真実は手紙と共に

小鳥遊怜那

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タマネギ編

苦しみ

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「後から思えばどうかしていました。棺も壺も、後からいくらでも掘り出せるのに」
「それに気が付けなくなるほど、信仰とは強いものということでしょう。それに短時間で全てを運び出せたのは、同一の宗教を信仰する者の絆あってのものです」
「そう。信仰の力は凄かった。でも、だからこそ許せない。あれだけ真面目に信仰して、正しく責務を全うしたのに、皆潰れた。死体が原型を留めていれば復活できる。それすら許されなかった。だから私はモトトク教にも、ミイラ作りにも疑念を抱いた」
「それで、貴女はどうしたいと思いましたか?」
「肉体のない魂はどうなるんでしょうね?」
「?」
「きっと天国ではなくとも、どこかで幸せに暮らしていると思いませんか?」
「まあ、そうかもしれませんね」
「だから私は肉体を無くして死ぬことを願っています。協力してくれますね?」
 ――どの道私は彼女を殺す。であれば、死に方くらいは選ばせてあげるのが優しさだろう。
「何をすればいいですか?」

 海辺にて。
 小舟にタマネギの身体を取り付け、しばらく蜂蜜と牛乳を飲ませ続ける。彼女は下痢をする。小舟の中で尻は汚物にまみれていく。それを確認した後にタマネギは小舟から露出した身体部分に蜂蜜・牛乳を摺り付けられ、海にポツンと浮かべられる。

「スカフィズム。簡単に言うと、虫に体を食わせる拷問があるそうです」
「それをやれと?」
「そうです。貴女には私を拷問死させてもらいます」
「残酷すぎませんか?」
「協力を申し出たのはそちらではありませんか」
「いや、そうですけど……」
「今更逃げようなんて思わないでくださいね。人の過去を暴くことがどれだけ惨いことか。拷問官の苦しみを以て知ってもらいます」

 森ほど虫がいるわけではないから、死ぬまでにはより時間がかかる。それを承知で海に来たのは、湿気による腐敗を狙ってのことだ。腐敗が進めば早く死ねる。
 虫がやって来る。体を這う。こそばゆい。虫が噛んでくる。痛い。だが、払いのけることは出来ない。痒さと痛みに耐える。
 定期的にナザトはやってきて、蜂蜜と牛乳を補充する。

 2週間後。
 タマネギの体は完全に腐敗し、虫に食われた。もう跡形もない。
 ――これで依頼は完了した。後悔はしてない。だけど全然スッキリしない。私はあと9回もこんな思いをしないといけないのか。せめて彼女の予想通り、死後の世界でイガナマさんと会えていることを切に願う。そうでなければ彼女の苦しみが報われない。
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