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誘惑
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――――つまりは、僕は先輩の好みということではなかったのだろう
――――性感が高まっている間は多少の好み違いも許容できたが、冷静になるといやになったってことなんだろう
まったくもって不愉快なことだが、そう結論づけざるをえなかった。
先輩がゲイだった場合は僕が好みのタイプに入っている、ということをこれまで全く疑わなかったのだが、あそこまであからさまに逃げたということはつまりはそういうことだったのだろう。
なあんだ。
あまり振られた経験がない僕は、少しショックを受けていた。振られたといってもホテルに行く前に逃げられただけだが。誘われて逃げたことはあっても逃げられたのははじめてだ。
それに、その晩のことについて、先輩からなにかフォローや口止め、あるいはそれらしい言い訳やらなにやらがあるかと思ったが、何も言ってこない。なるほど。あんなに乱れていたくせに、あれはなかったことにしたいわけか。僕に求めているのは職場の後輩、という立場だけということなんですね。あんなに、あんなに感じて乱れていたくせに。
そのことで自信をなくしたというわけではないが、その頃から僕はあまり男にも手を出さないようになった。あの晩逃した先輩の体が目の前にちらついて、しかもその当人ときたら目の前を相変わらず無防備に僕の前をふらふら歩いているのである。
しかし、拒否された以上は手を出すわけにもいかない。
生殺しだった。
時勢からリモートワークが推進され、先輩と直接会うことがほとんどなくなったら少しは落ち着くかと思ったが、人と会うことが少ない分、あの晩の先輩のことをますます思い出す機会が多くなった。属性が多少守備範囲から外れていても、楽しませる自信はあるのに。あの晩、首輪とリードつけて、逃げられないようにして、無理やりにでもやっておけばよかった、と何度も後悔した。先輩に首輪をつけホテルまで散歩させる夢まで見たのだから重症だ。
ある時、その先輩と、リモート越しとはいえ久しぶりにふたりきりで話せる機会が来た。
そのことに僕は少しドキドキしていたのだが、先輩ときたらそういう日に限って寝坊している。
しかも、わざわざカメラの前で着替えをはじめた。
堂々と見せられる胸のライン、お腹のライン、それに乳首。あの晩の感触を思い出す。ただの不注意なのか、そう見せかけて誘っているのか。着替える必要もないのにわざわざ裸を見せているのは、僕へのサインなのか、ただの無防備なのか。探り合うような会話のなかで、先輩がふとなんとも艶かしい表情になった。
やっぱり、誘ってる。
僕がわざとらしくいやらしいことを言うと、先輩の顔はバターみたいにみるみる蕩けていった。仕事の時間中にやばい、と思ったが、もう僕も止まらなかった。性器を見せて、と言うと、先輩は一度拒否するふりをしながら結局応じて来た。僕は念のため、リモート会議の入室設定を許可制にする。案の定、ほどなく家庭の事情で欠席と言っていた韮沢さんがやってきて、僕らの不謹慎なプレイは間一髪表沙汰にならずに済んだ。言ったのは僕だが、応じる先輩も無防備すぎる。さらに、その後も先輩の顔はとろけっぱなしだ。韮沢さんが慌てていたので気づかなかったのが幸いだが、こんな顔を外でしていたら、犯してくれ、と言っているようなものだろう。
なんて危なっかしい。
僕がしつけてあげなきゃ。
その考えが自然と脳裏に浮かび、僕はただの射精よりも遥かに強い快楽が全身を突き上げるのを感じた。
――――性感が高まっている間は多少の好み違いも許容できたが、冷静になるといやになったってことなんだろう
まったくもって不愉快なことだが、そう結論づけざるをえなかった。
先輩がゲイだった場合は僕が好みのタイプに入っている、ということをこれまで全く疑わなかったのだが、あそこまであからさまに逃げたということはつまりはそういうことだったのだろう。
なあんだ。
あまり振られた経験がない僕は、少しショックを受けていた。振られたといってもホテルに行く前に逃げられただけだが。誘われて逃げたことはあっても逃げられたのははじめてだ。
それに、その晩のことについて、先輩からなにかフォローや口止め、あるいはそれらしい言い訳やらなにやらがあるかと思ったが、何も言ってこない。なるほど。あんなに乱れていたくせに、あれはなかったことにしたいわけか。僕に求めているのは職場の後輩、という立場だけということなんですね。あんなに、あんなに感じて乱れていたくせに。
そのことで自信をなくしたというわけではないが、その頃から僕はあまり男にも手を出さないようになった。あの晩逃した先輩の体が目の前にちらついて、しかもその当人ときたら目の前を相変わらず無防備に僕の前をふらふら歩いているのである。
しかし、拒否された以上は手を出すわけにもいかない。
生殺しだった。
時勢からリモートワークが推進され、先輩と直接会うことがほとんどなくなったら少しは落ち着くかと思ったが、人と会うことが少ない分、あの晩の先輩のことをますます思い出す機会が多くなった。属性が多少守備範囲から外れていても、楽しませる自信はあるのに。あの晩、首輪とリードつけて、逃げられないようにして、無理やりにでもやっておけばよかった、と何度も後悔した。先輩に首輪をつけホテルまで散歩させる夢まで見たのだから重症だ。
ある時、その先輩と、リモート越しとはいえ久しぶりにふたりきりで話せる機会が来た。
そのことに僕は少しドキドキしていたのだが、先輩ときたらそういう日に限って寝坊している。
しかも、わざわざカメラの前で着替えをはじめた。
堂々と見せられる胸のライン、お腹のライン、それに乳首。あの晩の感触を思い出す。ただの不注意なのか、そう見せかけて誘っているのか。着替える必要もないのにわざわざ裸を見せているのは、僕へのサインなのか、ただの無防備なのか。探り合うような会話のなかで、先輩がふとなんとも艶かしい表情になった。
やっぱり、誘ってる。
僕がわざとらしくいやらしいことを言うと、先輩の顔はバターみたいにみるみる蕩けていった。仕事の時間中にやばい、と思ったが、もう僕も止まらなかった。性器を見せて、と言うと、先輩は一度拒否するふりをしながら結局応じて来た。僕は念のため、リモート会議の入室設定を許可制にする。案の定、ほどなく家庭の事情で欠席と言っていた韮沢さんがやってきて、僕らの不謹慎なプレイは間一髪表沙汰にならずに済んだ。言ったのは僕だが、応じる先輩も無防備すぎる。さらに、その後も先輩の顔はとろけっぱなしだ。韮沢さんが慌てていたので気づかなかったのが幸いだが、こんな顔を外でしていたら、犯してくれ、と言っているようなものだろう。
なんて危なっかしい。
僕がしつけてあげなきゃ。
その考えが自然と脳裏に浮かび、僕はただの射精よりも遥かに強い快楽が全身を突き上げるのを感じた。
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