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別離の道程(3)
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窓から見える枯葉の落ちる音すらも聞こえるのではないかというような長く深い沈黙の後、
「……どうでもいい話だ」
と、カルナスは手にしていた書類を未整理の書類の山へ戻した。
「あとはいったん預かる。後で取りに来てくれ。それまでにはなんとかしておく」
「……書類を届けるだけなら、うちから使いを出しますよ」
「この中には王宮や騎士団の機密事項も含まれている。アンドリアーノ公爵家の人間と言えども、簡単に渡すことはできない」
「いつごろになりますか?」
シルヴァリエの提案を撥ねたカルナスに、ノルダ・ロウが尋ねる。
「夕方……いや、明日には」
「承知しました」
「自分、来るっス!」
ふたたびグランビーズが手を挙げた。カルナスが首を横に振った。
「お前たちはもう来るな。騎士団とアンドリアーノ公爵家が接近していると噂されるのは望ましくない。誰か他の使いを寄越してくれ。あまり目立たない……」
「えぇー」
「信頼できるが目立たない者、というのはなかなか難しいですね」
「モーランでどうですか」
シルヴァリエが再び口を挟む。
「モーランでしたら以前からうちと縁がありますし。騎士団としてよりも個人的な動きとして見られるだけで済むでしょう。それにモーランなら第三小隊の隊長を務めているほどなのですから、騎士団内でもそれなりに信頼があるのでしょう?」
「なるほど、名案かもしれません」
シルヴァリエの意見にノルダ・ロウが賛同する。カルナスが、それでいいとうなずくのを見て、シルヴァリエは立ち上がった。
「話は終わりですかね。騎士団に一番近い門まで、馬車で送らせましょう」
「助かるっス! だいぶ前にここ先は騎馬は禁止って止められて、ここまで歩くの、大変だったんスよぉ」
「グランビーズ! 副団長、我々は大丈夫です。来る時も歩いてきましたので」
「それでは食事でも一緒に? 歩いて来たということは昼食がまだでしょう。ここまで訪ねて来てもらって、なにも歓待しないで帰すのは申し訳ない」
「いえお気遣いなく……」
と、ノルダ・ロウが言ったちょうどそのタイミングで、グランビーズの腹がぐぅぅぅぅ、と鳴った。
「……エヘヘ」
「……グランビーズ……」
照れ笑いをするグランビーズの横で、ノルダ・ロウが頭を抱える。
「じゃあ昼食を」
「いえ副団長、それは本当に。粗食に慣れている我々に急に公爵家の食事など、刺激が強すぎる」
「そんな大したものではないですよ。ねえカルナス団長?」
「馬車を出してもらえ、ノルダ」
カルナスが言った。
「ふたり揃ってあまり長く騎士団を留守にしているわけにもいかないだろう」
「わかりました。それでは副団長、お言葉に甘えさせていただきます」
「どうせ甘えるなら、公爵家の昼ごはんを……」
途中まで言いかけたグランビーズが、ノルダ・ロウに睨まれて小さくなった。
シルヴァリエは鈴を鳴らして家人を呼び、ノルダ・ロウとグランビーズを二人が下馬したところまで送るよう指示を出した。
「それでは団長、副団長、失礼を」
「失礼するっス!」
シルヴァリエは軽く手を上げ二人がドアから出ていくのを見送ると、暗い表情で椅子に腰掛けたままのカルナスの横に再び腰掛け、頬杖をついてしばらくカルナスを眺めたあと、おもむろに尋ねた。
「やっぱり精液、漏れてきちゃいました?」
「…………っ」
「ふたりが早く出ていってくれてよかったですね? 服の下は僕の精液まみれのくせに、あんなにしれっとした顔で普通に話してるんですもん。見てて興奮しました」
「わ、私、は……」
「わかってますよ。カルナス団長は真面目なだけなんですよね」
シルヴァリエは立ち上がると、カルナスの背後に周り、肩の上から手を伸ばしシャツのボタンを外して手を中に滑り込ませる。
情事の余韻でぷっくりと立ち上がったままの乳首に触れると、カルナスはびくりと反応し、俯いた。
「汚れたままじゃ気持ち悪いでしょう。風呂の用意をさせてますから、一緒に入りましょうね。そのあとはテラスで昼食を取って、裏庭を散歩しましょうか。今日は天気がいいし、落ち葉の上を歩くのも楽しいものですよ。そのあとは部屋でチェスをして、セックス。団長が意外とチェスが強くて楽しかったですからね。団長が勝ったらおちんちん可愛がってあげますし、負けたらいじめてあげます。団長の仕事をする時間を与えて欲しいカルナス団長が僕のおちんぽ舐めることになるのは、その後かな」
