保護猫チャチャの冒険

保護猫チャチャの冒険(16)

病室の建物に、面した、真正面の街灯の下に、幾つかの、長いベンチが、有りました。それぞれが、自分の背中に括り付けてあった、楽器を降ろして、1段高い台から、みんなを見ている、チャチャの方を、注目しました。そして、グレイシィのおもちゃのピアノが、出すポーンという音に、それぞれが最初の音を合わせました。タララタララタララタタ、タララタララタララタタ、タラリラララ、タラリラータラララララ、タラリラー、グレイシィのおもちゃのピアノに、マックスとマゼの木琴、チワワとダックスの木琴、レオンの縦笛、ハリネズミの親子のカスタネットと鈴、トライアングルと、音が、繋がって行きます。その音を、聞いた病院の病室に、いる入院患者は、部屋の窓を開けて、音のする方を、キョロキョロと、探しはじめました。そして、動物達が、演奏の主だと分かると、みんな、信じられないと、言うように、呆気に取られて、お口アングリで見ている者、中に入って、窓際に、他の人を連れて来る者、カメラや動画で映像を録画しようとする者。とにかく病院が、一瞬にして、蜂の巣を、つついた様な、大騒ぎになりました。広井町立病院の周りの道路まで、その様子を見る車やバイク、タクシーや、路線バス、トラックやスクールバスなどなどで、あっという間に、渋滞を作り、近くの交番の警察官が、「止まらないで、前を見て運転して下さい。よそ見しないで、前に進んで下さい。」と、交通整理に、出る始末になりました。そのうち、地元の広井町ケーブルテレビと、HFT(広井町フューチャーテレビ)の中継車が、やって来て。アナウンサーの実況の声が、聞こえた頃、今度は、全国ネットの夕陽テレビが、ヘリコプターを、飛ばし、様子を、中継し始めました。猫達は、そんな事にも、動じず演奏を続けます。クリスマスソングになった時、見ていた周りの聴衆が、猫達の演奏に、合わせて、歌います。「あわてんぼうの、サンタクロース、クリスマス前に、やって来た、急いで」まで、歌ったとき、ハリネズミ親子が、鈴をリンリンリン、「急いで」リンリンリン「鳴らしておくれよ、鐘を」リンリンリンリンリンリンリンリン。聴衆の歌と、猫さん達の楽器の、見事な、コラボです。その次は、猫達の演奏による、「聖しこの夜」が、澄んだ夜空に、響き渡リ、聴衆の拍手が、鳴り止みませんでした。その時、病院の正面玄関から、看護師さんに、押された、車椅子に、乗って、かおるさんが、まっすぐ、猫さん達の近くに、やって来ました。