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七つの大罪 怠惰編
誰が言うか
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とは言ったものの、手掛かりはないんだよな。
そう思いながら町を歩いていると、クラウドキープの社長、ジェイに声をかけられた。
「説得はどうなりましたか?」
「すみません。難航してます」
「気にしないでください。スプリアさんが頑固なのは、業界中が知ってますから」
「そのことで聞きたいんですけど、スプリアさんにとってグレマさんってどんな人だったんですか?」
「グレマさんは私の父やスプリアさんの代なら、皆お世話になったことがあるほどの教育者です」
「ほう」
「台帳の記録のやり方、保管環境の整え方、パレットの管理法、防犯対策など、今までの管理法を塗り替え、それを分かりやすく教えてくれました」
「本当に凄い人ですね」
「ですが過労が祟って、50にもならずこの世を去りました」
「心中お察しします」
「ですが彼が遺したものは大きい。だからスプリアさんは尚更変えたくはないのでしょう」
「そうだったんですね」
「しかし、何故彼のことを?」
「復活させてスプリアさんを説得して欲しいからです」
「は?」
「魔道具には死者を蘇らせるものもあると聞きます」
「それなら最近聞いたような」
「本当ですか⁉」
「たしか王家がそんな魔道具を集めてきたとか」
「ありがとうございます。行ってみますね」
お礼を言うと、王宮へと走っていった。
「王様に会わせてください」
アマナスはアイソ王国の王からの紹介状を見せる。
「この印は、確かに隣国のものだ。しかし偽造品かどうか確かめる必要がある。しばし待たれよ」
数分待つと王宮へと通された。
「要件を申してみよ」
「王様が、死者を蘇らせる魔道具をお手入れになったと聞き及びました。差し出がましいかとは思いますが、それをぜひ譲っていただきたいのです」
臣下たちはざわつく。
「アマナス殿。申し訳ないが、私が手にしてのは、死者と対話できるものだ。それと、譲るには条件がある」
「かまいません」
「あの魔道具を集めたのは娘なのだが、魔道具を集めてからというものの、部屋に引きこもって使者と対話してばかりいるのだ。何とかしてくれんか?」
「承りました」
アマナスは王に案内され、娘の部屋の前まで来た。
「シャルロット。お客さんだよ」
「……」
「王女様。私は魔道具集めの冒険をしております、アマナスと申します。この度は王女様が魔道具を集められたと聞き及び、お話をしたく参りました。つきましては、お部屋から出てきてはいただけないでしょうか?」
しかし返事はない。
「出てこんな」
「では、出てきたくなるようなお話をしましょう」
アマナスは提案する。
「俺が旅に出るきっかけになった話です」
アマナスはオーメンとの出会いの話をした。
「というわけで俺はオーメンさんについていくと決めたのです」
王女の沈黙は続いた。
「駄目だったようだな」
「まだです。まだ話のネタはあります」
焦るアマナスだったが、その焦りは不要だった。
王女が戸を開けたのだ。
「私、王位を継ぐわ」
「え?」
「え?」
アマナスとシャルロットは顔を見合わせる。
「あら、お客様がいらしたのね」
「えっ、あっ、はい」
「おーシャルロットよ。よくぞ出てきてくれた」
王は彼女を抱きしめる。
「私分かりましたの。王になっても、冒険は出来るのですね」
「彼の話をきいてそう思ったのかね?」
「いいえ。ご先祖様が教えてくださいましたの。王になっても外交を増やせば、それは冒険が出来ていることと同義だと」
「そうかそうか。折り合いをつけたのだな」
「その、よかったですね」
「ああ。本当に」
「ところで報酬の件ですが」
「ああ、約束だからな。魔道具は渡そう。シャルロットもそれでよいな?」
「ええ。もう満足ですわ」
「ありがとうございます」
