真実は手紙と共に

小鳥遊怜那

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チューリップ編

ワクワク投機活動

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 アヅナロの町は、紙で何かを巻いて、それを燃やして吸ってる人が多い。
 ――煙草とは違う匂いだな。なんというか甘い。ココナッツの匂いに似ている。それより宿を探そう。
 ナザトは宿を探して町を歩く。彼女の耳には人々の会話が入る。
「なぁ、奢ってくれねぇ? この間ギル社の株価低下して損しちまってよー。金ねぇんだわ」
「俺もユーリ社の株が不調で、そんなに余裕ねーって」
 ――カブ? 植物のカブじゃないよな? 何のことだろう?
 疑問に思いつつも近場の宿に泊まることにした。

「部屋の空きってありますか?」
「ございますよ。何日間ご宿泊しますか?」
「とりあえず1週間で」
「かしこまりました。10号室へどうぞ」
「ありがとうございます。部屋に行く前にちょっとお話いいですか?」
「かまいませんよ」
「ここに来る途中、"カブ"って言葉を聞いたんですけど、植物のカブではありませんよね?」
「この町でいう株とは、企業が事業資金を調達するために発行する証券で、投資家が企業に出資する手段です」
「どんな仕組みなんですか?」
「企業は会社を始めたり新しい事業を始めたりする際に、まとまった資金を調達する必要があります。この資金を調達するために、企業は「会社のオーナーの権利」を分割して有価証券として発行し、投資家向けに売り出します。投資家が株式を購入することで、企業に資金を提供する代わりに、企業の利益の一部を配当として受け取れたり、企業価値の向上を株価の値上がりとして享受することができます」
「なるほど。今売れている株って何ですか?」
「麻製品の会社と麻農家ですね」
「麻ですか。しかしなぜ?」
「アヅナロでは収入が多ければ政治に関われます。身分による階級が無くなれば、何かでステータスを誇示したくなるのが人間です。大麻の吸引と麻製品が今のブームなのです」
「そうなんですね。その株というのは、どこで買えますか?」
「証券取引所でご購入になれます」
「ありがとうございます。荷物を置いたら行ってみます」

 証券取引所。
 ――はえー。平日だっていうのに結構人いるなー。
「ノット社の株100口くれ」
「ガイマ社の株1万ゼニー分購入で」
「ハカ社の株全部売却してちょーだい」
 ――皆真剣な表情をしている。何だか興味が湧いてきたな。買ってみるか。
 掲示板を見ると、麻関連の会社の株は一番安いものでも、一口4千ゼニーだった。
「すみません株を買いたいのですが」
 店員は、その若さに疑問を持ったのだろう。
「お客様、失礼ですがご年齢を確認してもよろしいでしょうか?」
「今年で17です」
「申し訳ありませんが、株式投資は満18歳でなければ出来ない決まりなんです」
「あーそうなんですか。残念です」
 ――駄目だったか。まぁお金ならまだあるからいいか。それよりチューリップだ。

 とそこに女性が声をかける。
「そこの貴女。もし買えたならどの会社の株を買うつもりでしたの?」
「麻関連の会社が買い目と聞いたのでそれを10万ゼニーほど」
「麻なんかよりチューリップを買ってみては如何でしょう」
「チューリップ?」
「今お金持ちの間で、庭にチューリップを咲かせるのが密かにブームになっているの」
「貴女、日東のセレカレスさんの所にいました?」
「あら、彼女のお知り合いかしら?」
「皆さんにお手紙を配って、植物に戻すように頼まれました。それとは別に、皆さんが抱える問題を解決する手助けも行っています」
「丁度良かった。なら私と手を組んでチューリップを売るのを手伝ってくださらない?」
 彼女は手紙を読まず、ポケットに入れる。
「是非もありませんが、お手紙は読まなくてもよいので?」
「後で読んでおきますわ。さぁ、市場を動かしますわよ!」
 やる気満々なチューリップとの投機活動が開始した。
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