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突然の失踪(5)
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シルヴァリエがジェイミーの後について部屋を出ていく時には、先ほどフラバーと呼ばれた魔物は、無表情のままドアの横に立っているだけだった。
「彼は?」
「彼?」
「フラバー、でしたっけ。あのまま置いて来ていいんですか」
ジェイミーとフラバーの関係はよくわからないが、シルヴァリエに嫉妬した、というから、一緒についてくるか、あるいは睨まれるくらいはするだろう、と思っていたのだが、少し不思議に思ったシルヴァリエがジェイミーにそう尋ねた。
「あれは、フラバーの端末のひとつにすぎない。端末に私たちの後をついてこさせることは無意味だ。フラバーは、この家のすべてに根を張っている」
「すべてに……?」
「ああ」
シルヴァリエは思わず周囲を見回した。
「家の中で、あれによく似た顔の召使いが働いているのを見ただろう。すべてフラバーの端末だ」
「…………」
それでは、この家全体がいわば魔物の腹の中ということか。シルヴァリエは薄気味悪さを覚えたが、ジェイミーは平然と進んでいく。やはり魔術師というのはよくわからない。それでもシルヴァリエがジェイミーのあとをついていくと、奥まった部屋の前で立ち止まったジェイミーが、
「私の研究室だ。本来ならば人は入れないのだがな」
そう言ってドアを開いた。
ジェイミーの後から部屋の中に入ると、部屋の手前と奥とを仕切る巨大なガラス窓に、巨大なツタがびっしりと張り付いている。しかしよく見るとそれらは単なる植物ではなくうねうねと動く、なにかの触手のようだ。先ほど自分の動きを封じたフラバーのそれによく似ていることに、シルヴァリエは気づいた。
「これは……?」
少し警戒して、入り口のほうまで下がりながらシルヴァリエが尋ねる。
「フラバー、”彼”の様子を見せてくれ」
ジェイミーが部屋の奥に向かって話しかける。するとガラス窓を覆っていたツタが劇場幕のごとく左右に開き、部屋の奥でさらに多くの触手に絡みつかれている人物の姿をふたりの前にさらけ出した。
体は一糸纏わぬ姿だが、顔は目隠しをされている。人物の正体を隠すためではなく、その視界を奪うためのもののように見える。黒い髪。小柄だがよく鍛え上げられた肢体。その人物の正体に気づいたシルヴァリエは、恐れも忘れてガラス窓に取り付いた。
「カルナス団長!」
触手によって両手両足を拘束されたカルナスの股と口を、触手がせわしなく出入りしていた。剥き出しの陰茎には細い触手が絡み付いている。
「貴様、カルナス団長に何をしている、はなせ!」
「淫紋の治療だよ」
「治療……?」
「淫紋にもさまざまあるが彼のものはなかなか厄介でね。彼自身は射精できない状態にした上で女に奉仕させるのが一番手っ取り早かったんだが、彼は女経験がないと言うし。男経験ならあるというからそれでもよかったんだが、不特定多数の男に体を晒すのは立場上避けたいというし、私のほうでもそんな都合のいい相手などなかなか手配できないからね。だからフラバーに相手をさせることにしたんだ」
「フラバー……? 魔物じゃないか!」
「フラバーは淫魔の類じゃないから大丈夫だよ。問題は、快楽を覚えない相手との行為では治療が進まないことだ。だから彼には催眠魔法をかけて、無数の男にご奉仕させられているように錯覚させているけど」
「…………っ」
シルヴァリエはガラス窓に手をついて、倒れそうになる自分をどうにか支えた。
「君をここへ連れて来たのは、あることを試したかったからなんだ。フラバー。目隠しをとってくれるかな」
ジェイミーの言葉に呼応するように、細い触手が一本カルナスの目元に近づき、目元を覆っていた布をめくり上げる。青い瞳が、光を失って虚ろに揺れていた、。
「あれじゃこっちに気づくどころじゃないか。君、ちょっと名前を呼んでみ……」
