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痴漢の正体
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痴漢がはじめて喋った。痴漢なんてことをするのは人間の屑に違いないが、それにしてはなかなかいい声だった。
「それとも、大勢に見られながらするのが好きなんですか?」
俺は首を横に振る。痴漢がほくそ笑んだような気配がした。
「腰上げて」
抵抗する気力はもはやなかった。言われた通りにすると、痴漢は俺のスラックスを膝までずりおろし、再び座らせた。肌に直接感じるシートの感触が、自分が今しているのは異常なことだということを、否応無く俺に知らせてきた。
痴漢は俺の手を取り、無理やり自分のほうに引き寄せた。上半身が痴漢のほうに倒れこみ、痴漢の膝を抱え込んでいるような姿勢になる。痴漢が俺と同じようなシャツとスラックス姿であることが感触でわかった。ではこいつも俺と同じような仕事帰りのリーマンだろうか。仕事の帰りに何をしているんだ。こんなところで。それは俺もか? いや、俺は違う。俺は――葛藤の途中でオナホのスイッチが入れられた。低く響く振動音。俺の頭には再びもやがかかった。
「ほら、これ、ここままだと落ちちゃいますよ。自分で押さえて……」
痴漢に導かれるがまま、自分のチンコをおおうオナホを自分で押さえる。気持ちいい。痴漢はしばらくその姿勢のまま、古い映画の悪党が愛猫にそうするように、俺の体を撫で回していた。はじめは再びシャツの上から、しかしすぐに下着のなかに手を入れ、弱いとわかっている乳首をつまみ、脇腹を撫で、太ももをつねる。このまま緩慢な愛撫でイカされるのかと思ったが、やがて痴漢の手は俺の尻の間に滑り込み、後ろの穴の入り口付近で、まるで指を出し入れするような刺激を与え始めた。
男同士のセックスでそこを使用するというのは話に聞いたことがある。だが、俺にそんな趣味はない。
「そこは……ダメ……」
俺は首をひねり痴漢のほうを見上げそう訴えたが、ダメだといってやめるくらいならそもそも痴漢などしないだろう。薄く笑った気配のあと、俺の尻の穴の付近に、ぬるっとしたものが塗りたくられた。どうやら痴漢が持ち込んだローションかなにかのようだ。
「やめて……」
俺は泣きそうになっていた。尻の穴をどうこされるのはいやだ。しかし、チンコをおおうオナホと、体を撫でさする感触の気持ちよさに、逆らえない。
痴漢の指が内部に侵入してきた。
「やめてぇ……」
指ははじめゆっくりと回転しながら奥まで差し入れられる、そこでしばらく周囲を押したりさすったり、あるいはその場で回転したりしたあと、ゆっくり引き抜かれ、再び多量の粘液とともに侵入してくる。
二度目の挿入は、一度目よりも容易だった。
「ん……っ!」
三度目の侵入で、俺はオナホを自分の口を片手で塞いだ。もう片方の手はオナホを押さえている。チンコを刺激されて気持ちいいのは当たり前だ。体を撫でられるのも。性器以外にも性感帯はある。しかし、尻の穴が気持ちいい、という事実は、俺にとっては受け入れ難いものだった。
痴漢はそれを知ってか知らずか、何度も挿入を繰り返し、ついには指を二本に増やして、尻の穴を前後左右に広げるように動かしている。
「狭いですね……最近ご無沙汰だったんですか?」
痴漢が尋ねてくる。ご無沙汰もなにも、そんなところを広げられるのは人生初めてだ。けれどそんなことを訴える余裕はもはやなかった。後ろに与えられる不規則な刺激と、前に与えられる規則的な刺激で、俺はもはや忘我の淵に立たされていた。イきたいというよりはもう、楽にしてほしかった。
「気持ちいい?」
痴漢が尋ねてくる。俺はコクコクと二・三度頷いた。
「……もう、入れちゃいましょうか。膝の上、またがって」
入れる? なにを? どこに?
