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七つの大罪 色欲編
報われる
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「ミモザ、なんで?」
「僕は君が好きだ!」
「いや、わけが分からないんだけど。だって貴女は私の”誘い”を断ったじゃない!」
「あれは君を傷付けたくなかったからだ。あの時の君は困惑している様にも見えた。本当の君ではない何かになってしまったのかと思った。そこに漬け込むように、欲望のままにまぐわってはお互いに後悔する。そんな思いさせたくなかった。僕はずっとまえから君を愛してる」
「そんなの信じられない。だいたい、貴方があの時断らなければ、私はあんなにも多くの男と寝なかったのに、今更そんなこと言われても遅いよ」
「ごめん。でもまだ君は綺麗なままだよ」
「私は取り返しがつかないほど、汚れてきた。どこが綺麗なのよ」
「たくさんの人と寝てきたということは、それだけ人に話しかけ、交渉を成立させていたということだ。その社交性は昔から変わらない」
「ただ必死だっただけよ」
「それでも人を誘えたことは事実だ。それに、相手の性格に合わせてプレイ内容を変えたと聞く。やっぱり君は優しい人だよ」
「そんなことはない。そんな、ことは……」
彼女は困惑していた。
「君は覚えてるかな? 昔僕は、本ばかり読んでる地味な子って、周りにからかわれてたこと」
「それが何?」
「クラスで演劇をする時に、脚本を書きたかった僕の背を押してくれたのは君だった。演劇は成功した。あれからからかわれなくなったんだよ」
「頑張ったのはミモザでしょ?」
「きっかけは君だ。君が僕を助けてくれた」
「偶然だよ」
「その偶然は君がいたからだよ」
「……」
「君は綺麗なままだ。愛してる」
片膝をつき、右手を差し出す。
「分かった」
ボダ子は手を取る。
「でもお試し期間みたいなのは欲しい。そうじゃないと不安でまた……」
「それでもいい。後悔はさせない」
アマナス達4人は、そのやり取りを見ていた。
「いやぁ、何とか収まりましたね」
アマナスは安堵する。
「お兄さんたち良かったね」
リコは同意する。
「これから始まるんだよ」
オーメンは次を見ようとする。
「ここらで、治療はミモザにバトンタッチしてよくね?」
オーサーは興味がないようだ。
「本当は良くないんだけど、そうするつもりだよ。私たちも冒険があるし」
「ならいい。この3か月間、この村でずっと日銭稼いでて飽き飽きしてたんだ」
「アマナス君はそれに加えてプロインVの治療もしてたよ」
「はいはい。偉い偉い」
「俺よりオーメンさんの方が凄いですよ。働いて、ボダ子さんに付き合って、リコちゃんの教育まで」
「ありがとう。お姉ちゃん」
「どういたしまして。そう言ってくれると頑張った甲斐があるよ」
そんなやりとりをしていると、ミモザがこちらに気が付く。
「見てたんですか?」
「ごめんなさい。心配になって」
アマナスが謝る。
「俺たちは恋のキューピッドみたいなものだから、見る権利くらいあるだろ?」
オーサーは開き直る。
「それはそうですけど」
ミモザはオーメンと目が合った。
「ボダ子を世話してくれた方ですか?」
「そうだよ」
「ありがとうございます。お陰でボダ子は見違えました」
「マイナスがゼロに戻っただけだよ。それに、これからも継続していかないとまた元に戻る」
「これからは僕に任せてくれませんか?」
「無論、そうするつもりだったよ」
「旅に出るのですね?」
「目的があるからね」
「皆さんの旅に幸多からんことを願っています」
「ありがとう」
翌日。
オーメンはミモザに引継ぎをする。
「と、こんな感じかな」
「こうして聞くと、本当に色々やってくださったんですね」
「人を助けるっていうのは、これぐらいやらないといけないんだよ」
「そうなんですね」
「じゃあ、もう行くね」
「待ってください」
「何?」
「これを」
ミモザは金色の羽を差し出す。
「これは魔道具⁉」
「昨日告白する前に見つけたんです」
「効果は?」
「鎮静作用と睡眠障害やけいれん発作の予防ができます」
「多いね。貰ってもいいの?」
「彼女を救ってくれたお礼です」
「じゃあ遠慮なく」
オーメンは魔道具を手に入れ、ミモザの家から出る。
「お待たせ」
「オーメンさん。それは?」
「今回は報われてばかりっだたなー」
「?」
「魔道具だろ。どうせ」
と、オーサーが。続けてリコが、なんだか嬉しそうと言う。
まあ、嬉しそうならいいかとアマナスは思った。
俺はここまでで、どれだけ役に立てただろう。オーメンさんのこの喜びの仲に、俺も入りたい。
