色欲デモナージュ ~チートは危険ですのでおやめください。ハーレムが出来てしまいます~

一ノ瀬るちあ/ねこねこバレット

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15話 石清水えっち

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 淫紋。
 それは男のロマン。
 女を屈服させた証。

「私たちもさ、あいつらには長いこと苦しまされてるんだよね。【淫紋】はその過程で出来た、唯一の対抗策。使い方は簡単だ。対象の下腹部を撫でるだけ」
「は? そんだけ? 分かってないな」

 淫紋は徐々に成長していくのがいいんだろ。嫌がって、抗う女が、数量的な変化をまざまざと見せられて泣き叫ぶのがいいんだろ。こいつら何もわかってねぇ。

「まぁまぁ、最後まで聞きなよ。まず、【淫紋】の対象人数には制限がある。奏夜は今のところ一人までだね」
「スキルレベルの問題か」
「そう。そしてもう一つ。淫紋は成長する」
「なにっ!」

 なんだよ、分かってんじゃねえか。
 さすが悪魔だ。人の心理というのをよく心得ていらっしゃる。そうだよな、淫紋は成長してなんぼだよな。淫靡に成長していく過程が至高なんだよな。

「無邪気に喜んじゃってるけどさ、それだけ大変っていうことだよ?」
「大変……? はっ、笑わせるね」

 今までは、無才を嘆くだけだった。
 芽吹くかどうかも、そもそもタネがあるのか分からない鉢に水を与え続ける事と比べたら、きちんと筋道が示されているだけでめちゃくちゃ恵まれている。

「勝ち筋が分かってるなんてヌルゲー過ぎるぜ」


 昼休みが終わるギリギリで、俺は教室に戻った。
 抜けるときには席を移動していた生徒たちも、大半は自分の席に戻り、昼からの授業の準備をしている。いつもと違うのは、やはり教室の後方か。石戸晴香の周りには、人だかりができていた。逆に、列をなしてない俺たちはどちらかというとカーストの低いやつらだ。自分の価値を把握している俺たちは、むやみやたらに光に近づかないのだ。

 午後の授業も、石戸晴香は見に徹していた。アスモデウスを探しているのだろうか。ここにはいないから、その恐ろしい視線向けるのやめて欲しい。

 接触を図られたのは、放課後の事だった。
 生徒がまばらに帰る中、俺もその集団に紛れて帰宅しようとした時だった。石戸晴香に呼び止められた。

「新里くんだったわよね。もしよかったら職員室まで資料運ぶの手伝ってくれない?」

 この大胆な攻めは、俺がまだ彼女の正体に気付いていないと思っているからか? となると、下手に断ると、こちらが気付いているという情報アドバンテージを与えることになってしまうか。
 どうする。
 着いて行くべきか、ごまかして帰るべきか。
 どっちが正解だ。

「石戸先生、私が手伝います」

 俺が結論を出す前に、一人の女性が声明を出した。
 小野寺だ。内心ナイスと思いながら「じゃあそういうことで」と、俺が立ち去ろうとした時だった。

「ううん。【新里くんが手伝ってくれるらしいから、また今度ね】」
「……はい」

 思考に靄が掛かった。
 頭の中に石戸晴香を助けなければいけないという指示が反響する。小野寺もきっとそうなのだろう。俺が掛けた石戸晴香の行動を制限せよという催眠を無視したのが証拠だ。

「それじゃ新里くん、行こっか」
「あ、はい」

 やばいな。
 事象の改変なんて言われてもピンとこなかったが、要するに【催眠】の上位互換じゃねえか。くそっ、敵に回すとこうも厄介なのか。

 階段を使い、一階まで降りる。職員室が一階にあるからだ。だが、石戸晴香は職員室ではなく、その隣の部屋、つまり校長室に入ろうとしていた。

「あれ、石戸先生。そっちは校長室ですよ」
「あーはいはい。【これから私と新里くんは校長室で大事な話をする】【二人を除いて誰も校長室に立ち入らない】」

 石戸晴香が、また事象改変を行った。それも、二つ同時に。
 俺の催眠は一人につき一つまでだから、その点でも上を取られている。
 その代わり、どうやら俺が石戸晴香の手伝いをするという改変は解除されたらしい。教育実習に来ているという事実と合わせれば、彼女が一度に行使できる改変は三つまでだろうか。こうなると、貴重な一つを割いてくれたのは大きいかもしれない。

「さて、新里くん。入って。聞きたいことがあるの」
「はい」

 言いつつ、彼女が校長室の窓を開けた。
 隙間から、冬の香りを纏った秋風が吹き込んでくる。
 その風は、石戸晴香と俺を撫でては帰ってを繰り返している。

「単刀直入に聞くわ。あなたの背後にいる悪魔は誰?」
「……いや、宗教とか結構です」

 どこまで世界改変に抗えるのか試してみると、意外といけた。当然か、今の事象は大事な話をするだけだから、シリアスな雰囲気を醸しておけば通用するのだろう。
 石戸晴香は頭を掻いて、改変内容を修正する。