「カルナス団長!!!」
ジェイミーに言われるまでもなく、シルヴァリエは何度もカルナスを呼んだ。カルナスが緩慢な動作でゆっくりと顔を上げ、その瞳がシルヴァリエの顔をはっきりと捉えた。
「シルヴァリエ……?」
「そうです、僕です、カルナス団長! こんなことはやめてください、今すぐここを出……」
「シルヴァリ……あ、あああああ、あ――――っ! あ――――――――っ!」
カルナスの体が大きくびくんびくんと揺れた。腰を前に突き出し、何度も痙攣する。射精したい時の仕草だと、見慣れたシルヴァリエにはすぐにわかった。陰茎に巻きついている触手が、射精を押し留めているのに違いない。
「イきた……イきたい、イかせて、出させて、ああ、ああああ、やだ、やだあああ!」
「カルナス団長! カルナス団長……っ!」
シルヴァリエは思わず拳を何度もガラス窓に叩きつけると、ジェイミーが血相を変えた。
「おい、君、やめろ! ガラスが割れる!」
「カルナス団長をはなせ!!!!」
「フラバー! 彼を止めろ!」
シルヴァリエが更に力をこめて拳を振りかざすと、その腕は天井から伸びて来た触手に絡め取られた。
「何をする、はなせ!」
「フラバー!」
シルヴァリエの体にさらに触手が絡みつき、シルヴァリエはずるずるとガラス窓から引き離される。
「カルナス団長、大丈夫ですか! ジェイミー、はなせ! やめさせろ、今すぐだ!」
「やめるわけにはいかないよ、これは治療なんだ。彼が望んだことだ」
「望んでない、嫌がってる!」
「治療に苦痛が伴うのは当たり前だ。しかし、君が彼の恋人だというのは本当だったんだね。初めの頃に比べて最近反応が鈍くなっていたのに、顔を見ただけであれだけ興奮状態になるなんて」
「うるさい!」
「おかげであとはどうにかなりそうだよ。まあ喜んでくれたまえ。問診で彼は特定の恋人はいないと言っていたんだが、治療中、シルヴァリエ、と名前を呼んでいたよ。一度だけだがね。すでに別れた後なのかどうなのかまでは聞かないが、彼のためを思うなら、このまま恋人を目の前で寝取られる男の演技を続けていてくれると助かるな」
「なにが演技だ、はなせ! 今すぐやめさせろ、やめさせろ……っ!」
「やだ、やめて、そこやめて、嫌い、嫌いぃぃ……」
カルナスの声に気づいてガラス窓のほうを見ると、シルヴァリエに見せつけるようにさらされたカルナスの陰茎の先端に、ゆっくりと触手が押し入っていく。
「いや、いや……あひ、ひいいいいっ! 出る、おかしいの出る、やだ、出ない、出せない、出させて、出させて……後ろ、やだ、動かないで、ひ、いぐ、あああ、いぎだい、やだ、ああ、ひぃ、そこやめて、もう触らないで、触らないで、やだ、出したい、イきたい、やだ、やああぁぁ……」
シルヴァリエの絶叫に呼応するように、カルナスの嬌声が部屋の中に響く。
シルヴァリエはそれから何時間もの間、ガラス窓に押し付けられながら触手に身体中を犯される上げるカルナスの姿を見続けさせられた。
怒り、叫び、泣き、力尽きてはまた怒り、泣いて、もはや自分がどこにいるのかすらわからなくなった頃、いつの間にやらシルヴァリエの前に全裸の状態のカルナスが立っていた。
「カルナス団長……?」
乱れ切った髪の間からカルナスの顔を伺うと、カルナスは無言のまま、シルヴァリエの前でひざを折った。
そのままカルナスはシルヴァリエのズボンに手をかけ、前をはだける。悲しくて悔しくてしかたなかったはずなのに、カルナスの乱れた姿を見せつけられ続けたシルヴァリエのそれは、持ち主の感情を裏切るように固くそそり立っている。カルナスはそれを、当然の義務のように口に含んだ。
「やめて、やめてくださいカルナス団長。そんなことしなくていいんです。いいんですから……」
シルヴァリエは半泣きになりながらそう訴える。それは間違いなく本心だったのに、シルヴァリエの分身は、待ってましたとばかりにカルナスの口の奥へ白濁の液を間断無く発射した。
