地味でさえない会社の先輩にうっかりはまってしまった話

狩野

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どちらでもいい

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 翌朝、先輩よりも先に目覚めた僕は、自分の腕のなかで眠る先輩を見下ろしているうちに、少しいたずら心を出した。

 僕のパジャマは先輩には少し大きい。それに、下着の替えを忘れたのか、パジャマの下には何も着ていない。裾から手を入れて、先輩の体のあちこちを撫でさすっているうち、明らかに先輩の呼吸が乱れはじめた。

 目は覚めましたか、と尋ねたが返事がない。けれど、敏感なところをつまむと明らかに反応している。

 寝たふりを続けるつもりなら、こちらにも考えがある。僕は眠ったふりをしている先輩のパジャマを半分脱がせ、潤滑剤を塗った指でアナルをほぐし始めた。

 中で前立腺のあたりに触れると先輩の体がびくりと震え、硬度を増したペニスが前後に揺れる。僕は先輩を横から後ろ抱きにしてペニスに優しく触れながら、前立腺への刺激を繰り返した。斉藤、斉藤と、先輩が僕を呼ぶが、僕は、おや寝言かな、と意地悪を言ってさらに愛撫を続ける。その頃には僕のペニスもすでに痛いほど立ち上がっていた。自分のペニスの先端を先輩のアナルにあてがいながら、勝手にイけないように根元を抑えた先輩のペニスを片手で激しくしごいてやると、先輩は全身海老反りになって、イかせて、イかせてぇ、と薄眼を開き僕に訴えてきた。

 入れてというまではお預けをするつもりだったのだが、僕ももう限界だった。横抱きにしたまま先輩の足を抱えると、コンドームをつけたペニスをゆっくり挿入する。亀頭がすっぽり収まった瞬間、先輩は小さく痙攣しペニスの先から白濁の液をこぼした。

 もしかしてもうイったんですか、と尋ねると、違う、と答えるが、先輩のなかにさらにペニスを埋めて行くと、先端からピュッ、ピュッ、と、白濁の液体が少しずつ発射される。壊れた水道管みたいだ。僕が先輩にそう言うと、先輩は、いやだ、怖い、と騒ぎ始めたので、僕は先輩を後ろから抱きしめ、そのまま腰を前後にスライドさせた。先輩はしばらくの間なにか困難に耐えるような表情をしていたが、すぐに口は半開きになり、だらしない喘ぎ声を際限なく漏らし始める。ああ、かわいい。昨晩の光景が目に焼き付いていて、僕は下が繋がったままの状態で体を起こすと、先輩の腕を後ろ手に抑えて膝をつかせ、さらに激しく突き始めた。先輩が、もういく、いくと言って達するのとほぼ同時に、僕も達した。

 中に入れたまま再び動かしはじめ、その後一度抜いて正面を向かせしばらく抱き合いながらゆるく動かしていると、先輩がまたイった。かわいい。楽しい。僕が仰向けに寝転んで先輩を体の上に乗せ自分で動くように言うと先輩はそれなり頑張っていたが、あまり上手くはなかったので、下からガン突きする。全身をびくんびくんさせながら僕の上に倒れこんできたが、射精はしていないようだった。空イキしたのかも。再び僕が上になり、正常位で突いてあげると、先輩はシーツやら僕の背中やらに爪を立てながら、もう無理、休ませて、と何度も懇願するので、いったん僕が射精するまでは付き合わせ、そこで休憩にした。が、裸のまま横になっている先輩をみているとムラムラしてきてしまい、ものの10分も立たないうちに再開させてもらった。

 まだ無理と言いながらも僕の愛撫にいちいち反応する先輩が面白くて、その日はほとんどベッドの上で過ごした。翌日のそんな感じに過ぎていき、さらに翌日はもう月曜日になってしまう。平日となれば仕事があるが、当分は仕事も僕の家からやりましょう、と、背面座位で焦らしながら先輩に提案すると、あっさり同意が得られた。先輩が突然僕の家にいることについて、会社に対する説明などどうとでもなるし、なんなら本当のことを言ってしまったほうが面倒がないかもしれない。会社ではもう先輩以外に手を出すつもりはないので女子社員たちが近づいてこないほうが助かるし、宣言してしまえば先輩に対しても近づかなくなるだろう。なによりこういうことを公表されて恥ずかしがる先輩の顔が見られるかと思うとゾクゾクする。

 当初はビジネスホテルでしばらく過ごす予定だったので、先輩の家から仕事用のパソコンも持ち出して来てある。しかしアダプタやマウスなどいくつかの周辺機器を忘れてきたとのことで、僕が先輩の家に取りに行くことになった。先輩はやりすぎて腰が抜けてしまったらしい。本当にかわいい。

 他にもいくつかの着替えや冷蔵庫に残したままの食材の持ち出しなどを言いつかり、小一時間ほどして両手に紙袋をぶらさげた僕が帰宅すると、ベッドにいるはずの先輩の姿がなかった。

「先輩……?」

 トイレを見に行ったがいない。風呂場にも。キッチンにも。リビングにも。使っていない物置部屋にも。

 探しても探してもいない。家の中、カーテンをめくり、ベッドシーツをはがし、しまいにソファをひっくり返して探したが、どこにもいなかった。

 先輩が家からいなくなったという事実を受け止めるにつれ、僕は足元からじわじわと冷たいものが這い上がってくるのを感じた。

 油断した。

 やっぱり、首輪をつけてつないでおけばよかった。ベッドの上から身動きできないように完全に拘束しておけばよかった。この家から出たら殺すとでも脅しておけばよかった。よかったのに。僕ときたら、油断してそれを怠った。だから先輩はいなくなった。

 ああ、失敗したんだ僕は。管理に失敗して。また失くしてしまった。

 なにかが聞こえると思ったら、自分の泣き声だった。荒れ果てた部屋に、悲嘆にくれる僕の声だけが響く。


 ――それからしばらくして、ガチャリ、と玄関のドアが開く音がした。


 顔を上げる。コンビニ袋をぶら下げた先輩が、部屋の惨状に目を丸くしていた。

「……え、斉藤、お前なんで泣いて……ていうか部屋! なにがあった? 強盗でも来たのか?」

 僕が答えないでいると先輩は困ったように首をかしげ、清涼飲料水をいくつか買って来たけどどれか飲むか、と尋ねてきた。

 僕は衝動的に先輩に抱きついた。

「お、おい、なんだよ急に。ご主人さまに会えて喜ぶワンコかよw」

 先輩が軽くよろめきながらそうからかってく。

 僕が犬だって?

 先輩のほうじゃなく?

 おかしいな。

 僕が先輩をしつけていたつもりだったのに、実はしつけられていたのは僕のほうだったのか?

 そんなバカな。


 けれど先輩が頭を優しく撫でてキスしてくれたのがとても幸せだったので。まあ、もう、どちらでもいいかな、と、僕は思った。
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