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サトウキビ編
初めての
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――次はアリエダム諸島に行こう。サトウキビが居る。
ナザトはオツピジェを出る。少し西へ行き、船に乗って目的地へ到着した。
まずは喫茶店で、この島がどんな場所なのかを知ることにした。
――困った。珈琲とかエスプレッソとかの、苦いものしか置いてないのか。
渋々エスプレッソを頼み、テラス席で飲むことにした。
熱帯気候ということもあり薄着の人物が多い。歩くのもゆっくりだ。しかも労働時間が短いのか、夕方前だと言うのに人が多い。
――しかし苦いな。この島には砂糖は無いのか?
飲む度に顔を少し顰める。
それを見ていた背の高い女性がこちらに近づく。
「もし? お砂糖、要りますか?」
「ありがとうございます。苦いのはあまり得意ではなくて」
「この島には甘味の類はほぼ有りませんからね。困った時のために、予備の物も差し上げましょうか?」
「いえ、そこまでお世話になるわけには」
「そうですか」
女性は立ち去って行った。
砂糖の入ったエスプレッソを飲み干した。そこで気が付いた。
――何であの人は砂糖を持っていたんだ? まさか、彼女がサトウキビか?
席を立ち、彼女が歩いて行った方向に走る。見つけた。背の高さのお陰ですぐに分かった。
女性の手を取る。
「あの!」
「さっきの……」
「人違いだったら申し訳ありません。貴女、サトウキビさんですか?」
「そうですけど……」
「良かった。私、ナザトと申します。セレカレスさんから手紙を預かっています」
ナザトは荷物から手紙を取り出す。
「手紙……。一体何の要件でしょう?」
サトウキビは中身を改める。
「……」
「それと、皆さんを植物に戻すようにとも頼まれています。ですが、その前に皆さんが抱える問題を解決してからにしたいと思っています。何か協力できることがありましたら、申し付けください」
「いえ……、特に……」
先ほどからどうにも感情の起伏が無い。
「まあ、いきなりこんなこと言われても、信頼できませんよね。何かお試しで注文してみてください。きっと達成してみせますよ」
「……考えておきます」
「この近くの宿に泊まります。思いついたら、気軽にお声かけくださいね」
――やっちゃったー。また無表情で会話しちゃった。だってしょうがないじゃん。初めて会った人なんだもん。いや、初めてじゃなくてもそうだろって? ウルセーバーカ。ああもう、これじゃ次会う時も無愛想になっちゃうよ。これじゃ誰も私を必要としてくれないままだ。はぁ、鬱だ。
そう。サトウキビは感情の起伏が無いのではない。表に出すのが苦手なだけなのである。それを露とも知らないナザトは、どうしたのもかと脳をひねっていた。
翌日。サトウキビはナザトの元へ向かった。
「すみません。この宿にナザトという方は宿泊していますか?」
「ええ。お泊りになっていますよ」
「サトウキビが来たとお伝え願えますか?」
「かしこまりました。あちらの席におかけになって、お待ちください」
待つこと3分。
「早速いらしてくださったのですね」
「昨日の、お試し注文のことなんですけど……」
「何なりとお申し付けください」
「私と、……お友達になってださい」
「ん?」
「私とお友達になってださい」
「いえ、聞こえています。ただ、予想外のことでしたので驚いただけです」
「意外でしたか?」
「今まで植物の皆さんから取引相手として頼まれたことはあっても、対等な関係を求められたことはなかったので」
「そうなんですね」
「友達といいましたが、具体的には何かしたいこととかあるんですか?」
「それは……」
サトウキビは言いよどむ。
――マジか。ただ友達という存在が欲しくてこんなことを願ったのか。まぁ私も友達いないけど。
「えっと。じゃあ、普段どうやって過ごしているのか聞いてもいいですか?」
「普段はぼうっと過ごしています」
「それだけですか?」
「はい」
絶句する。
「失礼ですけど、生活費はどうしてるんですか?」
「私を拾ってくれた方のお世話になっています」
「その方に会わせていただいても?」
「大丈夫です」
ナザトはサトウキビの家に着いていくことになった。
ナザトはオツピジェを出る。少し西へ行き、船に乗って目的地へ到着した。
まずは喫茶店で、この島がどんな場所なのかを知ることにした。
――困った。珈琲とかエスプレッソとかの、苦いものしか置いてないのか。
渋々エスプレッソを頼み、テラス席で飲むことにした。
熱帯気候ということもあり薄着の人物が多い。歩くのもゆっくりだ。しかも労働時間が短いのか、夕方前だと言うのに人が多い。
――しかし苦いな。この島には砂糖は無いのか?
