魔道具は希望と共に

小鳥遊怜那

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七つの大罪 憤怒編

解決策

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「黒い雨?」
 オーサーが呟く。
「黒い魔力を込めてるね」
「あいつは病をまき散らすと言ってたが、これがそうなのか?」
「多分そうだね。触れたらどんな病に罹るか分かったのもじゃない」
 すぐに雨は止んだ。
「今のうちにマルサと接触しよう」
 オーメンたちは宿を出た。

「アマナス君! 無事か!」
 オーメンが叫ぶ。
「ごめんなさい! マルサを止められませんでした!」
「気にしないいで! 君がいればこの雨も無意味になるから!」
「どういうことですか⁉」
「君の魔力は――」
 説明をしようとしたとき、マルサが遮る。
「煩せーよ! 王都が汚染される様を黙って見てろ!」
 マルサは王宮まで向かった。
「追うよ。掴まって」
 オーメンは飛行魔法を使って追いかける。

 そして王宮に着いた。
「今から突入する! そして王を見つけ必ず雨をかけてやる! 覚悟しろ!」
 マルサは怒りのままに進撃を続ける。
 オーメンと王宮の衛兵たちは魔法で迎撃するが、マルサの堅い防御魔法を崩せなかった。
 マルサは防御魔法を展開したまま建物に突っ込んだ。
「さあ、絶望の時間だ!」
 マルサは王宮中に雲を広げ、雨を降らせた。

 雨の中、よぼよぼになった王がマルサの前に現れる。
「賊よ。そなたの目的は何だ?」
「お前を殺すこと」
「なぜ殺したいのだ?」
「お前が家族を殺したから」
「いつ殺した?」
「18年前、お前が母さんを追い出した! それが発端だ!」
「そうか。お前、あの時の子か」
「お前が母を捨て、病気になった国民を捨てた。そのせいで俺の家族は死んだ。ただで死ねると思うなよ」
「好きにするといい。わらわは既に病体。この雨に当たらなかったところで、近いうちに死ぬ」
「そりゃいい。止めを刺せるなんて、俺はついている」
 マルサは刀を取り出し構える。
「あばよ」
 しかし振り下ろした刃は王の首に届かなかった。
「何とか間に合ったね」
 オーメンが防御魔法を使い、王を守った。
「邪魔をするな小娘!」
「同い年でしょ。それより、プロインVの解決策があるから聞いて」
「家族は帰ってこない」
「ゴミ捨て場の住民を見捨てるの?」
「……。話せ」

「プロインVは魔道具によって召喚された動物たちが保有していた。恐らく食事によって広まった。だから魔道具を使用しなければ問題ない」
「されではすでに罹った人はどうなる⁉」
「そのカギになるのが、そこで伸びてるアマナス君だよ」
「こいつが?」
「彼は黒い魔力を持ってる」
「黒魔法は、病気に罹らせることは出来ても、治すことは出来ないはずだろ」
「彼はとある村で、魔力操作を受けた。それによって、黒い魔力や魔道具による病なら、治すことも出来るようになったんだよ」
「何だと」
「王様の病気は、それとは別のものだから治せないけどね」
「そうか、なら安心したよ。色々と」
 
 話が終わると、オーメンはアマナスを起こす。
「アマナス君。起きて」
「うーん。ハッ。ここは?」
「王宮。死者は出てないよ」
「そうなんですね。良かった」
「起きて早々悪いけど、一仕事してもらうよ」
 オーメンは事情を説明した。
「分かりましたけど、俺一人の魔力量じゃ何日かかるか分かりませんよ」
「安心して、リコちゃんの魔道具を使って、私たちの魔力を分けるから」
「それなら1日で終わりますね。よーし、頑張るぞー」

 アマナスがオーメンとやり取りをしている間、マルサは王と話をしていた。
「王。プロインVが解決したらやってほしいことがある」
「何だ」
「ゴミ捨て場の民に教育と、まっとうな仕事を与えてやってくれ。それで復讐はチャラにしてやる」
「分かった。手配しよう。それが私に出来る償いだ」
 かくしてアマナスはプロインVの治療を始めるのだった。
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