元高校球児の僕だけど、異世界転生したら称号が球界のプリンスだった

かわなお

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ゴムのボール

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 僕はステータスウィンドウを閉じ、改めてその内容を整理してみる。

『僕は、この世界へスポーツを広めるために転生させられたらしい』

 神に出会った記憶はないと思っていたけど、メールの内容から察するに、会っていたのだろう。
 そんな記憶はあるような気もするが、あまり思い出したくないと思うのは何故だろう。
 まあ、あの神様の態度を見れば、一目瞭然か。

 でも、どうして僕が? ってのは置いておくとして、もしかしたらまた野球ができるかもしれないんだ。これを喜ばずにして、いられるものか。

「やったー!!」

「マルクス様?」

 いかんいかん、うっかり叫んじゃった。

「ううん、何でもないよ」

「そうですか。ゆっくりお休みになってくださいね」

「は~い」

 ふう、焦ったぜ。
 これじゃあ、ただのお子様じゃねえか。まあ、お子様だけど……。

 とりあえずメアリーを誤魔化せたのは良しとして、どうしよっか。
 何かしらアクションを起こす必要はあると思うけど、まずはボールの入手? 
 それからキャッチボールをするためのグローブと、打つためのバットを作って、その後ベースにライン引きの順番かな。
 いずれは球場も欲しいけど、百メートル四方のグランドがあったら十分だし、あとでいいや。

 でも、ボールか……。

 前世の子供の頃は広告用紙をクシャクシャにしてボールを作り、新聞紙を丸めてバットにして遊んだような記憶はあるけど、たぶんこの世界で紙は貴重だろうから無理だよね。代わりになりそうな物といえば……ミカン?
 いやいや、無しでしょう。食べ物を粗末にしたら勿体ないお化けが出ちゃうし。
 この世界にいるかわからないけど、ファンタジーだったらもしかして……。

 うん、アホな考えは一旦忘れて、真面目に考えよう。

 野球のボールっていったら、軟式か硬式。
 軟式ボールの素材はゴムだから、この世界にゴムの木があれば作れそうだよね。
 神様が普及させろって言うくらいなんだから、素材くらいあるでしょう。

 まずは調べてみるか。

 僕はステータスウィンドウを開き、神様から教えられたとおりにテキスト欄へ記入してみた。

『野球用のボール』

 こんな感じかな。検索ボタンはないみたいだけど、どうすりゃいいんだ。

『ゴムボール、軟式ボール、硬式ボール』

 おっと、選択肢が出てきた。これってたぶんクリックすればいいヤツだよね。
 じゃあ、どうしよっか。僕はまだ五歳だから、安全面を考えてゴムボールってのもあり? 手本を見せる立場の僕がボールを怖がっていたらダメだよね。
 うん、まずはゴムボール一択と。

『ゴムボール』

『素材 ゴムの木の樹液
    アロン樹の根の粉末
    ネンチャクカマキリの体液』

「…………げっ、マジでファンタジーだった」

 とりあえず……、ゴムの木はあるんだ。それにアロン樹は知らないけど、問題ないでしょう。
 でも、お前はダメだ。ネンチャクカマキリって何だよ。魔物か!? 魔物なのか!?
 ぐをおおおっ!! どうすんだ、これ。ハアハアハア。
 あ……、やべえ、熱が出た。

「あら、マルクス様? 少しお熱があるようですね。すぐに着替えましょう」

 目ざとく僕の体調変化に気づいたメアリーが、すぐに着替えさせてくれる。
 そして、またベッドの中へと思いきや、彼女はメイド服を脱ぎ、畳んでから一緒に中へって……。

(アウト!)

 アウトだよね。
 普通濡れたタオルをオデコにあてるとかでしょう。
 そりゃあ、まるっきり下着姿ってわけじゃないけど、さっきまでと比べて生地が薄いし、感触がモロに伝わってきて、どうしていいかわからなくなる。

 でも……。

「わたしが一緒にいますから、安心してお休みくださいね」

 彼女は僕を軽く抱きしめてくれた。

 そして、その温もりに包まれて安心した僕は、すぐに寝入ってしまったのだった。
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