなら分かるように説明してあげるけど?…………どうする?…………もしかして、これが何かもわからないとか言わないよね?」

精液を指差して言うノアの顔は真顔だ。

「……………ノアさん。う………、あんまり琴音チャンにそう言うの言わない方が良いんじゃないの?…………まだ琴音チャン16歳だし。…………それに男の俺らがそう言う性的な話をするのって……やばくね?……これも実際セクハラじゃん。琴音チャンごめんね………、俺は見ない方が良いと思ってたけど。ノアさんを止められなくて………本当ごめんね」

桜島はそう言ってから心配そうに琴音を見ている。

「い、いえ。……………私、ちゃんと理解しました。大丈夫です………。ありがとうございます、桜島君。」

(…………桜島君ってこう言うの苦手かと思ってましたけど意外と平気なんですか?先程から私に対しの気遣いが凄いですね。あれ?)

なんだか意外だ。てっきり性的な知識はあまり無くてピュアだから太陽みたいに真っ赤になってオロオロしたりするかと思っていたが桜島は琴音を気にしてくれている。エヴァのやらかしには引いていたがそれは誰でも引くと思う。それに引き換え本当に性的な知識の無いアノニマスはしゃがんでエヴァのガビガビになった精液を不思議そうに見ている。

「白いしっこ。………クサイ………おれのはクサくないのに………へー………エヴァのはクサイのか………うえっ……クサイ……ナンデココで出したんだろ?………トイレじゃナイのに………」

「…………………アノニマス、ちょっと黙っててくれる?」

ノアがアノニマスをギンっと睨んだ。

「……………コトネー。ノアが怖い………ナンデ?おれ、ナニカした?」

ぷるぷると震えてアノニマスは琴音の後ろに隠れた。なんだかカオスな状況である。

(…………想像の百倍くらいヤバイですねこれ。…………こんな事をしちゃうくらい私を好きなんですか?エヴァさん………)

エヴァが壁に出したモノを見て琴音は少しだけ可哀想になった。前回の和泉の事が頭を過る。

(………………私を好きだって言って先生泣いてました。………もし今回のエヴァさんも前回の和泉先生みたいに一目惚れバグで私を好きなら。気持ちに応えてあげたほうが良いんでしょうか?)

前回エヴァを裏切った罪悪感も少し有る。

(今のエヴァさんと前のエヴァさんは違うエヴァさんだってわかってますけど………、でも。)




◇◇◇◇◇◇





一同は一度琴音の部屋に戻った。

「これでわかったでしょ?…………エヴァの時を止めるのが最善。…………ボクの独断でそうしても良いけど。やっぱり全員の賛成があった方が良い、………後から揉めたくないしね。………これからも集団で生活して行く訳だから、独裁はしたく無いし。ちゃんと多数決を取りたい。………被害者の貴女の意見が一番必要。………どうするの?」

「……………俺は、まだやっぱり賛成出来ない。……確かにアレはめちゃくちゃヤバいけど、一回琴音チャンがエヴァにちゃんと断った方が良いんじゃない?覗いてたのバレてるって伝えてさ。だから無理って言うとかさー?…………時を止められるって言うならその後でも良くない?」

桜島はまだ反対のようだ。

「………………ハルト、君って馬鹿なの?もしそれでエヴァが逆上したら?……今ならスキをついて魔法で先制攻撃出来るけど、もしエヴァが本気でキレたらボクの魔法でも勝てるかわからない………。結界の維持だって有るんだ。………今、眠らせてるのだって大変なんだ。………時を止めるのも早くしないとエヴァにバレたら抵抗される。そうなったら最悪の事が起こるよ……。ボクはエヴァにそんな事させたく無い………」

ノアは琴音を見て辛そうな顔をした。だが琴音を見ているようでその瞳は何処か遠くを見ているような気がした。








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