魔道具は希望と共に

小鳥遊怜那

文字の大きさ
上 下
57 / 104
七つの大罪 色欲編

報われる

しおりを挟む
「ミモザ、なんで?」
「僕は君が好きだ!」
「いや、わけが分からないんだけど。だって貴女は私の”誘い”を断ったじゃない!」
「あれは君を傷付けたくなかったからだ。あの時の君は困惑している様にも見えた。本当の君ではない何かになってしまったのかと思った。そこに漬け込むように、欲望のままにまぐわってはお互いに後悔する。そんな思いさせたくなかった。僕はずっとまえから君を愛してる」
「そんなの信じられない。だいたい、貴方があの時断らなければ、私はあんなにも多くの男と寝なかったのに、今更そんなこと言われても遅いよ」
「ごめん。でもまだ君は綺麗なままだよ」
「私は取り返しがつかないほど、汚れてきた。どこが綺麗なのよ」
「たくさんの人と寝てきたということは、それだけ人に話しかけ、交渉を成立させていたということだ。その社交性は昔から変わらない」
「ただ必死だっただけよ」
「それでも人を誘えたことは事実だ。それに、相手の性格に合わせてプレイ内容を変えたと聞く。やっぱり君は優しい人だよ」
「そんなことはない。そんな、ことは……」
 彼女は困惑していた。

「君は覚えてるかな? 昔僕は、本ばかり読んでる地味な子って、周りにからかわれてたこと」
「それが何?」
「クラスで演劇をする時に、脚本を書きたかった僕の背を押してくれたのは君だった。演劇は成功した。あれからからかわれなくなったんだよ」
「頑張ったのはミモザでしょ?」
「きっかけは君だ。君が僕を助けてくれた」
「偶然だよ」
「その偶然は君がいたからだよ」
「……」
「君は綺麗なままだ。愛してる」
 片膝をつき、右手を差し出す。
「分かった」
 ボダ子は手を取る。
「でもお試し期間みたいなのは欲しい。そうじゃないと不安でまた……」
「それでもいい。後悔はさせない」

 アマナス達4人は、そのやり取りを見ていた。
「いやぁ、何とか収まりましたね」
 アマナスは安堵する。
「お兄さんたち良かったね」
 リコは同意する。
「これから始まるんだよ」
 オーメンは次を見ようとする。
「ここらで、治療はミモザにバトンタッチしてよくね?」
 オーサーは興味がないようだ。
「本当は良くないんだけど、そうするつもりだよ。私たちも冒険があるし」
「ならいい。この3か月間、この村でずっと日銭稼いでて飽き飽きしてたんだ」
「アマナス君はそれに加えてプロインVの治療もしてたよ」
「はいはい。偉い偉い」
「俺よりオーメンさんの方が凄いですよ。働いて、ボダ子さんに付き合って、リコちゃんの教育まで」
「ありがとう。お姉ちゃん」
「どういたしまして。そう言ってくれると頑張った甲斐があるよ」

 そんなやりとりをしていると、ミモザがこちらに気が付く。
「見てたんですか?」
「ごめんなさい。心配になって」
 アマナスが謝る。
「俺たちは恋のキューピッドみたいなものだから、見る権利くらいあるだろ?」
 オーサーは開き直る。
「それはそうですけど」
 ミモザはオーメンと目が合った。
「ボダ子を世話してくれた方ですか?」
「そうだよ」
「ありがとうございます。お陰でボダ子は見違えました」
「マイナスがゼロに戻っただけだよ。それに、これからも継続していかないとまた元に戻る」
「これからは僕に任せてくれませんか?」
「無論、そうするつもりだったよ」
「旅に出るのですね?」
「目的があるからね」
「皆さんの旅に幸多からんことを願っています」
「ありがとう」

 翌日。
 オーメンはミモザに引継ぎをする。
「と、こんな感じかな」
「こうして聞くと、本当に色々やってくださったんですね」
「人を助けるっていうのは、これぐらいやらないといけないんだよ」
「そうなんですね」
「じゃあ、もう行くね」
「待ってください」
「何?」
「これを」
 ミモザは金色の羽を差し出す。
「これは魔道具⁉」
「昨日告白する前に見つけたんです」
「効果は?」
「鎮静作用と睡眠障害やけいれん発作の予防ができます」
「多いね。貰ってもいいの?」
「彼女を救ってくれたお礼です」
「じゃあ遠慮なく」
 オーメンは魔道具を手に入れ、ミモザの家から出る。

「お待たせ」
「オーメンさん。それは?」
「今回は報われてばかりっだたなー」
「?」
「魔道具だろ。どうせ」
 と、オーサーが。続けてリコが、なんだか嬉しそうと言う。
 まあ、嬉しそうならいいかとアマナスは思った。
 俺はここまでで、どれだけ役に立てただろう。オーメンさんのこの喜びの仲に、俺も入りたい。
 春の日差しが彼らを照らす。桜はまだつぼみのままだが、すぐに開花する。満開までも、そう遠くはない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

浅野浩二
恋愛
研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...