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高原の狩猟(5)
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馬から降り、自分が投げた小槍の刺さる茂みの中を確認したカルナスは、そのまま周辺を歩き始めた。
シルヴァリエも同じように茂みの中を覗き込んだところ、かなりの量の血が地面に染み込んでいる。これが兎のものだとすると、一撃で死にはしなかったものの確実に致命傷だ。逃げたにしても、あまり遠くには行っていないだろうとあたりをつけ、血の痕跡を追い、それが途絶えたあたりを探し始める。
カルナスに半ば背を向けるようにしながらもさりげなく視界の端に捉えているのは、去り際のノルダ・ロウから「カルナス団長が深追いしそうになったら止めてください」と耳打ちされたからだ。もちろん、ノルダ・ロウに言われなくてもそうするつもりだったが、と、シルヴァリエは心の中でなにかに抗弁しながら、兎を探し続けた。
しかしあっさり見つかるかと思ったら、意外に時間がかかる。
「ここは違うかな……カルナス団長、いました?」
シルヴァリエは背中越しにカルナスに問いかけたが、カルナスは無言のまま、小槍であちこちの茂みをガサガサと薙ぎ払っている。
「カルナス団長、兎、いました?」
聞こえなかったのかな、と、シルヴァリエはもう一度呼びかけた。しかしそれでもカルナスからの返事はない。
「カルナス団長?」
シルヴァリエがカルナスに近づいていくと、カルナスは弾かれたように急に首だけシルヴァリエのほうを向いて、シルヴァリエから距離を取るように横歩きに二、三歩移動した。
「……僕が、なにか?」
「…………なにも」
「だったら返事くらいしてくださいよ」
「お前は森の外で待っていろ」
「え?」
「私ひとりでいい」
「そういうわけには行きません。同行するって約束したんですから」
「私は不要と言った」
「ひとりになりたいのは、その股間のモノが理由ですか?」
「――――っ?!」
カルナスが息を呑み、その場にかがみこむ。
シルヴァリエはカルナスの後ろに立ち、前の方を覗き込んだ。
「やっぱりな。歩き方が少しおかしいと思ったんですよね」
「――貴様!」
かまをかけられたことに気づいたカルナスが立ち上がって逃げようとするのを、シルヴァリエは後ろから抱き抱えるようにして捕まえた。
「カルナス団長は素直すぎるんですよ」
シルヴァリエがカルナスのむき出しになっている首筋にふっと息を吹きかけると、カルナスはびくんと肩を震わせた。
「はなせ……っ!」
「ああ、ズボンの上からだとそんなに目立たないですね。よく見れば気づくかもしれないっていうくらいです。いつから勃ってたんですか?」
「…………」
「団長って呼ばれながら、みんなの前で勃起してたんですか? それで半矢の獲物にかこつけて自慰をしようと」
「ち、違う! あの時はまだなんともなかった!」
「じゃあさっきから?」
喋ることでカルナスの気を引きながら巧みにベルドを外していたシルヴァリエは、緩んだズボンの隙間から片手を忍び込ませ、カルナスの肌に直接触れた。
「?! し、シルヴァリエ?! 何をしている!!」
「このままだとつらいでしょう。手伝ってあげます」
「いらん!」
「僕とふたりきりになって、昨晩のことを思い出しちゃったんですか?」
探り当てたカルナスの陰茎の先端を軽く撫で上げながら、シルヴァリエはカルナスの耳元に甘く囁くように尋ねた。
「バカか! 淫紋のせいだ……! 昨日だって、結局……」
「え?」
「…………っ」
しまった、と言わんばかりに、カルナスは口もとを抑えた。
シルヴァリエも同じように茂みの中を覗き込んだところ、かなりの量の血が地面に染み込んでいる。これが兎のものだとすると、一撃で死にはしなかったものの確実に致命傷だ。逃げたにしても、あまり遠くには行っていないだろうとあたりをつけ、血の痕跡を追い、それが途絶えたあたりを探し始める。
カルナスに半ば背を向けるようにしながらもさりげなく視界の端に捉えているのは、去り際のノルダ・ロウから「カルナス団長が深追いしそうになったら止めてください」と耳打ちされたからだ。もちろん、ノルダ・ロウに言われなくてもそうするつもりだったが、と、シルヴァリエは心の中でなにかに抗弁しながら、兎を探し続けた。
しかしあっさり見つかるかと思ったら、意外に時間がかかる。
「ここは違うかな……カルナス団長、いました?」
シルヴァリエは背中越しにカルナスに問いかけたが、カルナスは無言のまま、小槍であちこちの茂みをガサガサと薙ぎ払っている。
「カルナス団長、兎、いました?」
聞こえなかったのかな、と、シルヴァリエはもう一度呼びかけた。しかしそれでもカルナスからの返事はない。
「カルナス団長?」
シルヴァリエがカルナスに近づいていくと、カルナスは弾かれたように急に首だけシルヴァリエのほうを向いて、シルヴァリエから距離を取るように横歩きに二、三歩移動した。
「……僕が、なにか?」
「…………なにも」
「だったら返事くらいしてくださいよ」
「お前は森の外で待っていろ」
「え?」
「私ひとりでいい」
「そういうわけには行きません。同行するって約束したんですから」
「私は不要と言った」
「ひとりになりたいのは、その股間のモノが理由ですか?」
「――――っ?!」
カルナスが息を呑み、その場にかがみこむ。
シルヴァリエはカルナスの後ろに立ち、前の方を覗き込んだ。
「やっぱりな。歩き方が少しおかしいと思ったんですよね」
「――貴様!」
かまをかけられたことに気づいたカルナスが立ち上がって逃げようとするのを、シルヴァリエは後ろから抱き抱えるようにして捕まえた。
「カルナス団長は素直すぎるんですよ」
シルヴァリエがカルナスのむき出しになっている首筋にふっと息を吹きかけると、カルナスはびくんと肩を震わせた。
「はなせ……っ!」
「ああ、ズボンの上からだとそんなに目立たないですね。よく見れば気づくかもしれないっていうくらいです。いつから勃ってたんですか?」
「…………」
「団長って呼ばれながら、みんなの前で勃起してたんですか? それで半矢の獲物にかこつけて自慰をしようと」
「ち、違う! あの時はまだなんともなかった!」
「じゃあさっきから?」
喋ることでカルナスの気を引きながら巧みにベルドを外していたシルヴァリエは、緩んだズボンの隙間から片手を忍び込ませ、カルナスの肌に直接触れた。
「?! し、シルヴァリエ?! 何をしている!!」
「このままだとつらいでしょう。手伝ってあげます」
「いらん!」
「僕とふたりきりになって、昨晩のことを思い出しちゃったんですか?」
探り当てたカルナスの陰茎の先端を軽く撫で上げながら、シルヴァリエはカルナスの耳元に甘く囁くように尋ねた。
「バカか! 淫紋のせいだ……! 昨日だって、結局……」
「え?」
「…………っ」
しまった、と言わんばかりに、カルナスは口もとを抑えた。
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