痴漢が自分のベルトをはずし、服のなかから起立したものを取り出した。薄々はわかっていたが、これ以上は無理だ。これ以上はできない。
「無理、無理ぃ、やだ……」
俺は逃げようとしたが、痴漢にあっさり抑え込まれて再び同じ姿勢をとらされ、目の前に痴漢のソレをつきつけられた。
無理だ。こんなの、尻の穴に入れたら裂ける。明日からまともな生活が送れなくなる。
「無理、無理……」
「大丈夫ですよ先輩、誰にも言いませんから」
「え……?」
先輩、と呼ばれて、一瞬硬直したのち、俺の脳内の記憶の糸が急速につながった。俺を先輩と呼ぶやつ。痴漢にしてはいいと思ったその声。聞き覚えのある喋りかた。
「さい……と……?」
恐る恐る見上げると、映画の光に照らされた斎藤の顔が、そこにあった。
「それとも、大勢に見られながらするのが好きなんですか?」
俺は首を横に振る。痴漢がほくそ笑んだような気配がした。
「腰上げて」
抵抗する気力はもはやなかった。言われた通りにすると、痴漢は俺のスラックスを膝までずりおろし、再び座らせた。肌に直接感じるシートの感触が、自分が今しているのは異常なことだということを、否応無く俺に知らせてきた。
痴漢は俺の手を取り、無理やり自分のほうに引き寄せた。上半身が痴漢のほうに倒れこみ、痴漢の膝を抱え込んでいるような姿勢になる。痴漢が俺と同じようなシャツとスラックス姿であることが感触でわかった。ではこいつも俺と同じような仕事帰りのリーマンだろうか。仕事の帰りに何をしているんだ。こんなところで。それは俺もか? いや、俺は違う。俺は――葛藤の途中でオナホのスイッチが入れられた。低く響く振動音。俺の頭には再びもやがかかった。
「ほら、これ、ここままだと落ちちゃいますよ。自分で押さえて……」
痴漢に導かれるがまま、自分のチンコをおおうオナホを自分で押さえる。気持ちいい。痴漢はしばらくその姿勢のまま、古い映画の悪党が愛猫にそうするように、俺の体を撫で回していた。はじめは再びシャツの上から、しかしすぐに下着のなかに手を入れ、弱いとわかっている乳首をつまみ、脇腹を撫で、太ももをつねる。このまま緩慢な愛撫でイカされるのかと思ったが、やがて痴漢の手は俺の尻の間に滑り込み、後ろの穴の入り口付近で、まるで指を出し入れするような刺激を与え始めた。
男同士のセックスでそこを使用するというのは話に聞いたことがある。だが、俺にそんな趣味はない。
「そこは……ダメ……」
俺は首をひねり痴漢のほうを見上げそう訴えたが、ダメだといってやめるくらいならそもそも痴漢などしないだろう。薄く笑った気配のあと、俺の尻の穴の付近に、ぬるっとしたものが塗りたくられた。どうやら痴漢が持ち込んだローションかなにかのようだ。
「やめて……」
俺は泣きそうになっていた。尻の穴をどうこされるのはいやだ。しかし、チンコをおおうオナホと、体を撫でさする感触の気持ちよさに、逆らえない。
痴漢の指が内部に侵入してきた。
「やめてぇ……」
指ははじめゆっくりと回転しながら奥まで差し入れられる、そこでしばらく周囲を押したりさすったり、あるいはその場で回転したりしたあと、ゆっくり引き抜かれ、再び多量の粘液とともに侵入してくる。
二度目の挿入は、一度目よりも容易だった。
「ん……っ!」
三度目の侵入で、俺はオナホを自分の口を片手で塞いだ。もう片方の手はオナホを押さえている。チンコを刺激されて気持ちいいのは当たり前だ。体を撫でられるのも。性器以外にも性感帯はある。しかし、尻の穴が気持ちいい、という事実は、俺にとっては受け入れ難いものだった。
痴漢はそれを知ってか知らずか、何度も挿入を繰り返し、ついには指を二本に増やして、尻の穴を前後左右に広げるように動かしている。
「狭いですね……最近ご無沙汰だったんですか?」
痴漢が尋ねてくる。ご無沙汰もなにも、そんなところを広げられるのは人生初めてだ。けれどそんなことを訴える余裕はもはやなかった。後ろに与えられる不規則な刺激と、前に与えられる規則的な刺激で、俺はもはや忘我の淵に立たされていた。イきたいというよりはもう、楽にしてほしかった。
「気持ちいい?」
痴漢が尋ねてくる。俺はコクコクと二・三度頷いた。
「……もう、入れちゃいましょうか。膝の上、またがって」
入れる? なにを? どこに?
痴漢が自分のベルトをはずし、服のなかから起立したものを取り出した。薄々はわかっていたが、これ以上は無理だ。これ以上はできない。
「無理、無理ぃ、やだ……」
俺は逃げようとしたが、痴漢にあっさり抑え込まれて再び同じ姿勢をとらされ、目の前に痴漢のソレをつきつけられた。
無理だ。こんなの、尻の穴に入れたら裂ける。明日からまともな生活が送れなくなる。
「無理、無理……」
「大丈夫ですよ先輩、誰にも言いませんから」
「え……?」
先輩、と呼ばれて、一瞬硬直したのち、俺の脳内の記憶の糸が急速につながった。俺を先輩と呼ぶやつ。痴漢にしてはいいと思ったその声。聞き覚えのある喋りかた。
「さい……と……?」
恐る恐る見上げると、映画の光に照らされた斎藤の顔が、そこにあった。
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