春の日差しが彼らを照らす。桜はまだ蕾のままだが、すぐに開花する。満開までも、そう遠くはない。
「僕は君が好きだ!」
「いや、わけが分からないんだけど。だって貴女は私の”誘い”を断ったじゃない!」
「あれは君を傷付けたくなかったからだ。あの時の君は困惑している様にも見えた。本当の君ではない何かになってしまったのかと思った。そこに漬け込むように、欲望のままにまぐわってはお互いに後悔する。そんな思いさせたくなかった。僕はずっとまえから君を愛してる」
「そんなの信じられない。だいたい、貴方があの時断らなければ、私はあんなにも多くの男と寝なかったのに、今更そんなこと言われても遅いよ」
「ごめん。でもまだ君は綺麗なままだよ」
「私は取り返しがつかないほど、汚れてきた。どこが綺麗なのよ」
「たくさんの人と寝てきたということは、それだけ人に話しかけ、交渉を成立させていたということだ。その社交性は昔から変わらない」
「ただ必死だっただけよ」
「それでも人を誘えたことは事実だ。それに、相手の性格に合わせてプレイ内容を変えたと聞く。やっぱり君は優しい人だよ」
「そんなことはない。そんな、ことは……」
彼女は困惑していた。
「君は覚えてるかな? 昔僕は、本ばかり読んでる地味な子って、周りにからかわれてたこと」
「それが何?」
「クラスで演劇をする時に、脚本を書きたかった僕の背を押してくれたのは君だった。演劇は成功した。あれからからかわれなくなったんだよ」
「頑張ったのはミモザでしょ?」
「きっかけは君だ。君が僕を助けてくれた」
「偶然だよ」
「その偶然は君がいたからだよ」
「……」
「君は綺麗なままだ。愛してる」
片膝をつき、右手を差し出す。
「分かった」
ボダ子は手を取る。
「でもお試し期間みたいなのは欲しい。そうじゃないと不安でまた……」
「それでもいい。後悔はさせない」
アマナス達4人は、そのやり取りを見ていた。
「いやぁ、何とか収まりましたね」
アマナスは安堵する。
「お兄さんたち良かったね」
リコは同意する。
「これから始まるんだよ」
オーメンは次を見ようとする。
「ここらで、治療はミモザにバトンタッチしてよくね?」
オーサーは興味がないようだ。
「本当は良くないんだけど、そうするつもりだよ。私たちも冒険があるし」
「ならいい。この3か月間、この村でずっと日銭稼いでて飽き飽きしてたんだ」
「アマナス君はそれに加えてプロインVの治療もしてたよ」
「はいはい。偉い偉い」
「俺よりオーメンさんの方が凄いですよ。働いて、ボダ子さんに付き合って、リコちゃんの教育まで」
「ありがとう。お姉ちゃん」
「どういたしまして。そう言ってくれると頑張った甲斐があるよ」
そんなやりとりをしていると、ミモザがこちらに気が付く。
「見てたんですか?」
「ごめんなさい。心配になって」
アマナスが謝る。
「俺たちは恋のキューピッドみたいなものだから、見る権利くらいあるだろ?」
オーサーは開き直る。
「それはそうですけど」
ミモザはオーメンと目が合った。
「ボダ子を世話してくれた方ですか?」
「そうだよ」
「ありがとうございます。お陰でボダ子は見違えました」
「マイナスがゼロに戻っただけだよ。それに、これからも継続していかないとまた元に戻る」
「これからは僕に任せてくれませんか?」
「無論、そうするつもりだったよ」
「旅に出るのですね?」
「目的があるからね」
「皆さんの旅に幸多からんことを願っています」
「ありがとう」
翌日。
オーメンはミモザに引継ぎをする。
「と、こんな感じかな」
「こうして聞くと、本当に色々やってくださったんですね」
「人を助けるっていうのは、これぐらいやらないといけないんだよ」
「そうなんですね」
「じゃあ、もう行くね」
「待ってください」
「何?」
「これを」
ミモザは金色の羽を差し出す。
「これは魔道具⁉」
「昨日告白する前に見つけたんです」
「効果は?」
「鎮静作用と睡眠障害やけいれん発作の予防ができます」
「多いね。貰ってもいいの?」
「彼女を救ってくれたお礼です」
「じゃあ遠慮なく」
オーメンは魔道具を手に入れ、ミモザの家から出る。
「お待たせ」
「オーメンさん。それは?」
「今回は報われてばかりっだたなー」
「?」
「魔道具だろ。どうせ」
と、オーサーが。続けてリコが、なんだか嬉しそうと言う。
まあ、嬉しそうならいいかとアマナスは思った。
俺はここまでで、どれだけ役に立てただろう。オーメンさんのこの喜びの仲に、俺も入りたい。
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