シルヴァリエがついに泣き出すと、シルヴァリエから出たものを残さずなめとったカルナスが、その足にしがみつくようにしながら床に崩れ落ちた。
「彼は?」
「彼?」
「フラバー、でしたっけ。あのまま置いて来ていいんですか」
ジェイミーとフラバーの関係はよくわからないが、シルヴァリエに嫉妬した、というから、一緒についてくるか、あるいは睨まれるくらいはするだろう、と思っていたのだが、少し不思議に思ったシルヴァリエがジェイミーにそう尋ねた。
「あれは、フラバーの端末のひとつにすぎない。端末に私たちの後をついてこさせることは無意味だ。フラバーは、この家のすべてに根を張っている」
「すべてに……?」
「ああ」
シルヴァリエは思わず周囲を見回した。
「家の中で、あれによく似た顔の召使いが働いているのを見ただろう。すべてフラバーの端末だ」
「…………」
それでは、この家全体がいわば魔物の腹の中ということか。シルヴァリエは薄気味悪さを覚えたが、ジェイミーは平然と進んでいく。やはり魔術師というのはよくわからない。それでもシルヴァリエがジェイミーのあとをついていくと、奥まった部屋の前で立ち止まったジェイミーが、
「私の研究室だ。本来ならば人は入れないのだがな」
そう言ってドアを開いた。
ジェイミーの後から部屋の中に入ると、部屋の手前と奥とを仕切る巨大なガラス窓に、巨大なツタがびっしりと張り付いている。しかしよく見るとそれらは単なる植物ではなくうねうねと動く、なにかの触手のようだ。先ほど自分の動きを封じたフラバーのそれによく似ていることに、シルヴァリエは気づいた。
「これは……?」
少し警戒して、入り口のほうまで下がりながらシルヴァリエが尋ねる。
「フラバー、”彼”の様子を見せてくれ」
ジェイミーが部屋の奥に向かって話しかける。するとガラス窓を覆っていたツタが劇場幕のごとく左右に開き、部屋の奥でさらに多くの触手に絡みつかれている人物の姿をふたりの前にさらけ出した。
体は一糸纏わぬ姿だが、顔は目隠しをされている。人物の正体を隠すためではなく、その視界を奪うためのもののように見える。黒い髪。小柄だがよく鍛え上げられた肢体。その人物の正体に気づいたシルヴァリエは、恐れも忘れてガラス窓に取り付いた。
「カルナス団長!」
触手によって両手両足を拘束されたカルナスの股と口を、触手がせわしなく出入りしていた。剥き出しの陰茎には細い触手が絡み付いている。
「貴様、カルナス団長に何をしている、はなせ!」
「淫紋の治療だよ」
「治療……?」
「淫紋にもさまざまあるが彼のものはなかなか厄介でね。彼自身は射精できない状態にした上で女に奉仕させるのが一番手っ取り早かったんだが、彼は女経験がないと言うし。男経験ならあるというからそれでもよかったんだが、不特定多数の男に体を晒すのは立場上避けたいというし、私のほうでもそんな都合のいい相手などなかなか手配できないからね。だからフラバーに相手をさせることにしたんだ」
「フラバー……? 魔物じゃないか!」
「フラバーは淫魔の類じゃないから大丈夫だよ。問題は、快楽を覚えない相手との行為では治療が進まないことだ。だから彼には催眠魔法をかけて、無数の男にご奉仕させられているように錯覚させているけど」
「…………っ」
シルヴァリエはガラス窓に手をついて、倒れそうになる自分をどうにか支えた。
「君をここへ連れて来たのは、あることを試したかったからなんだ。フラバー。目隠しをとってくれるかな」
ジェイミーの言葉に呼応するように、細い触手が一本カルナスの目元に近づき、目元を覆っていた布をめくり上げる。青い瞳が、光を失って虚ろに揺れていた、。
「あれじゃこっちに気づくどころじゃないか。君、ちょっと名前を呼んでみ……」
「カルナス団長!!!」
ジェイミーに言われるまでもなく、シルヴァリエは何度もカルナスを呼んだ。カルナスが緩慢な動作でゆっくりと顔を上げ、その瞳がシルヴァリエの顔をはっきりと捉えた。
「シルヴァリエ……?」
