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雪下の幻想(1)
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水月邸から現れて馬車に乗り込むときのカルナスはさすがの精神力というべきか、いつもより僅かに歩幅が狭いという以外はほとんど遜色のない堂々とした足取りで騎士たちの姿を現し、グランビーズとモーランに言葉少なに指示を出して、シルヴァリエがすでに座っている馬車に乗り込んだ。
ドアを閉めるとシルヴァリエは早速、向かいに座るカルナスの太ももに手を伸ばし指がめり込むほどの強さで揉み始めたが、カルナスは素知らぬ顔で窓のほうを向いている。出発の声がかかり馬車内のカーテンを閉め切ると、シルヴァリエはカルナスの膝裏をかかえ椅子から引き摺り下ろすようにして自分のほうへ引き寄せ、下半身にまとっていたものをすべて剥ぎ取った。中から現れた肌は出発のほんの5分前まで耽っていた情事の跡もあからさまで、シルヴァリエは満足そうに微笑みカルナスを抱き寄せ、向かい合わせの状態で自分の膝に跨らせた。
「久しぶりの騎士団長としてのお仕事、立派でしたねカルナス団長。ほんのちょっと前まで僕の下で髪を乱していた人と同一人物とは思えませんでしたよ」
「…………」
「――ああ。カルナス団長にとっては久しぶりじゃないんですね。これも騎士団長としてのお仕事のうちでしたっけ?」
シルヴァリエがカルナスの首元に顔を埋め、上着の隙間から手を入れ脇腹をなでながら尋ねる。カルナスは無言のまま、虚ろな虹彩では馬車のシートカバーに施された刺繍が揺れていた。
「お仕事なら頑張らないといけないですね。馬車の中を汚したら騎士団のかたに掃除をお願いしないといけませんから、今日は宿泊地までは出さないように我慢しましょう。その分後ろはいっぱいイかせてあげますからね」
シルヴァリエはそう言いながら、カルナスの両腿を掴み軽く力を入れた。カルナスの腰が落ち、その中央の孔が、もはや自分の体の一部のように馴染んだもので満たされる。カルナスの口から吐息がもれ、シルヴァリエの首に回された腕に力が入る。
それは、カルナスにとってこの行為がもはや義務に過ぎないとわかっているシルヴァリエをほんのわずかに喜ばせた。
騎士団に護衛されながら馬車は街道をひた走り、日程の半分を消化する頃には、予定通り、窓の外は一面の雪で覆われていた。
街道には高度な魔術が施されていて石畳の上に舞い落ちた雪は積もる間も無く吸収されるが、走るのは街道だけというわけにもいかない。馬車の車輪を雪道用のそれに換装し、想定以上の寒さに人馬の装備のほぼすべての入れ替えを二度に渡って行いながら、目的のパラクダンダの砦へ向かって一行は迷うことなく進んでいく。
宿としたのは街道沿いの大都市で、すべてアンドリアーノ家の別邸かその親戚筋の邸宅で済ませた。王家が所有している別荘を提供するという話もあったがシルヴァリエは断った。アンドリアーノ家が所有しているそれらのほうが数が多く、立派で、なにより自分の意のままになるためにカルナスとの時間が確保しやすかったからだ。
護衛に、第一騎士団でも第二騎士団でもなく、モーランが隊長を務める第三騎士団を指名したのも、同じ理由である。シルヴァリエに取り入ろうしているモーランは、第一騎士団長のノルダ・ロウや第二騎士団長のグランビーズに比べて話を通しやすい。モーランには、護衛中の騎士団の行動はなにごとにつけ団長であるカルナスよりも前にまず自分に話を通すよう命じてあった。予定外だったのは第二騎士団長のグランビーズだけがなぜか単独でついてきてしまったことだが、移動中の一行のなかで姿を見かける以外に特に目立った行動はとってこない。
「シルヴァリエ様、あ、シルヴァリエ副団長、ご相談が」
