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悲鳴の行方(1)
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自分が出したものを口の中に受け止めたカルナスに、それを飲み込むようシルヴァリエは命じた。
他人に性的な奉仕すれば淫紋が鎮まるらしいという状況を考えてのことであり、相手のいやがることを強要する趣味は本来自分にはない――シルヴァリエは心のなかでそう言い訳したが、軽く咳き込むようにしながらで何度かに分けて自分のものを嚥下するカルナスの姿に、痺れるような喜びが己の内から湧き上がってきたことは認めざるをえなかった。
「カルナス団長、まだ残ってますよ」
そう言って肉茎に残った残滓を舐め取らせていた途中、カルナスは急に動きをとめると、周辺を探るように目をキョロキョロさせながら左右を見て、
「……なにか聞こえなかったか?」
と言った。
「誰もいませんよ、カルナス団長」
そう答えつつ自分にキスしようとしてくるシルヴァリエの顔をカルナスはさりげなく押し返しながら、いや、と言った。
「女の悲鳴のような……」
「悲鳴? 聞こえませんでしたよ」
「私は聞こえた」
「淫紋、おさまったんですね、カルナス団長」
残念そうなシルヴァリエを、カルナスは軽く睨みつけ、叱りつけるような口調で言う。
「お前の頭にはそういうことしかないのか」
「淫紋の発作が出ているときのカルナス団長ほどじゃありません」
「――っ、私は――」
「冗談です、すみません」
実際のところ冗談というわけでもなかったのだが、カルナスが本気で怒り出しそうなのを見てシルヴァリエはさらりと前言を謝罪し、話題を変えた。
「それで、女性の悲鳴ですか?」
「あ、ああ。そうだ。私は周辺を確認する。お前はその兎を回収して、先に野営地へ戻れ。今の時刻なら、月に向かうように走れば着くだろう」
立ち上がりながら言ったカルナスは、そこでようやくシャツはまくれズボンの前も広げたままという自分の状態を思い出したようで、慌ててシャツを下ろしズボンの前を閉じて、ベルトを締め直した。
「僕もご一緒しますよ」
シルヴァリエも自分の衣服を整えながら、カルナスに言った。
「もう夜だ。このあたりは魔物が出て危険だ」
「だから一緒に」
「私ひとりのほうが安全だ」
そう言い切られると、実際のところシルヴァリエには言い返す術がない。確かに自分がいるほうが足手まといだろうと思う。とはいえ、体を重ねたばかりの相手を危険なところにひとり残して自分は安全なところへ避難する、というのもためらわれる。
「でも……」
シルヴァリエがおそるおそるなにか言おうとすると、カルナスは、いや、と独り言のように呟いたのち、
「やはり、お前も来い」
と、シルヴァリエに言った。
「え? え、ええ。もちろん」
「兎は私が持っていく。遅れるなよ」
カルナスは言葉通り、茂みの陰で絶命していた兎の背を掴んでひょいと持ち上げると、自分の馬のほうへ歩き出した。カルナスの気まぐれに首を傾げつつも、シルヴァリエはその後を追った。
他人に性的な奉仕すれば淫紋が鎮まるらしいという状況を考えてのことであり、相手のいやがることを強要する趣味は本来自分にはない――シルヴァリエは心のなかでそう言い訳したが、軽く咳き込むようにしながらで何度かに分けて自分のものを嚥下するカルナスの姿に、痺れるような喜びが己の内から湧き上がってきたことは認めざるをえなかった。
「カルナス団長、まだ残ってますよ」
そう言って肉茎に残った残滓を舐め取らせていた途中、カルナスは急に動きをとめると、周辺を探るように目をキョロキョロさせながら左右を見て、
「……なにか聞こえなかったか?」
と言った。
「誰もいませんよ、カルナス団長」
そう答えつつ自分にキスしようとしてくるシルヴァリエの顔をカルナスはさりげなく押し返しながら、いや、と言った。
「女の悲鳴のような……」
「悲鳴? 聞こえませんでしたよ」
「私は聞こえた」
「淫紋、おさまったんですね、カルナス団長」
残念そうなシルヴァリエを、カルナスは軽く睨みつけ、叱りつけるような口調で言う。
「お前の頭にはそういうことしかないのか」
「淫紋の発作が出ているときのカルナス団長ほどじゃありません」
「――っ、私は――」
「冗談です、すみません」
実際のところ冗談というわけでもなかったのだが、カルナスが本気で怒り出しそうなのを見てシルヴァリエはさらりと前言を謝罪し、話題を変えた。
「それで、女性の悲鳴ですか?」
「あ、ああ。そうだ。私は周辺を確認する。お前はその兎を回収して、先に野営地へ戻れ。今の時刻なら、月に向かうように走れば着くだろう」
立ち上がりながら言ったカルナスは、そこでようやくシャツはまくれズボンの前も広げたままという自分の状態を思い出したようで、慌ててシャツを下ろしズボンの前を閉じて、ベルトを締め直した。
「僕もご一緒しますよ」
シルヴァリエも自分の衣服を整えながら、カルナスに言った。
「もう夜だ。このあたりは魔物が出て危険だ」
「だから一緒に」
「私ひとりのほうが安全だ」
そう言い切られると、実際のところシルヴァリエには言い返す術がない。確かに自分がいるほうが足手まといだろうと思う。とはいえ、体を重ねたばかりの相手を危険なところにひとり残して自分は安全なところへ避難する、というのもためらわれる。
「でも……」
シルヴァリエがおそるおそるなにか言おうとすると、カルナスは、いや、と独り言のように呟いたのち、
「やはり、お前も来い」
と、シルヴァリエに言った。
「え? え、ええ。もちろん」
「兎は私が持っていく。遅れるなよ」
カルナスは言葉通り、茂みの陰で絶命していた兎の背を掴んでひょいと持ち上げると、自分の馬のほうへ歩き出した。カルナスの気まぐれに首を傾げつつも、シルヴァリエはその後を追った。
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