「そうです、僕です、カルナス団長! こんなことはやめてください、今すぐここを出……」
「シルヴァリ……あ、あああああ、あ――――っ! あ――――――――っ!」
カルナスの体が大きくびくんびくんと揺れた。腰を前に突き出し、何度も痙攣する。射精したい時の仕草だと、見慣れたシルヴァリエにはすぐにわかった。陰茎に巻きついている触手が、射精を押し留めているのに違いない。
「イきた……イきたい、イかせて、出させて、ああ、ああああ、やだ、やだあああ!」
「カルナス団長! カルナス団長……っ!」
シルヴァリエは思わず拳を何度もガラス窓に叩きつけると、ジェイミーが血相を変えた。
「おい、君、やめろ! ガラスが割れる!」
「カルナス団長をはなせ!!!!」
「フラバー! 彼を止めろ!」
シルヴァリエが更に力をこめて拳を振りかざすと、その腕は天井から伸びて来た触手に絡め取られた。
「何をする、はなせ!」
「フラバー!」
シルヴァリエの体にさらに触手が絡みつき、シルヴァリエはずるずるとガラス窓から引き離される。
「カルナス団長、大丈夫ですか! ジェイミー、はなせ! やめさせろ、今すぐだ!」
「やめるわけにはいかないよ、これは治療なんだ。彼が望んだことだ」
「望んでない、嫌がってる!」
「治療に苦痛が伴うのは当たり前だ。しかし、君が彼の恋人だというのは本当だったんだね。初めの頃に比べて最近反応が鈍くなっていたのに、顔を見ただけであれだけ興奮状態になるなんて」
「うるさい!」
「おかげであとはどうにかなりそうだよ。まあ喜んでくれたまえ。問診で彼は特定の恋人はいないと言っていたんだが、治療中、シルヴァリエ、と名前を呼んでいたよ。一度だけだがね。すでに別れた後なのかどうなのかまでは聞かないが、彼のためを思うなら、このまま恋人を目の前で寝取られる男の演技を続けていてくれると助かるな」
「なにが演技だ、はなせ! 今すぐやめさせろ、やめさせろ……っ!」
「やだ、やめて、そこやめて、嫌い、嫌いぃぃ……」
カルナスの声に気づいてガラス窓のほうを見ると、シルヴァリエに見せつけるようにさらされたカルナスの陰茎の先端に、ゆっくりと触手が押し入っていく。
「いや、いや……あひ、ひいいいいっ! 出る、おかしいの出る、やだ、出ない、出せない、出させて、出させて……後ろ、やだ、動かないで、ひ、いぐ、あああ、いぎだい、やだ、ああ、ひぃ、そこやめて、もう触らないで、触らないで、やだ、出したい、イきたい、やだ、やああぁぁ……」
シルヴァリエの絶叫に呼応するように、カルナスの嬌声が部屋の中に響く。
シルヴァリエはそれから何時間もの間、ガラス窓に押し付けられながら触手に身体中を犯される上げるカルナスの姿を見続けさせられた。
怒り、叫び、泣き、力尽きてはまた怒り、泣いて、もはや自分がどこにいるのかすらわからなくなった頃、いつの間にやらシルヴァリエの前に全裸の状態のカルナスが立っていた。
「カルナス団長……?」
乱れ切った髪の間からカルナスの顔を伺うと、カルナスは無言のまま、シルヴァリエの前でひざを折った。
そのままカルナスはシルヴァリエのズボンに手をかけ、前をはだける。悲しくて悔しくてしかたなかったはずなのに、カルナスの乱れた姿を見せつけられ続けたシルヴァリエのそれは、持ち主の感情を裏切るように固くそそり立っている。カルナスはそれを、当然の義務のように口に含んだ。
「やめて、やめてくださいカルナス団長。そんなことしなくていいんです。いいんですから……」
シルヴァリエは半泣きになりながらそう訴える。それは間違いなく本心だったのに、シルヴァリエの分身は、待ってましたとばかりにカルナスの口の奥へ白濁の液を間断無く発射した。
シルヴァリエがついに泣き出すと、シルヴァリエから出たものを残さずなめとったカルナスが、その足にしがみつくようにしながら床に崩れ落ちた。
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