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メアリーって、何者?

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 翌朝、僕が目を覚ますと隣にメアリーの姿はなく、少しだけ寂しさを覚える。
 たぶん彼女のことだから僕が寝付くのを待って、ベッドから出たのだろう。いくら専属のメイドだからって、添い寝はやりすぎだからね。
 でも、きっとそばにいてくれた。それだけはわかる。

 とまあ、そんな与太話は置いといて、僕の記憶が戻って二日目。
 さっそく行動しなきゃと思っていたけど、家族そろっての朝食会や、王子教育と実に多忙。
 それでも、まだ五歳の僕には自由な時間があるわけで、まずは相談。もちろん相手はメアリーだ。

「ねえ、メアリー。ゴムのボールって知ってる? あったら欲しいんだけど」

「えっと、ゴムのボールですか? う~ん、ボールとはどのようなものでしょう?」

 おっと、ボールじゃ伝わらないか。

「えっとね、丸い球って言ったらいいのかな。大きさはミカンくらいで、投げ合って遊ぶんだよ」

「……そうですか、私には心当たりがないようです。申しわけありません」

 まあ、仕方ない。あったらラッキーくらいに考えていたから、別にいいけどね。
 でも、それで諦めるわけにはいかないから。

「じゃあ、誰か知ってそうな人いない?」

 そう尋ねてみたら、どうやら彼女には心当たりがあるらしい。

「知ってそうな人ですか……。だったら、庭師のトムさんに聞いたらいいかもしれません。お爺ちゃんだけど、すっごい物知りで、庭師の統括も務めているんですよ」

「へえ~、そうなの。じゃあ、ボールも知っているかな?」

「はい、そうかもしれません」

 僕はその言葉に期待を膨らませる。
 庭師ってくらいだから平民なんだろうけど、そういう遊びを知っているかもしれないんだ。

 と思っていたら、メアリーの行動が早い。

「あっ、そうだ。今から行ってみませんか?」

「え、いいの?」

「そうですね。陛下から許可をいただければ、大丈夫だと思います」

 彼女は呼び鈴を手に取り「チリンチリン」と鳴らす。すると、部屋の前に控えていた二人の近衛騎士の内の一人が、中へ入ってきた。

「失礼いたします。お呼びでございますか」

「マルクス様が、中庭へお散歩に出られます。至急、陛下からの許可と、護衛の選抜をお願いします」

「はっ、かしこまりました」

 メアリーからの指示に従い、走り去っていく近衛騎士。

 正直、メアリーって何者なんだろう。
 僕がそう思ったとしても、不思議ではないはずだ。
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