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TS編
段階と手段
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「お客さん。本当に引き上げるのかい?」
「まさか。魔道具を回収するまではこの村にいますよ」
「やっぱりか」
「ばれてました?」
「あんな不気味な笑みを浮かべたんだ。何か裏があるとは思うだろ」
「とはいえ、私はもう彼女に近づくつもりはありません」
「ほう」
「まあ見ててくださいよ」
そう言って彼女はお金を置いて店を出る。
「ごちそうさまでした」
「オーメンさん。どうするんですか?」
「うーん。内緒」
「えぇ……」
「大丈夫だよ。考えはあるから」
アマナスたちは開いている宿を探した。
「やっと見つかったね」
「あの店長しかり、この宿しかり、性が反転してないところって結構少ないんだな」
オーサーが愚痴る。
「反転してなくても、この状況で店を開くのは、結構胆力が要ると思いますよ」
「それもそうか」
4人は反転組と非反転組で分かれて部屋をとった。
「村に出てアニマに会うとまずいから、しばらくは部屋に籠ろうね」
「はい」
「性反転のことで、協力できることがあったら呼んでね」
「さて、俺たちは元に戻る方法を考えねーとな」
「確か異性的な側面の段階を上げればいいんでしたよね」
「じゃあまずは自分がどの段階にいるのかを考えるか」
「と言っても、何を元に判断すればいいのでしょうか?」
「異性的な面を好きになるって言ってただろ? 好きな人の特徴とか、なぜ好きになったのかを考えれば分かるんじゃねーの?」
「なるほど」
俺がオーメンさんを好きになった理由。最初は一目惚れだった。魔物に襲われたところを助けてもらったのが出会いだった。でも今は違う。オーメンさんの何でもできるところに憧れて、惹かれていった。俺もああなりたいって。
「オーサーさん。憧れってどの段階だと思いますか」
「そりゃ、ロマンスだろ。相手を過剰に持ち上げたくなったり、理想化したりするのが憧れだ。現実が見えてねーって点でロマンスだ」
「そうですか。ありがとうございます」
「それより俺の話を聞けよ」
「どうせ妹さんでしょう?」
「おうよ。俺の妹シズは、唯一俺を否定しなかった。つまり肯定してくれた。そんなことされたらさー、支配欲も承認欲も湧き出るよなー」
「いや知りませんよ。というか、否定しなかったからと言って、肯定したとは言えないんじゃないですか?」
「黙れ」
物凄い圧だった。一瞬顔が影に覆われたように見えた。
「すみません」
「いや、俺こそ悪かった。忘れてくれ」
一瞬の沈黙が流れる。
「まあとにかく、俺は母性だな。広い心で俺を受け入れてほしい」
アマナスは歯に物が挟まったような顔をする。
「不服か?」
「シスコンの変態に負けるとは思ってなかったので」
「負け犬の遠吠えだな」
アマナスはイラっとしたが、それを飲み込み話を変える。
「とにかく、段階は分かりました。あとは乗り越え方を考えましょう」
「おめーは簡単だろ? 憧れたやつについて調べて、現実を知ればそれで解決じゃねーか」
「そんな簡単なものなんですかね?」
「それで駄目なら諦めろ」
「無責任なことを」
「俺なんてもっと難しいんだぞ。」
「シズさん以外の人に、肯定してもらえればいいんだからそっちも簡単じゃないですか」
「馬鹿野郎、それが出来ねーからこうなったんだろうが」
「知りませんよそんなの」
ギャーギャーと喧嘩をして、あっという間に夜になってしまった。
食事は宿の食堂で行った。
「オーメンさんって性別が反転しなかったってことは、異性性を乗り越えたってことですよね?」
「そうなるね」
「何かヒントとかもらえませんか? 俺は多分"ロマンティック"の段階なんですけど」
無茶振りをしていると思い、申し訳なさそうに聞く。
「私は無自覚で乗り越えてたからなー。でも異性性を投影するって言ってたでしょ? それってつまり、受け入れられない自分の弱さとかを相手に映し出してるってことだよ。だからロマンティックの場合は、相手の事を知ったうえで自分の弱さや不完全さを受け入れる必要があるんじゃないかな?」
「弱さを受け入れる」
「難しいと思うけど、これが出来ればより一層強くなれるから、頑張ってよアマナス君」
「はい」
布団に入り考える。俺は恩返しがしたくて出来る範囲を増やそうと思ってきた。でも結局旅に出てから成長したことは、魔法が使えるようになったことくらい。プロインVの治療はその成果ともいえる。あ、そういえば死者と会話できる魔道具を持ち帰ったことはあったっけ。それに未来予知の魔道具のときも、一応王様を説得するのに協力はしたか。それでも性反転したってことは、弱さを受け入れられていないってことだよな。どうすればいいんだろう。 明日オーメンさんに聞いてみよう。