「……どうでもいい話だ」
と、カルナスは手にしていた書類を未整理の書類の山へ戻した。
「あとはいったん預かる。後で取りに来てくれ。それまでにはなんとかしておく」
「……書類を届けるだけなら、うちから使いを出しますよ」
「この中には王宮や騎士団の機密事項も含まれている。アンドリアーノ公爵家の人間と言えども、簡単に渡すことはできない」
「いつごろになりますか?」
シルヴァリエの提案を撥ねたカルナスに、ノルダ・ロウが尋ねる。
「夕方……いや、明日には」
「承知しました」
「自分、来るっス!」
ふたたびグランビーズが手を挙げた。カルナスが首を横に振った。
「お前たちはもう来るな。騎士団とアンドリアーノ公爵家が接近していると噂されるのは望ましくない。誰か他の使いを寄越してくれ。あまり目立たない……」
「えぇー」
「信頼できるが目立たない者、というのはなかなか難しいですね」
「モーランでどうですか」
シルヴァリエが再び口を挟む。
「モーランでしたら以前からうちと縁がありますし。騎士団としてよりも個人的な動きとして見られるだけで済むでしょう。それにモーランなら第三小隊の隊長を務めているほどなのですから、騎士団内でもそれなりに信頼があるのでしょう?」
「なるほど、名案かもしれません」
シルヴァリエの意見にノルダ・ロウが賛同する。カルナスが、それでいいとうなずくのを見て、シルヴァリエは立ち上がった。
「話は終わりですかね。騎士団に一番近い門まで、馬車で送らせましょう」
「助かるっス! だいぶ前にここ先は騎馬は禁止って止められて、ここまで歩くの、大変だったんスよぉ」
「グランビーズ! 副団長、我々は大丈夫です。来る時も歩いてきましたので」
「それでは食事でも一緒に? 歩いて来たということは昼食がまだでしょう。ここまで訪ねて来てもらって、なにも歓待しないで帰すのは申し訳ない」
「いえお気遣いなく……」
と、ノルダ・ロウが言ったちょうどそのタイミングで、グランビーズの腹がぐぅぅぅぅ、と鳴った。
「……エヘヘ」
「……グランビーズ……」
照れ笑いをするグランビーズの横で、ノルダ・ロウが頭を抱える。
「じゃあ昼食を」
「いえ副団長、それは本当に。粗食に慣れている我々に急に公爵家の食事など、刺激が強すぎる」
「そんな大したものではないですよ。ねえカルナス団長?」
「馬車を出してもらえ、ノルダ」
カルナスが言った。
「ふたり揃ってあまり長く騎士団を留守にしているわけにもいかないだろう」
「わかりました。それでは副団長、お言葉に甘えさせていただきます」
「どうせ甘えるなら、公爵家の昼ごはんを……」
途中まで言いかけたグランビーズが、ノルダ・ロウに睨まれて小さくなった。
シルヴァリエは鈴を鳴らして家人を呼び、ノルダ・ロウとグランビーズを二人が下馬したところまで送るよう指示を出した。
「それでは団長、副団長、失礼を」
「失礼するっス!」
シルヴァリエは軽く手を上げ二人がドアから出ていくのを見送ると、暗い表情で椅子に腰掛けたままのカルナスの横に再び腰掛け、頬杖をついてしばらくカルナスを眺めたあと、おもむろに尋ねた。
「やっぱり精液、漏れてきちゃいました?」
「…………っ」
「ふたりが早く出ていってくれてよかったですね? 服の下は僕の精液まみれのくせに、あんなにしれっとした顔で普通に話してるんですもん。見てて興奮しました」
「わ、私、は……」
「わかってますよ。カルナス団長は真面目なだけなんですよね」
シルヴァリエは立ち上がると、カルナスの背後に周り、肩の上から手を伸ばしシャツのボタンを外して手を中に滑り込ませる。
情事の余韻でぷっくりと立ち上がったままの乳首に触れると、カルナスはびくりと反応し、俯いた。
「汚れたままじゃ気持ち悪いでしょう。風呂の用意をさせてますから、一緒に入りましょうね。そのあとはテラスで昼食を取って、裏庭を散歩しましょうか。今日は天気がいいし、落ち葉の上を歩くのも楽しいものですよ。そのあとは部屋でチェスをして、セックス。団長が意外とチェスが強くて楽しかったですからね。団長が勝ったらおちんちん可愛がってあげますし、負けたらいじめてあげます。団長の仕事をする時間を与えて欲しいカルナス団長が僕のおちんぽ舐めることになるのは、その後かな」
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