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闇夜の作法(3)

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「え? あるんですか?」

 シルヴァリエは思わず再びそう尋ねた。我ながら間抜けな声だった。

 そんな間抜けさには幸い気づかなかったらしいカルナスが、再び小さく頷く。

 シルヴァリエは、ぞわり、と自分の中のなにかが逆立つのがわかった。

 獣だったら総毛立っていたことだろう。しかしシルヴァリエは、


 ――当然に予想していたことだ、と。


 と、自分に言い聞かせた。

 騎士団の中で男同士が関係を持つことは、宮廷でのそれ以上によくある話だと聞いている。まして、カルナスは少年の頃からこの騎士団で育っているのだ。こうして若くして騎士団長になったのも、前騎士団長の”お気に入り”だったからだ、という噂もある。

 当初カルナスを前にしたときには誰がこんな怖い相手に手を出そうというんだという感覚を抱いていたが、こうしてベッドの中のカルナスを見ていると逆に、この肢体を自分の下で喘がせたいという欲望に逆らえる男などいるのだろうか、という気持ちになる。

「……シルヴァリエ?」
「したことがあるのなら――いやがる理由もないでしょう」
「…………」

 カルナスの沈黙で、シルヴァリエはようやく我に返った。

 なにか言おうとするが、うまく言葉が出てこない。

「……そうだな」

 シルヴァリエが言葉を探している間に、カルナスがひとりごとのように呟いた。

「……その……尻、で。やったほうが、早く治るんだったな。お前の話によれば」
「そう、ですね」
「その間、我慢していればいいんだろう。どうということはない。お前に任せる」

 カルナスの全身から力が抜ける。

 そういうことじゃない、と言おうとしたが、ではどういうことなのか、というのを説明しようにもうまい言葉が出てこない。宮廷で人妻をたらしこむ時には、何も考えずとも雲のように軽い言葉が口からふわふわと出て行っというのに。

 シルヴァリエはそんな自分に若干の苛つきを覚えながら無言のままオイルの瓶を傾け、手のひらからこぼれ落ちるほどに注いだ。両手をゆっくりすり合わせオイルを温めた後、再びカルナスの後孔に指先をあて、二本同時に埋め込む。

「……っ!」

 カルナスの全身がこわばり、漏れそうになった声を噛み殺したのがわかった。

「痛いですか?」
「平気……だ」
「……それなら、少し動かしますよ。痛かったら言ってください」

 そう意識したわけではなかったが、内心の苛立ちとは逆にシルヴァリエの所作はあくまでも緩やかだった。男爵夫人から与えられたシルクのシャツに袖を通す時より、伯爵夫人がお気に入りの異国の猫を撫でるときより、侯爵夫人に見せてもらった家宝の宝玉に触れる時よりも優しく、ねっとりと熱くシルヴァリエの指に絡みついてくるカルナスの後孔の浅いところを、探る。

 カルナスから特に抗議があがってこないのを確認しながら、シルヴァリエは指を少し奥へと指を進め、少しぷっくりと膨らんでいるところを見つけると、周辺を探るように撫でた。

「ここ、かな……?」
「あ……っ!」

 そこを少し強く押してやると、カルナスがびくんと腰を浮かせた。シルヴァリエは闇の中で無言のまま笑みを浮かべると、そこら一帯を指の腹で、傷つけないよう、しかし強めに、撫で回す。

「し、シルヴァリエ、そこ……っ!」
「はい」
「そこ……だめ……っ」
「どうしてだめなんです?」
「なにか……おかし……」

 シルヴァリエは片手の指を入れたまま、うつ伏せのカルナスに覆いかぶさるようにして、もう片方の手をカルナスの前に回す。

 さきほどよりも明らかに硬度を増したカルナスの分身が、シルヴァリエの手を待ちかねたように迎えた。
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