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突然の失踪(7)
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「おい、やめろ! 私は行かないぞ!」
シルヴァリエの目指す先が連れ込み宿であることに気づいたカルナスが、手を掴まれたままの状態で全身で抵抗する。カルナスの抵抗のせいで前へ進めなくなったシルヴァリエは、カルナスのもう片方の手を掴んだ。それでもカルナスは動かない。
「行かないと言っているだろう!」
「そうやって騒いで、人を呼びたいんですか?」
シルヴァリエがカルナスの耳元で囁いた。
「王立騎士団の団長と副団長が、いかがわしい通りの連れ込み宿の前で痴話喧嘩してたって噂を立てられたいんですね」
「……っ」
「僕はかまいませんよ。カルナス団長がそうしたいなら」
歯ぎしりをするカルナスの腕から、力が抜ける。シルヴァリエがカルナスの腕を引くと、カルナスはおとなしくそれに従った。
空き部屋の札だけが並ぶ無人のカウンターに場末の宿にしては破格の金を叩きつけ適当な札を取り上げると、シルヴァリエは黙って宿の奥へと進んだ。札に一致する番号が書かれたドアを開けカルナスの体を部屋の中に押し込み、後ろ手に鍵をかける。
「カルナス団長、服を脱いで」
「わ、私は……もうお前とそういうことはしない!」
「脱がせてもらいたいんですか?」
「シルヴァリエ、聞け! 私は……」
「騒ぐと人が来ますよ」
「シルヴァリエ……お前は……っ!」
シルヴァリエが一歩カルナスへ近づくと、カルナスは一歩後ろへ下がる。しかし狭い部屋だ。すぐにカルナスは逃げ場を失くし、後ろに迫るベッドをちらりと見る。その隙をついて、シルヴァリエはカルナスをうつぶせの状態でベッドに押し倒し、その上に馬乗りになった。
「シルヴァリエ……!」
「はい」
「淫紋はもう消えたんだ! お前とはもうしない、必要ない!」
「ああ、そうでしたね」
シルヴァリエは片頬を歪めて笑った。
「淫紋、本当に消えたか見てあげますよ」
そう言いながらシルヴァリエはカルナスのシャツのボタンをはずし、後ろ手に縛り上げた。ズボンと下着をおろした下半身を自分の膝の上に乗せると、足を大きく開かせ、陰茎と後孔の間、通常であれば他人の目には決して触れぬそこを冷えた空気に晒す。
生まれつきの痣のごとくずっとそこにあったはずの淫紋は――綺麗になくなっていた。
まるですべてが幻だったとでもいうように。
なにもなくなった柔肌を、シルヴァリエはじっと見つめる。
「シ……シルヴァリエ、淫紋は……?」
無言のままのシルヴァリエに、カルナスが不安そうな声で尋ねる。
シルヴァリエは自分の指先でカルナスの蟻の門渡りを強く押し、そのまま皮膚を引っ張るように左右に動かした。
「ん…………っ」
カルナスの口から快楽の吐息が漏れたのを確認し、シルヴァリエはカルナスがジェイミーから受け取っていた軟膏薬をカルナスのズボンの後ろポケットから取り上げた。
平たいケースの蓋を開け、二本の指で軟膏薬を掬いとると、カルナスの双丘を左右に割り開く。その奥で怯えるように縮こまっている後孔の皺に手をかけ、内部を引っ張り出す。
「少し腫れてますね」
そう言って、シルヴァリエは指を二本、一気にカルナスの中に埋めた。
「っ?!」
「ジェイミーから貰っていた塗り薬ですよ、安心して」
「じ、自分で塗る……っ!」
「ダメです」
シルヴァリエは軟膏をつけた指をカルナスの内壁のあちこちに擦り付けるように、ゆっくりと抽送させた。カルナスの体が、時折びくりと反応する。
「気持ちいいですか?」
カルナスが首を横に振る。
「でも、僕の足に硬いの当たってますよ。こっちにも薬塗ってあげますね」
シルヴァリエは反対側の手でさらに軟膏を掬い取ると、カルナスと自分の膝との間に手を滑り込ませた。
足に当たる感触を頼りにカルナスの陰茎を探し当て、その全体を軽く扱いた後、先端に指を埋める。
「ここ、入れられてましたね。嫌い、って言って、泣いていた……」
「シルヴァリエ、そこは……」
「今は指先だけですけど、今度はここにもなにか入れてあげますね。カルナス団長の嫌い、は、気持ち良すぎて苦しいって意味ですもんね」
「違……あ、ああ、あぅっ……」
「違わないじゃないですか」
前も後ろも、軟膏と自身の体液でべとべとにして息を上げるカルナスの体をひっくり返して仰向けにさせ、その顔を覗き込んだ。
「もう逃げないって約束してください」
「…………」
「そうしたら手はほどいてあげます。僕だって好きでこんなことをしているわけじゃないんですから」
そう言いながらシルヴァリエがカルナスの口元へ唇を寄せると、カルナスは慌てて顔を逸らす。
「カルナス団長」
「シルヴァリエ! もう、もう許してくれ……私が……私が悪かったんだ」
「そんな泣きそうな顔しないで。怒ってませんよ、もう」
