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「すみません、遅くなりました!」
「はいよーって、あれ? 斉藤?」
毎朝の定例のリモート会議。俺の名前が表示されているフレームに斉藤の顔の半分映って、皆驚いた。当たり前だ。
「斉藤のPCのWiFi接続がうまくいかないとかで……」
「思いつきで今日出社してみたんですが、ちゃんと準備してないとダメですね」
「あー、斉藤も今日の出社にして……それでふたりとも遅れたのか。なるほど」
チームリーダーの韮沢さんが、合点が言ったように頷いた。おそらくは、斉藤のパソコンの設定が定例会に間に合わず、たまたま今日出社だった俺に相談した結果、斉藤も俺のパソコンで定例会に顔を出すことにした、という状況を想像したのだろう。その想像は概ね合っているが、いくつか事実とは異なる点がある。ひとつは、斉藤と俺の出社日が重なったのは偶然ではなく斉藤の作為によるものだということ。もうひとつは、斉藤が隣のデスクの椅子を移動し俺の隣に座っているのは、相談もなにも、そうしますね、と斉藤がはじめから決定事項のように俺に言ってきたということだ。
なお最後のひとつはログインが遅れた理由だが、これについてはだいたいお察しの通りで、あまり語りたくない。
とはいえその後の定例会は平穏に進んだ。斉藤が、自分の足を俺の足をひっかけて俺の両足を常に九十度以上に開かせていたり。画面にうつるために身を乗り出す際に、いつも俺の腿に手を置いたり。画面に映っていないときは、俺の尻に刺さっているアナルプラグのリモコンを両手でいじくりまわしたりなどはしていたが、少なくともそのスイッチをオンに入れることはなかった。
「――ってことで、出社組は私物の片付けが終わったら帰宅。帰宅も勤務時間に入れていいから」
「わかりました」
「あ、韮沢さん。急ですが僕、本日は午後休でお願いします」
「お? まあ、かまわんけど」
「あと、先輩も今日急用が入ったって言ってませんでした?」
斉藤がそう俺に話を振りながら、手をおいている太ももに、ぎゅう、っと力を込めた。
「ぁ……あ、はい、そうです、すみません。でも、急にふたりも休むと他の人に負担がいっちゃいますし、無理にとは……」
「いや俺とか今日暇だから別にいいよ。フォローしとく。りょーかい、二人とも午後休な」
「ありがとうございます」
「ありがとう……ございます」
「あと、斉藤はできればWiFiの設定しとけよ。もしかしたら今後急な出社が必要になる場合もあるからな」
「はい。僕だけではわからない場合は、先輩に見ていただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「ありがとうございます。先輩、よろしくお願いします」
俺は無言で頷く。斉藤の言い方に、なにか含みを感じた。
「それじゃあ今日の定例会はこれまで! 本日もがんばりましょー!」
チームリーダーの韮沢さんの挨拶に皆それぞれに挨拶を返しながら、リモート会議から皆ログアウトしていく。俺がなんとなくログアウトをためらっていたら、横から伸びてきた斉藤の手が勝手にキーボードを操作して、リモート会議をウィンドウごと落とした。
「じゃあ先輩、僕のパソコン設定、一緒に見てもらっていいですか?」
「あ、ああ……」
「はいよーって、あれ? 斉藤?」
毎朝の定例のリモート会議。俺の名前が表示されているフレームに斉藤の顔の半分映って、皆驚いた。当たり前だ。
「斉藤のPCのWiFi接続がうまくいかないとかで……」
「思いつきで今日出社してみたんですが、ちゃんと準備してないとダメですね」
「あー、斉藤も今日の出社にして……それでふたりとも遅れたのか。なるほど」
チームリーダーの韮沢さんが、合点が言ったように頷いた。おそらくは、斉藤のパソコンの設定が定例会に間に合わず、たまたま今日出社だった俺に相談した結果、斉藤も俺のパソコンで定例会に顔を出すことにした、という状況を想像したのだろう。その想像は概ね合っているが、いくつか事実とは異なる点がある。ひとつは、斉藤と俺の出社日が重なったのは偶然ではなく斉藤の作為によるものだということ。もうひとつは、斉藤が隣のデスクの椅子を移動し俺の隣に座っているのは、相談もなにも、そうしますね、と斉藤がはじめから決定事項のように俺に言ってきたということだ。
なお最後のひとつはログインが遅れた理由だが、これについてはだいたいお察しの通りで、あまり語りたくない。
とはいえその後の定例会は平穏に進んだ。斉藤が、自分の足を俺の足をひっかけて俺の両足を常に九十度以上に開かせていたり。画面にうつるために身を乗り出す際に、いつも俺の腿に手を置いたり。画面に映っていないときは、俺の尻に刺さっているアナルプラグのリモコンを両手でいじくりまわしたりなどはしていたが、少なくともそのスイッチをオンに入れることはなかった。
「――ってことで、出社組は私物の片付けが終わったら帰宅。帰宅も勤務時間に入れていいから」
「わかりました」
「あ、韮沢さん。急ですが僕、本日は午後休でお願いします」
「お? まあ、かまわんけど」
「あと、先輩も今日急用が入ったって言ってませんでした?」
斉藤がそう俺に話を振りながら、手をおいている太ももに、ぎゅう、っと力を込めた。
「ぁ……あ、はい、そうです、すみません。でも、急にふたりも休むと他の人に負担がいっちゃいますし、無理にとは……」
「いや俺とか今日暇だから別にいいよ。フォローしとく。りょーかい、二人とも午後休な」
「ありがとうございます」
「ありがとう……ございます」
「あと、斉藤はできればWiFiの設定しとけよ。もしかしたら今後急な出社が必要になる場合もあるからな」
「はい。僕だけではわからない場合は、先輩に見ていただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「ありがとうございます。先輩、よろしくお願いします」
俺は無言で頷く。斉藤の言い方に、なにか含みを感じた。
「それじゃあ今日の定例会はこれまで! 本日もがんばりましょー!」
チームリーダーの韮沢さんの挨拶に皆それぞれに挨拶を返しながら、リモート会議から皆ログアウトしていく。俺がなんとなくログアウトをためらっていたら、横から伸びてきた斉藤の手が勝手にキーボードを操作して、リモート会議をウィンドウごと落とした。
「じゃあ先輩、僕のパソコン設定、一緒に見てもらっていいですか?」
「あ、ああ……」
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