真実は手紙と共に

小鳥遊怜那

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トウガラシ編

大一番

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「その後、私は鳥を使ってネニスにたどり着いた」
「大変でしたね」
「まあな。それから私は町の人に保護され、ここに定住できることになった」
「それは良かったですね」
「保護されてからも、私は一人であの海域へ向かった」
「!」
「何度も向かって何度も負けた。そしてその度生き残った。それを強運の証として人が集まった。そいつらには全て話した。でもそいつら皆バカだった。私の仇討ちに協力すると申し出てくれた」
 真剣な面持ちになる。
「私の抱える問題は仇討ち。お前にはそれに協力してもらいたい」
 頭を下げて頼んだ。
「勿論です。私はその為に来たんですから」

 その日の夜。
「野郎ども。今回、この嬢ちゃんが参加することになった」
「ナザトです。魔物討伐に協力すつことになりました。よろしくお願いします」
「おー」
「今までお前たちには、烏賊野郎とは戦わせてこなかった。しかし今日、ついにあの魔物と戦う。今までの魔物討伐および魚釣りの経験を活かせば、きっと勝てる。行くぞー!」
「うおおお!」
 出港した。
 怨敵のいる海域へ向かう間、ナザトは自己紹介を兼ねて自分の使える魔法を船員たちに話した。
「まだ話してない人は――」
 船内を歩く。海賊とは思えない、黒い服を着ている男が見えた。
「初めまして」
「ナザトさんでしたっけ? 私はモトトク教の神父、ライルです」
「モトトク教の?」
「鎮魂は宗教の仕事です。トウガラシさんからの依頼を受けて乗船しました。よろしく」
「はあ」
 ――宗教か。海賊でも信じるものなんだなぁ。

 船に揺られること4時間。伝声管からトウガラシの声がする。
「例の海域に入る。全員甲板へ上がれ」
 ナザトたちは船内から外へ出る。
「お前たち。話した通り、奴はデカい。この船だって、真っ2つにされかねない。触手が近寄らないように魔法で牽制し続けろ。それと奴が、触手を回し始めたら速攻で離れるぞ。万が一渦に巻き込まれたら、渦の回転方向に沿って泳ぎ、渦の力が弱まったと感じたら横方向に進め。体は水平を保て」
「了解」
「大一番の大決戦だ! 誰一人欠けることなく、奴に勝つぞ!」
「おー!」
 
 海域に入って僅か五分。50メートル先に奴は姿を現した。
「11時の方向へ進め!」
 船内に緊張が走る。武器を持つ手に力が入る。
「大砲発射!」
 ドォーンと音を立て、砲弾が飛んでいく。弾は全て当たった。15メートルの的に加え、トウガラシの魔法で、ここら一帯は昼のように明るい。外さない。
 ギェェェェと魔物の叫び声が響く。
「次弾装填急げ!」
 海賊たちは大砲に弾を装填する。
「てー!」
 砲弾が烏賊に向かって飛んでいく。しかしそれは防がれた。漏斗ろうとから水を噴射し、その衝撃で弾を空中で爆発させた。
「武器交代! 散弾を放て!」
 散弾と言っても槍を放つのである。

 大量の槍が刺さった烏賊は海中に潜る。
「大砲に切り替えろ! こっちなら水中でも効果がある!」
 水中の獲物目掛けて大砲を撃つ。だが、クリティカルヒットとはいかない。デカい図体に見合わず、細かく左右に泳ぎ、触腕の方に来るようにする。
 奴の触手が船に伸びる。
「雷撃」
 ナザトが対に動き出す。
 烏賊は触手を引っ込める。
「皆さんには申し訳ありませんが、速攻で決めます」
 ナザトは人差し指を天に掲げる。
赤雷白火せきらいはっか
 指から赤い雷を拡散させ、その外周から白い炎の球を公転させながら密集させていく。雷と炎で烏賊を焼く。
「止め。氷槍」
 氷の槍を投げる。しかし、それは掴まれた。あろうことか、こちらに叩きつけてくる。
「防御魔法」
 防御壁と槍は共に砕けた。
 ――あっぶねー。掴まれた瞬間から、氷の強度を下げてなかったら死んでた。
「ナザト! よく防いだ!」
「いえ、今のは私のミスです! 物理は止めておきます!」
「そうか! 分かった!」
 ――と言っても、さっきので大分魔力を使った。大技は控えないと。
 弾幕が展開される。煙で視界が塞がる。その隙間を縫って、触手で攻撃してくる。幸い人には当たらなかったが、船が一部破損した。
「砲撃止め!」
「しかし姐御!」
「分かってる! 砲撃以外碌に効かない中でそれをやめたら、もはや打つ手なしだ。だが、これじゃ視界が塞がり、奴の攻撃を防げねぇ」
「ではどうすれば⁉」
「特攻を仕掛ける」
「特攻⁉」
「余ってる砲弾全部持ってこい!」
「駄目だ! それじゃあ姐御が死んじまう!」
「だが、これ以上の方法はない。それに、奴をここまで追い詰められたのは初めてだ。これを逃せば、もう次はない。だったら私の命くらい安いものだ」
 男たちは反論するが、トウガラシの決意は揺らがない。そこでナザトが提案をする。
「考えがあります」
「話してみろ」

 ――。
「なるほど。それなら私は死なずに奴を倒せるかもしれない。野郎ども、準備しろ」
「はい」
「ナザトは魔力を温存してくれ。弾を用意してる間は私が防御魔法で船を守る」
「お願いします」
 トウガラシは光源発臨を止め、防御魔法を展開する。
 烏賊は触手と墨で攻撃を続ける。
「ハッ! いくら私が魔法が得意じゃないとはいえ、お前の攻撃を数分間耐えることくらい出来るわ!」
 攻撃が止む。
 ――何だ? 諦めたのか?
 漏斗はこちらを向いている。
「!! 総員左右に散れ!」
 漏斗から噴射された水は鉄砲の様に船を貫いた。水鉄砲を食らったところに爆薬があった。船に火が付く。
「やばい!」
「とりあえず甲板に上れ!」
「姐御! これ以上は集められねぇ!」
「だろうな。仕方ない。今ある量でやるしかない」
 手元にある砲弾は15発分。
「それだけで足りますか?」
「駄目なら駄目で抗うさ。やってくれ」
「はい」
「お前ら! 私が戻って来るまでに消火しとけよ!」
 
 ナザトは砲弾ごと、トウガラシを防御魔法で囲う。そしてその球を浮かばせる。それを烏賊に突撃させる。球に向かって攻撃が飛ぶが、構わず進む。口の中に無理矢理入る。
 防御魔法の球から一本の触角のように伸ばす。その道に沿うように、砲弾を投げる。先端に穴をあける。体内で爆発を起こす。
 爆風で口外へ飛ばされる。
「キュエェー!」
 ――まだ生きている。
「ナザト! バリア解け!」
「しかし!」
「早く!」
「ッ!」
 ナザトは彼女を信じる。
 トウガラシは腰の剣を抜いて烏賊に切りかかる。
「おらあぁぁ!」
 皮を引き裂き、心臓を晒す。
「フン!」
 剣を投げ、心臓を1つ潰す。
「ナザト! 他2つ頼んだ!」
 彼女は海に落ちていく。
「無茶を言う」
 だが、ナザトは魔法を構える。
 ――捕まれないくらい高速で放つ。
「氷槍」
 エラ心臓を2つ潰した。魔物が塵と化し消えていく。
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