シルヴァリエはカルナスの顔に手をあて、そっと撫でる。しかし続いてカルナスの口から出てきたのは、シルヴァリエの予想を裏切る言葉だった。
シルヴァリエの目指す先が連れ込み宿であることに気づいたカルナスが、手を掴まれたままの状態で全身で抵抗する。カルナスの抵抗のせいで前へ進めなくなったシルヴァリエは、カルナスのもう片方の手を掴んだ。それでもカルナスは動かない。
「行かないと言っているだろう!」
「そうやって騒いで、人を呼びたいんですか?」
シルヴァリエがカルナスの耳元で囁いた。
「王立騎士団の団長と副団長が、いかがわしい通りの連れ込み宿の前で痴話喧嘩してたって噂を立てられたいんですね」
「……っ」
「僕はかまいませんよ。カルナス団長がそうしたいなら」
歯ぎしりをするカルナスの腕から、力が抜ける。シルヴァリエがカルナスの腕を引くと、カルナスはおとなしくそれに従った。
空き部屋の札だけが並ぶ無人のカウンターに場末の宿にしては破格の金を叩きつけ適当な札を取り上げると、シルヴァリエは黙って宿の奥へと進んだ。札に一致する番号が書かれたドアを開けカルナスの体を部屋の中に押し込み、後ろ手に鍵をかける。
「カルナス団長、服を脱いで」
「わ、私は……もうお前とそういうことはしない!」
「脱がせてもらいたいんですか?」
「シルヴァリエ、聞け! 私は……」
「騒ぐと人が来ますよ」
「シルヴァリエ……お前は……っ!」
シルヴァリエが一歩カルナスへ近づくと、カルナスは一歩後ろへ下がる。しかし狭い部屋だ。すぐにカルナスは逃げ場を失くし、後ろに迫るベッドをちらりと見る。その隙をついて、シルヴァリエはカルナスをうつぶせの状態でベッドに押し倒し、その上に馬乗りになった。
「シルヴァリエ……!」
「はい」
「淫紋はもう消えたんだ! お前とはもうしない、必要ない!」
「ああ、そうでしたね」
シルヴァリエは片頬を歪めて笑った。
「淫紋、本当に消えたか見てあげますよ」
そう言いながらシルヴァリエはカルナスのシャツのボタンをはずし、後ろ手に縛り上げた。ズボンと下着をおろした下半身を自分の膝の上に乗せると、足を大きく開かせ、陰茎と後孔の間、通常であれば他人の目には決して触れぬそこを冷えた空気に晒す。
生まれつきの痣のごとくずっとそこにあったはずの淫紋は――綺麗になくなっていた。
まるですべてが幻だったとでもいうように。
なにもなくなった柔肌を、シルヴァリエはじっと見つめる。
「シ……シルヴァリエ、淫紋は……?」
無言のままのシルヴァリエに、カルナスが不安そうな声で尋ねる。
シルヴァリエは自分の指先でカルナスの蟻の門渡りを強く押し、そのまま皮膚を引っ張るように左右に動かした。
「ん…………っ」
カルナスの口から快楽の吐息が漏れたのを確認し、シルヴァリエはカルナスがジェイミーから受け取っていた軟膏薬をカルナスのズボンの後ろポケットから取り上げた。
平たいケースの蓋を開け、二本の指で軟膏薬を掬いとると、カルナスの双丘を左右に割り開く。その奥で怯えるように縮こまっている後孔の皺に手をかけ、内部を引っ張り出す。
「少し腫れてますね」
そう言って、シルヴァリエは指を二本、一気にカルナスの中に埋めた。
「っ?!」
「ジェイミーから貰っていた塗り薬ですよ、安心して」
「じ、自分で塗る……っ!」
「ダメです」
シルヴァリエは軟膏をつけた指をカルナスの内壁のあちこちに擦り付けるように、ゆっくりと抽送させた。カルナスの体が、時折びくりと反応する。
「気持ちいいですか?」
カルナスが首を横に振る。
「でも、僕の足に硬いの当たってますよ。こっちにも薬塗ってあげますね」
シルヴァリエは反対側の手でさらに軟膏を掬い取ると、カルナスと自分の膝との間に手を滑り込ませた。
足に当たる感触を頼りにカルナスの陰茎を探し当て、その全体を軽く扱いた後、先端に指を埋める。
「ここ、入れられてましたね。嫌い、って言って、泣いていた……」
「シルヴァリエ、そこは……」
「今は指先だけですけど、今度はここにもなにか入れてあげますね。カルナス団長の嫌い、は、気持ち良すぎて苦しいって意味ですもんね」
「違……あ、ああ、あぅっ……」
「違わないじゃないですか」
前も後ろも、軟膏と自身の体液でべとべとにして息を上げるカルナスの体をひっくり返して仰向けにさせ、その顔を覗き込んだ。
「もう逃げないって約束してください」
「…………」
「そうしたら手はほどいてあげます。僕だって好きでこんなことをしているわけじゃないんですから」
そう言いながらシルヴァリエがカルナスの口元へ唇を寄せると、カルナスは慌てて顔を逸らす。
「カルナス団長」
「シルヴァリエ! もう、もう許してくれ……私が……私が悪かったんだ」
「そんな泣きそうな顔しないで。怒ってませんよ、もう」
シルヴァリエはカルナスの顔に手をあて、そっと撫でる。しかし続いてカルナスの口から出てきたのは、シルヴァリエの予想を裏切る言葉だった。
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