鬼の騎士団長が淫紋をつけられて発情しまくりで困っているようなので、僕でよければ助けてあげますね?

狩野

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高原の狩猟(3)

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「ラトゥール王立騎士団第三小隊、第五小隊、到着致しました」

 モーランの呼びかけに応え、野営のテントから出て来たカルナスと第一小隊隊長ノルダ・ロウの姿を見て、シルヴァリエは、おや、と思った。

 ふたりとも、モーランや他の騎士たちのように実戦用の鎧姿ではなく、シルヴァリエのようにマントを羽織っただけの軽装に近い姿だったからだ。

 どうやらモーランにとってもそれは意外だったようで、呼吸が一瞬乱れ、しかしすぐ元に戻る。

「思っていたより早かったな、モーラン」
「はっ」
「それでは”予定通り”、このあと第一小隊は夕食調達のため狩猟へ出る。これには私と副団長も同行する」
「…………」

 いきなり自分のことを言われてシルヴァリエは驚いた。予定通り、と言っているが、もちろんシルヴァリエは何も聞いていない。モーランがいかにもなにか質問したそうにシルヴァリエの横顔へちらちらと視線を送ってくるのがわかる。

 しかしシルヴァリエは、平静を装ったまま無言で敬礼をとった。

 権謀術数渦巻く宮廷での作法に慣れた身が勝手にそうしたものだが、ちょうどよかった。虚をつかれて無防備な表情をカルナスに見せるのは癪に触る。

「――問題ないようだな。では出発だ」
「カルナス団長、申し訳ありません、第一小隊の準備がまだ整っておりません」
「む……」

 自分より三歩下がったところに立つノルダ・ロウに言われ、カルナスは口を引き結んだ。

「そうだったな……出発は15分後とする。全員狩猟の準備を整え、野営の西側に騎馬の状態で集合」
「承知致しました」
「モーラン、ここまで二隊の指揮ご苦労だった。設営は終えてある。本日は夕食まで休息をとれ。人馬ともにな」
「ありがとうございます」

 モーランの返事を聞いたカルナスはひとつ頷いて、踵を返した。

「副団長、こちらへ」

 狩猟に出る、と言われたもののなんの準備もなくひとり放置され呆然としていたシルヴァリエに、ノルダ・ロウが声をかけた。

 促されるままついていくと、

「狩猟用の投槍か弓矢をお貸しします。お得意なものはありますか?」

 と尋ねられたので、シルヴァリエは反射的に、弓、と答え、ノルダ・ロウに訊ね返した。

「狩猟のために鎧を脱いでいたのか」
「ええ、そういうことです」
「騎士団は狩猟に出る際にも鎧姿だった気がするんだが、違ったかな」
「いえ、合っています。副団長がおっしゃっているのは王宮の狩猟祭などでのことだと思いますが、その際の我々の主な目的は狩りではなく護衛ですので。こういった、野営などの際に、本気で獲物を捕まえようとするときにはいつも軽装で行います。限られた区域に人の手で育てた獲物を放す王宮の狩りとは違って、野生の獣は鎧の金属音を聞くだけで警戒して近づく前に逃げてしまい、狩猟になりませんから」
「なるほど……」
「ええ、ですから。そんなにお気になさるようなことではありませんよ、副団長」
「…………?」

 シルヴァリエなんとなく尋ねただけだったのだが、応対するノルダ・ロウの言葉も雰囲気もなんだか妙で、気にするなと言われたのが逆に気になった。
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