パラクダンダの砦まであと一日、というその夕暮れ、カルナスの後について馬車から降りるなり、この護衛の指揮を担当しているモーランが、シルヴァリエに飛び付かんばかりの勢いでやってきた。
ドアを閉めるとシルヴァリエは早速、向かいに座るカルナスの太ももに手を伸ばし指がめり込むほどの強さで揉み始めたが、カルナスは素知らぬ顔で窓のほうを向いている。出発の声がかかり馬車内のカーテンを閉め切ると、シルヴァリエはカルナスの膝裏をかかえ椅子から引き摺り下ろすようにして自分のほうへ引き寄せ、下半身にまとっていたものをすべて剥ぎ取った。中から現れた肌は出発のほんの5分前まで耽っていた情事の跡もあからさまで、シルヴァリエは満足そうに微笑みカルナスを抱き寄せ、向かい合わせの状態で自分の膝に跨らせた。
「久しぶりの騎士団長としてのお仕事、立派でしたねカルナス団長。ほんのちょっと前まで僕の下で髪を乱していた人と同一人物とは思えませんでしたよ」
「…………」
「――ああ。カルナス団長にとっては久しぶりじゃないんですね。これも騎士団長としてのお仕事のうちでしたっけ?」
シルヴァリエがカルナスの首元に顔を埋め、上着の隙間から手を入れ脇腹をなでながら尋ねる。カルナスは無言のまま、虚ろな虹彩では馬車のシートカバーに施された刺繍が揺れていた。
「お仕事なら頑張らないといけないですね。馬車の中を汚したら騎士団のかたに掃除をお願いしないといけませんから、今日は宿泊地までは出さないように我慢しましょう。その分後ろはいっぱいイかせてあげますからね」
シルヴァリエはそう言いながら、カルナスの両腿を掴み軽く力を入れた。カルナスの腰が落ち、その中央の孔が、もはや自分の体の一部のように馴染んだもので満たされる。カルナスの口から吐息がもれ、シルヴァリエの首に回された腕に力が入る。
それは、カルナスにとってこの行為がもはや義務に過ぎないとわかっているシルヴァリエをほんのわずかに喜ばせた。
騎士団に護衛されながら馬車は街道をひた走り、日程の半分を消化する頃には、予定通り、窓の外は一面の雪で覆われていた。
街道には高度な魔術が施されていて石畳の上に舞い落ちた雪は積もる間も無く吸収されるが、走るのは街道だけというわけにもいかない。馬車の車輪を雪道用のそれに換装し、想定以上の寒さに人馬の装備のほぼすべての入れ替えを二度に渡って行いながら、目的のパラクダンダの砦へ向かって一行は迷うことなく進んでいく。
宿としたのは街道沿いの大都市で、すべてアンドリアーノ家の別邸かその親戚筋の邸宅で済ませた。王家が所有している別荘を提供するという話もあったがシルヴァリエは断った。アンドリアーノ家が所有しているそれらのほうが数が多く、立派で、なにより自分の意のままになるためにカルナスとの時間が確保しやすかったからだ。
護衛に、第一騎士団でも第二騎士団でもなく、モーランが隊長を務める第三騎士団を指名したのも、同じ理由である。シルヴァリエに取り入ろうしているモーランは、第一騎士団長のノルダ・ロウや第二騎士団長のグランビーズに比べて話を通しやすい。モーランには、護衛中の騎士団の行動はなにごとにつけ団長であるカルナスよりも前にまず自分に話を通すよう命じてあった。予定外だったのは第二騎士団長のグランビーズだけがなぜか単独でついてきてしまったことだが、移動中の一行のなかで姿を見かける以外に特に目立った行動はとってこない。
「シルヴァリエ様、あ、シルヴァリエ副団長、ご相談が」
パラクダンダの砦まであと一日、というその夕暮れ、カルナスの後について馬車から降りるなり、この護衛の指揮を担当しているモーランが、シルヴァリエに飛び付かんばかりの勢いでやってきた。
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