飲む度に顔を少し顰める。
それを見ていた背の高い女性がこちらに近づく。
「もし? お砂糖、要りますか?」
「ありがとうございます。苦いのはあまり得意ではなくて」
「この島には甘味の類はほぼ有りませんからね。困った時のために、予備の物も差し上げましょうか?」
「いえ、そこまでお世話になるわけには」
「そうですか」
女性は立ち去って行った。
砂糖の入ったエスプレッソを飲み干した。そこで気が付いた。
――何であの人は砂糖を持っていたんだ? まさか、彼女がサトウキビか?
席を立ち、彼女が歩いて行った方向に走る。見つけた。背の高さのお陰ですぐに分かった。
女性の手を取る。
「あの!」
「さっきの……」
「人違いだったら申し訳ありません。貴女、サトウキビさんですか?」
「そうですけど……」
「良かった。私、ナザトと申します。セレカレスさんから手紙を預かっています」
ナザトは荷物から手紙を取り出す。
「手紙……。一体何の要件でしょう?」
サトウキビは中身を改める。
「……」
「それと、皆さんを植物に戻すようにとも頼まれています。ですが、その前に皆さんが抱える問題を解決してからにしたいと思っています。何か協力できることがありましたら、申し付けください」
「いえ……、特に……」
先ほどからどうにも感情の起伏が無い。
「まあ、いきなりこんなこと言われても、信頼できませんよね。何かお試しで注文してみてください。きっと達成してみせますよ」
「……考えておきます」
「この近くの宿に泊まります。思いついたら、気軽にお声かけくださいね」
――やっちゃったー。また無表情で会話しちゃった。だってしょうがないじゃん。初めて会った人なんだもん。いや、初めてじゃなくてもそうだろって? ウルセーバーカ。ああもう、これじゃ次会う時も無愛想になっちゃうよ。これじゃ誰も私を必要としてくれないままだ。はぁ、鬱だ。
そう。サトウキビは感情の起伏が無いのではない。表に出すのが苦手なだけなのである。それを露とも知らないナザトは、どうしたのもかと脳をひねっていた。
翌日。サトウキビはナザトの元へ向かった。
「すみません。この宿にナザトという方は宿泊していますか?」
「ええ。お泊りになっていますよ」
「サトウキビが来たとお伝え願えますか?」
「かしこまりました。あちらの席におかけになって、お待ちください」
待つこと3分。
「早速いらしてくださったのですね」
「昨日の、お試し注文のことなんですけど……」
「何なりとお申し付けください」
「私と、……お友達になってださい」
「ん?」
「私とお友達になってださい」
「いえ、聞こえています。ただ、予想外のことでしたので驚いただけです」
「意外でしたか?」
「今まで植物の皆さんから取引相手として頼まれたことはあっても、対等な関係を求められたことはなかったので」
「そうなんですね」
「友達といいましたが、具体的には何かしたいこととかあるんですか?」
「それは……」
サトウキビは言いよどむ。
――マジか。ただ友達という存在が欲しくてこんなことを願ったのか。まぁ私も友達いないけど。
「えっと。じゃあ、普段どうやって過ごしているのか聞いてもいいですか?」
「普段はぼうっと過ごしています」
「それだけですか?」
「はい」
絶句する。
「失礼ですけど、生活費はどうしてるんですか?」
「私を拾ってくれた方のお世話になっています」
「その方に会わせていただいても?」
「大丈夫です」
ナザトはサトウキビの家に着いていくことになった。
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