「【新里奏夜は石戸晴香の質問に正直に答える】もう一度聞くわ。新里くん、あなたの背後にいる悪魔は誰?」
「アス……がぁっ!?」

 あいつの名前を出そうとすると、頭が痛くなった。
 二歩三歩とよろめいて、尻もちをついた。それから、スマホを取り出し通話ボタンを押す。

「っ! 新里! 【スマホの電源を切って仕舞いなさい】!」
「……はい」

 頭に靄が掛かった。
 スマホをしまわなければいけない気がして、言われた通りポケットにしまう。通話が試みられていたのはおおよそワンコール分だけだった。

「はぁ、条件付きの暗示とかその辺かしら。厄介な能力ね。発動条件は、悪魔の名前を呼ぼうとすることかしら」

 石戸晴香の予想は正しい。
 俺はここに来る前に、アスモデウスに・・・・・・・催眠をかけてもらってきた。内容は【アスモデウスの名前を口に出そうとすると通話ボタンを押す】だ。スマホの電源を切られて連絡は取れなかったが。
 だが、彼女の質問に答えずに済んでいるということは【正直に答える】という改変が解除されたということだろう。こうなれば、いくらでも誤魔化せばいい。

「……【新里奏夜は石戸晴香からの質問に正直に答える】新里、私の予想はあってるかしら?」
「合ってますよ」
「そう、あなたの背後にいる悪魔の名前は?」
「……」

 これは予想外なことに、何も起きなった。
 おそらく、アスモデウスによる高位の催眠と石戸の能力が打ち消し合っているんだと思う。時間だけが過ぎていく。

 果たしてそうだろうか。

 振り返ってみよう。

 石戸晴香の能力は、三つまで事象を改変できること。
 一つ、【石戸晴香は教育実習生である】
 二つ、【新里奏夜はスマホの電源を切って仕舞う】
 三つ、【新里奏夜は質問に正直に答える】

 おわかりいただけただろうか。
 石戸晴香はこの状況を作り出すために、【二人を除いて誰も立ち入れない】という改変を解除したのだ。そして俺がこの学園で使える手駒は、小野寺の他にもう一人いる。

「せいっ!」
「あぎっぃ!? あがっ!」

 校長室の窓から、一人の少女が忍び込んだ。
 その少女は手にスタンガンを持っていて、あっという間に石戸晴香の首筋に差した。
 ポニーテールが特徴的な、テニスウェアを着たその少女は。

「よくやった、清水」
「えへへぇ、ほめられましたぁ」

 俺が日曜日に堕とした、ソフトテニス部の清水だ。
 彼女に、昼休みの間に連絡を入れておいたのだ。
 『俺から通話があったら俺と話している女性にスタンガンをあてろ』と。前回の調教で俺の言うことを何でも聞くマゾになった清水は、こんな無茶ぶりも見事に敢行してくれたというわけだ。

「あぎっ、ひ、卑怯な」
「卑怯? ははっ、違うね。卑怯っていうのは悪者に使う言葉なのさ。そして悪者とは、いつの世も敗者を指す。ことこの状況、勝者は俺。卑怯ではなく知略だ」
「ぐっ、この!」

 石戸晴香が清水の方に手を翳すと、不思議な光が放たれた。

「ふっ、これで能力を打ち消したわ! 清水さんでいいのかしら? あなた、そいつに操られてたのよ! いい? そいつは悪いやつなの」

 石戸晴香が、清水に呼び掛ける。
 おおかた清水を味方に引き込んで、形成の立て直しを企てているんだろう。無駄だっていうのにな。

「えへぇ、知ってますよぉ? だって、私をこんな悪い子にした人ですから」
「なっ、なんで?」
「なんでって、そりゃ。コイツが純粋に俺に惚れてるからだろ。な? 清水?」
「ふみゃぁ。あぁっ♥はひぃぃっ♥しゅきれしゅぅ♥」

 俺は催眠をこいつに使ったが、散々壊した後に解除済みだ。つまり、ここに来たのも、彼女の根の部分だということ。催眠による表層的な改変ではなく、根本的に作り替えられているのだ。
 催眠を解除したって、今更すぎる。

「さて、めんどくさいことになる前に仕込みを済ませてしまおう。清水、こいつの手足おさえといて」
「わっかりましたぁ♥」
「や、やめっ……」

 彼女の衣装をかき分けて腹部を晒す。
 腹直筋に沿って陰部まで、丁寧におさわりする。
 すると、彼女の腹部が怪しく光る。

「ひゃっ! や、やめて!」

 そのままばっと服を捲ってみれば、ちょうど子宮のあるあたりに、小さなハートが浮き上がっていた。【淫紋】が上手く発動した証だ。
 淫紋は、段階によってできることが変わり、今の段階で出来る事は少ない。少ないが、十分だ。

