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遭遇
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俺たち以外は誰もいないエレベーターフロアで階数表示が変わっていくのを見ていたら、斉藤がキスしてきた。エレベーターは当然無人だと思っていたが、ドアが開くと、そこに、我が社のエーデルワイスこと、俺がかつて片思いしていた白川えりながいた。
テントを張っている股間を隠すために両手でカバンを抱えるように持ち、斉藤にもたれかかるようにして立っていた俺は、白川の顔を見て急に姿勢を正した。
一瞬の間に、驚きと、困惑と、歓喜の感情が激しく入れ替わる表情を見せた白川は、すぐにその複雑な表情をいつもの営業スマイルで奥へと押しやった。
「お疲れ様でーす!」
「お、お疲れ」
「お疲れ様です」
「斉藤さん、今日出社だったんですね。もう帰られるんですか?」
「はい」
白川を押しのけるように、斉藤は俺を先にエレベータの箱へ押し込み、自分も半分ほど足をかけた。
「私、いま来たところなんですけど」
白川は、片足の半分ほどをエレベータの中に入れ、片手に持っていた駅前の有名なベーカリーの袋を斉藤に見せた。
「お昼買いすぎちゃって。よかったら一緒に食べてくれませんか?」
「僕らはもう帰るところなので」
しかし斉藤の返事はそっけない。もっと誰にでも愛想がいいやつだと思っていたんだが。
「お疲れ様でした」
斉藤にそう言われて、白川は一歩後ろに下がる。斉藤が”閉”ボタンを押しドアが閉まり切る直前まで、白川はこちらに向かって変わらぬ笑顔で手を振っていた。
恋の熱病から醒めてみると、あざといな、と思う。いっぽうで、やはり可愛いな、という気持ちもある。斉藤は地下階のボタンを押す。エレベータが動き始めると、斉藤は背中越しに俺がそこにいることを確認した。
このオフィスビルの地下が駐車場であることは知っていたが、来るのは初めてだった。思っていたより広いが、車の数は少ない。今はそもそも出社する人が少ないのだろう。斉藤に促されてエレベータから降り道なりに直進していたら、すぐ後ろを歩いていた斉藤が俺の肩を軽く抱き寄せるようにしながら、右に曲がるよう指示して来た。斉藤が自分のカバンから取り出した車の鍵らしきもののボタンを押すと、少し先に駐車していた乗用車のヘッドライトが点灯する。どうやらあれが斉藤の車のようだ。
このまま――このまま乗って、いいのか。いいのか? あと少しで斉藤の車、というところで、俺の足は地面に貼り付いたように動かなくなった。
「先輩?」
「斉藤……ごめん、やっぱり俺……」
次の瞬間、尻の中のものが爆音を立てて振動しはじめた。
「あ? ああ、あ、あっ! あ、あ、あ、あああっ」
俺は立っていられず、コンクリートの床にへたりこんだ。斉藤がポケットに突っ込んでいた手を取り出すと、そこにはアナルプラグのリモコンが握られていた。
「言うと思ってました。でも、もう、許しませんよ」
「うぅ、ううううう、う、あ、あ、あっ、ああ、ああ」
「先輩がその気になるのを、僕は十分待ちましたよ。そう思いませんか?」
斉藤は俺の脇に手を差し入れ、後ろから抱きかかえるようにして俺を強引に立ち上がらせると、そのまま引きずるようにしながら歩き出した。斉藤の車のドアのランプが反応し、カチッ、と、ロックが外れる音がする。斉藤はドアを開くと、俺の抵抗を物ともせず、俺を後部座席に押し込んだ。
まだ車の外にはみ出ている足を持ち上げ、それを肩に抱えるようにしながら、斉藤も後部座席に乗り込んで来る。背後でドアが閉まり、再びロックがかかる音がした。
テントを張っている股間を隠すために両手でカバンを抱えるように持ち、斉藤にもたれかかるようにして立っていた俺は、白川の顔を見て急に姿勢を正した。
一瞬の間に、驚きと、困惑と、歓喜の感情が激しく入れ替わる表情を見せた白川は、すぐにその複雑な表情をいつもの営業スマイルで奥へと押しやった。
「お疲れ様でーす!」
「お、お疲れ」
「お疲れ様です」
「斉藤さん、今日出社だったんですね。もう帰られるんですか?」
「はい」
白川を押しのけるように、斉藤は俺を先にエレベータの箱へ押し込み、自分も半分ほど足をかけた。
「私、いま来たところなんですけど」
白川は、片足の半分ほどをエレベータの中に入れ、片手に持っていた駅前の有名なベーカリーの袋を斉藤に見せた。
「お昼買いすぎちゃって。よかったら一緒に食べてくれませんか?」
「僕らはもう帰るところなので」
しかし斉藤の返事はそっけない。もっと誰にでも愛想がいいやつだと思っていたんだが。
「お疲れ様でした」
斉藤にそう言われて、白川は一歩後ろに下がる。斉藤が”閉”ボタンを押しドアが閉まり切る直前まで、白川はこちらに向かって変わらぬ笑顔で手を振っていた。
恋の熱病から醒めてみると、あざといな、と思う。いっぽうで、やはり可愛いな、という気持ちもある。斉藤は地下階のボタンを押す。エレベータが動き始めると、斉藤は背中越しに俺がそこにいることを確認した。
このオフィスビルの地下が駐車場であることは知っていたが、来るのは初めてだった。思っていたより広いが、車の数は少ない。今はそもそも出社する人が少ないのだろう。斉藤に促されてエレベータから降り道なりに直進していたら、すぐ後ろを歩いていた斉藤が俺の肩を軽く抱き寄せるようにしながら、右に曲がるよう指示して来た。斉藤が自分のカバンから取り出した車の鍵らしきもののボタンを押すと、少し先に駐車していた乗用車のヘッドライトが点灯する。どうやらあれが斉藤の車のようだ。
このまま――このまま乗って、いいのか。いいのか? あと少しで斉藤の車、というところで、俺の足は地面に貼り付いたように動かなくなった。
「先輩?」
「斉藤……ごめん、やっぱり俺……」
次の瞬間、尻の中のものが爆音を立てて振動しはじめた。
「あ? ああ、あ、あっ! あ、あ、あ、あああっ」
俺は立っていられず、コンクリートの床にへたりこんだ。斉藤がポケットに突っ込んでいた手を取り出すと、そこにはアナルプラグのリモコンが握られていた。
「言うと思ってました。でも、もう、許しませんよ」
「うぅ、ううううう、う、あ、あ、あっ、ああ、ああ」
「先輩がその気になるのを、僕は十分待ちましたよ。そう思いませんか?」
斉藤は俺の脇に手を差し入れ、後ろから抱きかかえるようにして俺を強引に立ち上がらせると、そのまま引きずるようにしながら歩き出した。斉藤の車のドアのランプが反応し、カチッ、と、ロックが外れる音がする。斉藤はドアを開くと、俺の抵抗を物ともせず、俺を後部座席に押し込んだ。
まだ車の外にはみ出ている足を持ち上げ、それを肩に抱えるようにしながら、斉藤も後部座席に乗り込んで来る。背後でドアが閉まり、再びロックがかかる音がした。
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