鬼の騎士団長が淫紋をつけられて発情しまくりで困っているようなので、僕でよければ助けてあげますね?

狩野

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今際の光景(5)

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「――というわけで。ルイーズは持病の発作で結婚式を前に死亡。さっきの凶行は、死に際のみっともない姿を見られたくないがゆえの暴走。彼女の死に際の希望を叶えリカルド国王と僕は義兄弟の契りを交わし、ヴォルネシアとラトゥールの国交も安泰、と」

 儀式の間の扉を閉めながらシルヴァリエが言った。

「これで、どうにか丸くおさまりましたかね」
「……雑なシナリオだな。王都へ戻って報告した際に、女王陛下とアンドリアーノ公がどう仰られるか……」
「どう言ったって結婚相手が死んだんだからどうしようもないんじゃないですか? いくら陛下や父上とはいえ。あとはルイーズの正体について僕らが口をつぐんでいればいいことですよ」
「シルヴァリエ、お前は知らないかもしれないが――お前とルイーズの結婚についての国内外への宣伝のために、多額の費用をかけてあれこれ準備しているんだぞ。王城の橋の交換工事や、王都の石畳の張り替えに広場の整備、公爵家としては領地でこれを祭日と定め――」
「あっわかりました。それなら、僕とカルナス団長が結婚しましょう」
「あ?!」
「要は僕が結婚すればいいんでしょう。カルナス団長もラトゥールでは結構な有名人ですし。僕らが結婚したら、ルイーズとの結婚以上にみんなびっくりしますよ」
「求められているのはそういうサプライズじゃない」

 と、顔をしかめるカルナスだったが、頬が少し赤く染まっているのをシルヴァリエはもちろん見逃さなかった。

 中の話を聞かれないようにと少し離れたところで待機するよう命じていたモーランたちが、カルナスとシルヴァリエが出てきたのに気づいて近づいてくる。シルヴァリエはそれに向かって軽く手を挙げる。

「カルナス団長、シルヴァリエ様、いったいなにが……」

 そう尋ねるモーランの横を、誰かがすり抜けた。

「ルイーズにはどうも持病があったらしくて……」

 打ち合わせ通りの設定を神妙な表情で語るシルヴァリエの前に、誰かが立ち塞がる

「え……?」
「ぁ……」

 モーランの横をすり抜けてきたグランビーズの剣が、シルヴァリエの前に立ち塞がったカルナスの腹を深々と突き刺していた。

「……カルナス団長……?」

 剣が体に刺さった奇妙な姿のまま、カルナスはグランビーズを肩から床に叩きつけ、そのままそこに押さえ込んだ。

「カルナス団長!」
「カルナス団長?!!」
「カルナス団長、カルナス団長?!」
「グランビーズの口に布を噛ませておけ……団内裁判にかけて……これは……騎士団内だけの問題……」

 周囲が口々に自分の名前を叫ぶ中で、カルナスは礼服を真っ赤に染め、喘ぐように言いながら、言葉にならない悲鳴を上げるシルヴァリエの腕の中に倒れ込む

 自分をかばうように抱え込むシルヴァリエの口に唇を掠めるようにキスをすると、幸福そうな笑みを浮かべたまま、目を閉じた。
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