「さて、石戸せんせっ? 叛逆の時間だ。【淫紋が完成するまで能力の行使を禁止する】」
「なっ!?」

 淫紋の初期段階で出来る事、それは能力の効果アップだ。
 本来であれば、悪魔は天使に相性不利であり、能力を行使してもレジストされる。元々使っていた能力も、天使によって上書きされうる。それに対応するために悪魔が生み出したのが、この【淫紋】だ。
 この状態であれば優劣関係は逆転する。悪魔の能力を、淫紋を付けられた奴は無効化できない。

 そして【淫紋】が定着、つまり最終段階まで行くと、そいつは身も心も俺に捧げることになる。その段階まで石戸晴香はただの女になり下がったわけだ。

「清水、石戸先生を楽しませてやれ。先生をイかせた回数に応じてお前を可愛がってやるよ」
「はぁぁんっ♥はいっはいっ♥頑張りますぅ♥」

 その間に俺は【結界】を発動させた。並行世界に移動することで校長と出くわすリスクもなくせるというわけだ。

「あっ、やめ、やめてっ! 清水さん! 正気に戻って!」
「うーん、そうですねぇ。先生がいっぱいイってくれたら考えてあげますよ?」
「だ、だめっ、だめよっそんなの!」
「わがままですねぇ。ワルい子にはおしおきですっ! えいっ、えいっ!」
「んあぁぁぁぁっ!!」

 思いのほか、清水は楽しそうに石戸をいじめている。マゾっ気が強いと思ったが、女性相手にはサドなのかもしれない。一方で石戸晴香は苦しそうだ。イった場合のペナルティは説明してない筈だが、本能的に理解しているのか、はたまたただの倫理観からか。

「あっ♥だめだめだめーっ!」
「あはぁ♥ここですか! ここがいいんですか!!」
「やぁっ♥だめ、やめてっ! お願い清水さんやめてー!」
「あはは、とりあえず一回イきましょう! 話はそれからです」
「あっ♥あっ♥だめ♥だめ♥だめぇぇっ♥♥イックゥ――っ!!」

 ぷしゃ、ぷしゃっと。
 石戸晴香の股間から淫猥な液体が吹きこぼれる。
 淫紋がじゅっと熱を放ち、その形を少し進化させた。

「あはぁ! 先輩! イかせられましたよ! これどれくらいの価値有りますか!?」
「一突きくらいだな」
「ひと月!?」
「一突きだ、ばか」

 清水は俺の事を先輩と呼んだが俺の学年は知らないはず。俺も清水の学年知らないし。多分ノリだろう。気にしないでおこう。
 彼女、あほの子は、一度イかせるたびに一突きしてもらえることを学んだ。そして彼女は、その一突きの快感を覚えてしまっている。体に、魂に刻み込まれてしまっている。是が非でも、石戸晴香をイかせ続ける。

「頑張りましょうね! 石戸先生っ! ほら、もういっちょ!」
「あ、待って! いま、今イったばかりだからぁ! おねがいぃ、少し休ませてぇっ!!」
「休んでる暇なんてありませんよ! ほら、私のために連続でイってください」
「んああぁぁぁっ! イク、またイっちゃうぅぅぅっ♥♥」

 そうして、また少し彼女の淫紋が様相を変えた。
 清水は休憩を許さず攻め続ける。
 石戸が行くたびに淫紋は形を悍ましく変化させていったが、何度かイったあたりからほとんど変わらなくなってきた。手淫だけで成長する量には限度があるらしい。
 成長条件ってどんな感じだろうと思っていると、扉が少し開き、ちょいちょいと手招きするあいつが見えた。もう一度部屋を後にする。

「へい、奏夜! なにこっちの世界に連れてきちゃってるのさ」
「お、アスモ……先に催眠を解いてくれる?」
「にゃぁー、しょうがないなぁ、ほれ」
「サンキュ、問題ないさ。あいつには淫紋が定着するまで能力を使えない催眠をかけた」
「うえぇ、悪魔」

 アスモデウスが、若干引いた。
 誰が悪魔だ。悪魔はお前だ、お前。善良な市民を捕まえてなんてこと言いやがる。ただ堕ちるまで能力を封印して、堕ちてからは俺の為に活用させるだけじゃないか。どこが悪魔なんだ。

「まぁ、そういうことならむしろ表の世界の方が安全なのかな」
「ん? なんでだ?」
「そりゃ、こっちの世界だと君が連れて来た女の子にも見つかっちゃうからさ。君が天使の代行者しか連れてこないなら別だけどね」
「あー、今回だと清水に見られるわけにはいかないってことか」

 そういうことと言うアスモデウス。
 校長室からは石戸の艶めかしい嬌声が響いてくる。

「アスモデウス、淫紋の育て方聞いてなかった」
「分かってるだろ? 心から屈服させる、それだけさ」
「ふむ」

 心から、ねぇ。
 つまり、逆らう気が起きないレベルまで堕とす必要があるということか。めんどくさ……いや、今までも結局そのレベルまで堕としてきたか。

「なるほどね、大体わかった」
「ふふっ、期待しているよ」

 俺たちは互いに笑みを浮かべた。
 信頼のアイコンタクト。
 任せろ相棒。
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