「まさか。魔道具を回収するまではこの村にいますよ」
「やっぱりか」
「ばれてました?」
「あんな不気味な笑みを浮かべたんだ。何か裏があるとは思うだろ」
「とはいえ、私はもう彼女に近づくつもりはありません」
「ほう」
「まあ見ててくださいよ」
そう言って彼女はお金を置いて店を出る。
「ごちそうさまでした」
「オーメンさん。どうするんですか?」
「うーん。内緒」
「えぇ……」
「大丈夫だよ。考えはあるから」
アマナスたちは開いている宿を探した。
「やっと見つかったね」
「あの店長しかり、この宿しかり、性が反転してないところって結構少ないんだな」
オーサーが愚痴る。
「反転してなくても、この状況で店を開くのは、結構胆力が要ると思いますよ」
「それもそうか」
4人は反転組と非反転組で分かれて部屋をとった。
「村に出てアニマに会うとまずいから、しばらくは部屋に籠ろうね」
「はい」
「性反転のことで、協力できることがあったら呼んでね」
「さて、俺たちは元に戻る方法を考えねーとな」
「確か異性的な側面の段階を上げればいいんでしたよね」
「じゃあまずは自分がどの段階にいるのかを考えるか」
「と言っても、何を元に判断すればいいのでしょうか?」
「異性的な面を好きになるって言ってただろ? 好きな人の特徴とか、なぜ好きになったのかを考えれば分かるんじゃねーの?」
「なるほど」
俺がオーメンさんを好きになった理由。最初は一目惚れだった。魔物に襲われたところを助けてもらったのが出会いだった。でも今は違う。オーメンさんの何でもできるところに憧れて、惹かれていった。俺もああなりたいって。
「オーサーさん。憧れってどの段階だと思いますか」
「そりゃ、ロマンスだろ。相手を過剰に持ち上げたくなったり、理想化したりするのが憧れだ。現実が見えてねーって点でロマンスだ」
「そうですか。ありがとうございます」
「それより俺の話を聞けよ」
「どうせ妹さんでしょう?」
「おうよ。俺の妹シズは、唯一俺を否定しなかった。つまり肯定してくれた。そんなことされたらさー、支配欲も承認欲も湧き出るよなー」
「いや知りませんよ。というか、否定しなかったからと言って、肯定したとは言えないんじゃないですか?」
「黙れ」
物凄い圧だった。一瞬顔が影に覆われたように見えた。
「すみません」
「いや、俺こそ悪かった。忘れてくれ」
一瞬の沈黙が流れる。
「まあとにかく、俺は母性だな。広い心で俺を受け入れてほしい」
アマナスは歯に物が挟まったような顔をする。
「不服か?」
「シスコンの変態に負けるとは思ってなかったので」
「負け犬の遠吠えだな」
アマナスはイラっとしたが、それを飲み込み話を変える。
「とにかく、段階は分かりました。あとは乗り越え方を考えましょう」
「おめーは簡単だろ? 憧れたやつについて調べて、現実を知ればそれで解決じゃねーか」
「そんな簡単なものなんですかね?」
「それで駄目なら諦めろ」
「無責任なことを」
「俺なんてもっと難しいんだぞ。」
「シズさん以外の人に、肯定してもらえればいいんだからそっちも簡単じゃないですか」
「馬鹿野郎、それが出来ねーからこうなったんだろうが」
「知りませんよそんなの」
ギャーギャーと喧嘩をして、あっという間に夜になってしまった。
食事は宿の食堂で行った。
「オーメンさんって性別が反転しなかったってことは、異性性を乗り越えたってことですよね?」
「そうなるね」
「何かヒントとかもらえませんか? 俺は多分"ロマンティック"の段階なんですけど」
無茶振りをしていると思い、申し訳なさそうに聞く。
「私は無自覚で乗り越えてたからなー。でも異性性を投影するって言ってたでしょ? それってつまり、受け入れられない自分の弱さとかを相手に映し出してるってことだよ。だからロマンティックの場合は、相手の事を知ったうえで自分の弱さや不完全さを受け入れる必要があるんじゃないかな?」
「弱さを受け入れる」
「難しいと思うけど、これが出来ればより一層強くなれるから、頑張ってよアマナス君」
「はい」
布団に入り考える。俺は恩返しがしたくて出来る範囲を増やそうと思ってきた。でも結局旅に出てから成長したことは、魔法が使えるようになったことくらい。プロインVの治療はその成果ともいえる。あ、そういえば死者と会話できる魔道具を持ち帰ったことはあったっけ。それに未来予知の魔道具のときも、一応王様を説得するのに協力はしたか。それでも性反転したってことは、弱さを受け入れられていないってことだよな。どうすればいいんだろう。 明日オーメンさんに聞いてみよう。
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