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人間転生編
逸脱行動
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エベダの指の骨が折れるのとほぼ同時に、母が帰ってきた。
「まずい。どうしよう。暴れたのを抑えられなかったなんていえねーよ」
ナザトは焦る。
「でもすでに出たマイナスを大きくしないためにも、ちゃんと誠心誠意謝らないといけないと思う」
リコは決意する。
「一応俺からも説得はしてみる」
ヒュースターもフォローを入れると言ってくれた。
「どうなりましたか?」
母がこちらにやって来る。
「ごめんなさい」
ナザトとリコが頭を下げる。
「え?」
「エベダさんを抑えることができず、彼は手の指を折ってしまいました」
「母さん。許してやってくれ。あいつが暴れたら、俺だって怪我させずに抑えるのは難しい」
謝罪を聞いた母は「そうですか」と言って。そして逆に頭を下げた。
「誠に申し訳ありません。どちらかが怪我をすることは分かっていたんです」
3人は驚く。
「それでも、1人の時間が欲しかったんです。いつもこの子と一緒で、限界で、そんな時にお2人が来て下さったので、つい甘えてしまいました。本当にごめんなさい」
「そうだったんですね。ならもっと甘えてください」
リコは彼女の言い分を受け入れた。
「でも」
「大丈夫です。私は傷ついても気にしません。それに、明日は私より頼りになる助っ人を読んでみますから」
「ありがとうございます」
彼女は涙を浮かべ、感謝した。
夜。宿に戻った2人は今日の事をオーメンに伝えた。
「お願いします。協力してください」
「なるほどねー。そりゃ確かに私の協力が欲しくなるわけだ」
彼女はハーと溜息をついた。まさか旅に出てまで、と言いかけたところで口を塞ぐ。
「いいよ。私にしかどうにか出来ないなら、手を貸すよ」
「ありがとう。お姉ちゃん」
翌日、3人はヒュースターの家に向かった。
「あら、本当に増えてる」
「オーメンです。よろしくお願いします」
彼女は手を出す。母は手を握る。
「まずはエベダさんについて観察させていただきます。よろしいですか?」
「今日は息子のことを一任したいと思っています」
「ご期待に添えるよう、尽力します」
オーメンはエベダの部屋に入る。
エベダがこちらを見る。バッと立ち上がりササっと走り寄りオーメンの両手を掴み、飛び跳ねながらそれを上下に振り、「あああー」と発声した。
「はじめまして。オーメンです。よろしくね」
エベダは彼女たちの後ろを見る。
「あー」
やや尻下がりのトーンだった。そしてもう1度「あー」と発声すると、暴れ出した。
オーメンはすかさず防御魔法を展開する。それは昨日のナザトとは違う。両手と頭を覆う様に、小さく複数だ。さらに、普通の防御魔法とは違い柔らかくした。
「これで一旦は大丈夫かな」
エベダの逸脱行動が落ち着いた。
「さて、彼が落ち着いたことだし、分析を始めようか」
「分析って、どうするの?」
「まずトリガーと機能分析を始める」
「そんなの分かるの?」
「彼のお母さんは昨日、「知らない人が来たから不安になってる。それで落ち着かせるためにああしてる」って言ってたんだよね?」
「うん」
「2人は昨日見たから混乱しなかった。けど私はそうじゃない。これは言い換えると急な予定変更。昨日2人はアポイントなしでここに来た。だから混乱した」
「でも、今日はもう一人来ることは知っていたはずです」
「そこでもう1つの可能性が考えられる」
「もう1つの可能性?」
「それは母親がいないこと」
「あ」
「さっき彼は握手をした後、私の後ろを見て「あー」と言った。これはお母さんにいて欲しくて声をかけた。でもいなかった。だから構ってほしくて暴れたんだと考えられる」
「つまり急な予定変更とお母さんがいないこと。この2つがトリガー」
「多分ね。じゃあ次に機能分析に移ろう」
「その機能分析って何ですか?」
「暴れたり奇声を上げたりするのが、彼にとってどんな役割を持っているのかを考えることだよ」
「意味なんてあるのか?」
ナザトが質問する。
「あるよ。1手助けや注目を必要としていることを訴えるため、2しんどい場面や活動から逃げるため、3欲しいものを手に入れるため、4嫌な出来事や活動を拒否するため、5刺激を得るため。この5つに分けられるよ」
「エベダの場合だと2と3か?」
「ストレス解消と注意喚起だから、そう捉えても大丈夫だと思うよ」
「次はどうするの?」
「具体的にどうやって対応するかを考える」
「何か案はあるのか?」
「代替行動の教示、スケジュール表の作成、正の強化の活用の3つかな」
「説明を」
ナザトは促す。
「暴れる以外の感情の伝え方を教える。変更があったときにすぐに分かるようにする。望ましい行動がとれた時はご褒美をあげる」
「後ろの2つは出来そうだけど、代替行動っていうのは難しそうだね」
リコは身構える。
「時間はかかるかもしれないけど、きっと大丈夫だよ」
「そうかなー」
「今回やる代替行動について説明するね。名前は感情カード」
「感情カード?」
「1色んな感情を、なるべく簡単な言葉でリストアップする。2その感情を表した絵をかく。3それをケースに入れる。4そして分類して感情を元に言葉やジェスチャーで気持ちを伝える。以上」
「こんなのあるんだ」