結局俺が話したのは意味がなかったのか。これが"誰が言うか"ということか。釈然としないながらも彼は宿へ戻った。
そう思いながら町を歩いていると、クラウドキープの社長、ジェイに声をかけられた。
「説得はどうなりましたか?」
「すみません。難航してます」
「気にしないでください。スプリアさんが頑固なのは、業界中が知ってますから」
「そのことで聞きたいんですけど、スプリアさんにとってグレマさんってどんな人だったんですか?」
「グレマさんは私の父やスプリアさんの代なら、皆お世話になったことがあるほどの教育者です」
「ほう」
「台帳の記録のやり方、保管環境の整え方、パレットの管理法、防犯対策など、今までの管理法を塗り替え、それを分かりやすく教えてくれました」
「本当に凄い人ですね」
「ですが過労が祟って、50にもならずこの世を去りました」
「心中お察しします」
「ですが彼が遺したものは大きい。だからスプリアさんは尚更変えたくはないのでしょう」
「そうだったんですね」
「しかし、何故彼のことを?」
「復活させてスプリアさんを説得して欲しいからです」
「は?」
「魔道具には死者を蘇らせるものもあると聞きます」
「それなら最近聞いたような」
「本当ですか⁉」
「たしか王家がそんな魔道具を集めてきたとか」
「ありがとうございます。行ってみますね」
お礼を言うと、王宮へと走っていった。
「王様に会わせてください」
アマナスはアイソ王国の王からの紹介状を見せる。
「この印は、確かに隣国のものだ。しかし偽造品かどうか確かめる必要がある。しばし待たれよ」
数分待つと王宮へと通された。
「要件を申してみよ」
「王様が、死者を蘇らせる魔道具をお手入れになったと聞き及びました。差し出がましいかとは思いますが、それをぜひ譲っていただきたいのです」
臣下たちはざわつく。
「アマナス殿。申し訳ないが、私が手にしてのは、死者と対話できるものだ。それと、譲るには条件がある」
「かまいません」
「あの魔道具を集めたのは娘なのだが、魔道具を集めてからというものの、部屋に引きこもって使者と対話してばかりいるのだ。何とかしてくれんか?」
「承りました」
アマナスは王に案内され、娘の部屋の前まで来た。
「シャルロット。お客さんだよ」
「……」
「王女様。私は魔道具集めの冒険をしております、アマナスと申します。この度は王女様が魔道具を集められたと聞き及び、お話をしたく参りました。つきましては、お部屋から出てきてはいただけないでしょうか?」
しかし返事はない。
「出てこんな」
「では、出てきたくなるようなお話をしましょう」
アマナスは提案する。
「俺が旅に出るきっかけになった話です」
アマナスはオーメンとの出会いの話をした。
「というわけで俺はオーメンさんについていくと決めたのです」
王女の沈黙は続いた。
「駄目だったようだな」
「まだです。まだ話のネタはあります」
焦るアマナスだったが、その焦りは不要だった。
王女が戸を開けたのだ。
「私、王位を継ぐわ」
「え?」
「え?」
アマナスとシャルロットは顔を見合わせる。
「あら、お客様がいらしたのね」
「えっ、あっ、はい」
「おーシャルロットよ。よくぞ出てきてくれた」
王は彼女を抱きしめる。
「私分かりましたの。王になっても、冒険は出来るのですね」
「彼の話をきいてそう思ったのかね?」
「いいえ。ご先祖様が教えてくださいましたの。王になっても外交を増やせば、それは冒険が出来ていることと同義だと」
「そうかそうか。折り合いをつけたのだな」
「その、よかったですね」
「ああ。本当に」
「ところで報酬の件ですが」
「ああ、約束だからな。魔道具は渡そう。シャルロットもそれでよいな?」
「ええ。もう満足ですわ」
「ありがとうございます」
結局俺が話したのは意味がなかったのか。これが"誰が言うか"ということか。釈然としないながらも彼は宿へ戻った。
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