「これは普通の大人でも使えるものだから、リコちゃんのも作ってみようか」
「うん」
「じゃあカードを作って、エベダさんに見せよう」
彼女たちはカードを作った。
「まずい。どうしよう。暴れたのを抑えられなかったなんていえねーよ」
ナザトは焦る。
「でもすでに出たマイナスを大きくしないためにも、ちゃんと誠心誠意謝らないといけないと思う」
リコは決意する。
「一応俺からも説得はしてみる」
ヒュースターもフォローを入れると言ってくれた。
「どうなりましたか?」
母がこちらにやって来る。
「ごめんなさい」
ナザトとリコが頭を下げる。
「え?」
「エベダさんを抑えることができず、彼は手の指を折ってしまいました」
「母さん。許してやってくれ。あいつが暴れたら、俺だって怪我させずに抑えるのは難しい」
謝罪を聞いた母は「そうですか」と言って。そして逆に頭を下げた。
「誠に申し訳ありません。どちらかが怪我をすることは分かっていたんです」
3人は驚く。
「それでも、1人の時間が欲しかったんです。いつもこの子と一緒で、限界で、そんな時にお2人が来て下さったので、つい甘えてしまいました。本当にごめんなさい」
「そうだったんですね。ならもっと甘えてください」
リコは彼女の言い分を受け入れた。
「でも」
「大丈夫です。私は傷ついても気にしません。それに、明日は私より頼りになる助っ人を読んでみますから」
「ありがとうございます」
彼女は涙を浮かべ、感謝した。
夜。宿に戻った2人は今日の事をオーメンに伝えた。
「お願いします。協力してください」
「なるほどねー。そりゃ確かに私の協力が欲しくなるわけだ」
彼女はハーと溜息をついた。まさか旅に出てまで、と言いかけたところで口を塞ぐ。
「いいよ。私にしかどうにか出来ないなら、手を貸すよ」
「ありがとう。お姉ちゃん」
翌日、3人はヒュースターの家に向かった。
「あら、本当に増えてる」
「オーメンです。よろしくお願いします」
彼女は手を出す。母は手を握る。
「まずはエベダさんについて観察させていただきます。よろしいですか?」
「今日は息子のことを一任したいと思っています」
「ご期待に添えるよう、尽力します」
オーメンはエベダの部屋に入る。
エベダがこちらを見る。バッと立ち上がりササっと走り寄りオーメンの両手を掴み、飛び跳ねながらそれを上下に振り、「あああー」と発声した。
「はじめまして。オーメンです。よろしくね」
エベダは彼女たちの後ろを見る。
「あー」
やや尻下がりのトーンだった。そしてもう1度「あー」と発声すると、暴れ出した。
オーメンはすかさず防御魔法を展開する。それは昨日のナザトとは違う。両手と頭を覆う様に、小さく複数だ。さらに、普通の防御魔法とは違い柔らかくした。
「これで一旦は大丈夫かな」
エベダの逸脱行動が落ち着いた。
「さて、彼が落ち着いたことだし、分析を始めようか」
「分析って、どうするの?」
「まずトリガーと機能分析を始める」
「そんなの分かるの?」
「彼のお母さんは昨日、「知らない人が来たから不安になってる。それで落ち着かせるためにああしてる」って言ってたんだよね?」
「うん」
「2人は昨日見たから混乱しなかった。けど私はそうじゃない。これは言い換えると急な予定変更。昨日2人はアポイントなしでここに来た。だから混乱した」
「でも、今日はもう一人来ることは知っていたはずです」
「そこでもう1つの可能性が考えられる」
「もう1つの可能性?」
「それは母親がいないこと」
「あ」
「さっき彼は握手をした後、私の後ろを見て「あー」と言った。これはお母さんにいて欲しくて声をかけた。でもいなかった。だから構ってほしくて暴れたんだと考えられる」
「つまり急な予定変更とお母さんがいないこと。この2つがトリガー」
「多分ね。じゃあ次に機能分析に移ろう」
「その機能分析って何ですか?」
「暴れたり奇声を上げたりするのが、彼にとってどんな役割を持っているのかを考えることだよ」
「意味なんてあるのか?」
ナザトが質問する。
「あるよ。1手助けや注目を必要としていることを訴えるため、2しんどい場面や活動から逃げるため、3欲しいものを手に入れるため、4嫌な出来事や活動を拒否するため、5刺激を得るため。この5つに分けられるよ」
「エベダの場合だと2と3か?」
「ストレス解消と注意喚起だから、そう捉えても大丈夫だと思うよ」
「次はどうするの?」
「具体的にどうやって対応するかを考える」
「何か案はあるのか?」
「代替行動の教示、スケジュール表の作成、正の強化の活用の3つかな」
「説明を」
ナザトは促す。
「暴れる以外の感情の伝え方を教える。変更があったときにすぐに分かるようにする。望ましい行動がとれた時はご褒美をあげる」
「後ろの2つは出来そうだけど、代替行動っていうのは難しそうだね」
リコは身構える。
「時間はかかるかもしれないけど、きっと大丈夫だよ」
「そうかなー」
「今回やる代替行動について説明するね。名前は感情カード」
「感情カード?」
「1色んな感情を、なるべく簡単な言葉でリストアップする。2その感情を表した絵をかく。3それをケースに入れる。4そして分類して感情を元に言葉やジェスチャーで気持ちを伝える。以上」
「こんなのあるんだ」
「これは普通の大人でも使えるものだから、リコちゃんのも作ってみようか」
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