魔道具は希望と共に

小鳥遊怜那

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七つの大罪 憤怒編

兆し

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「とまあこんな感じで、俺は父である国王に復讐することに決めたわけだ」
「大変だったんだね」
「本当に、骨身を削る思いだったよ」
「でもやっぱり、病気をばらまいちゃ駄目だよ。ショシーロさんやマルサさんと同じおもいをする人が増えるだけだよ」
「それが目的なんだよ。お嬢ちゃん」
「そんな……」
 
「復讐のやり方はこうだ。魔物たちを捕獲し、その魔力を抽出する。それを集めて王都にばら蒔く。お嬢ちゃんには、魔力の誘導をして欲しいんだ」
「やらなかったら?」
「さっきも言ったが、俺諸とも国中にばら蒔く」
「分かった。だったら協力――」
 と言いかけた時だった。

「そんなことさせられるか!」 
 我慢できずに、アマナスが飛び出してきた。
「なんだテメー!」
「リコの保護者だバカやろう!」
 アマナスはマルサを殴った。
「痛ってーな」
 だがあまり効いていないようだ。
「リコにやらせるくらいなら、俺がやる」
 マルサは一瞬驚いたが、すぐに納得した表情をした。
「確かにお前の方が強そうだ。良いだろう。こいつを解放してやる。代わりにお前が残れ」
「挑むところだ」
 覚悟を決めたアマナスに、オーサーが質問する。
「本当にいいのかよ?」
「うまく誤魔化して、魔力が王都に行かないようにします」
「出来るのか?」
「やるしかありません」
「そうか」
「オーサーさん。リコちゃんを頼みます」
「ああ」
 オーサーはリコを連れて宿へ戻った。

 宿に戻ると、オーメンが待っていた。
「アマナス君は?」
「リコの代わりに残った」
「そう」
「意外と冷静だな」
「彼なら大丈夫だと思うから」
「どうだかな」
 
「話は変わるけど、牛丼の件、報告してきたよ」
「どうだった?」
「牛丼の中の、肉に反応があった。調べてみたら、やっぱりプロインVが検出された」
「肉の中か」
「面白いことに、検出した肉としなかった肉があったんだ」
「何!? 同じ丼の中なのにか?」
「そう。つまりこれは、特定の産地にしか存在しない病原体だということ。しかも、今まで聞いたこともないから、きっとアイソ国原産のものと考えられる」
「この国のどこかの畜産農家が原因なのか。じゃあもう少しだな!」
「そう。あとはあの牛丼屋がどこから仕入れたのかを聞いて、そこを調査するだけ」
 オーメンとオーサーは喜んだ。しかしリコはまだ浮かない顔をしている。
「もし解決したら、マルサさんは復讐を止めてくれるかな?」
「どうだかな? 解決したところで家族は帰ってこないし、怒りも鎮まらないだろうな」
「それは悲しいね」
「それでも、これには意味がある。悲劇を生まないための大事な調査だよ」
 オーメンがフォローする。
「そうだよね。きっとそうだよね」
 リコは努めて笑顔を作った。

「となると、時間が最大の障壁だな。マルサがいつ黒魔法を使うか分からねー」
「大丈夫。最悪、発動した後でも何とかなるよ」
「根拠は?」
「それはね――」

 アマナスサイド。
 やってしまった。残るとは言ったが、黒魔法使うなんて嫌だ。なんとかしないと。考えろ! 考えろ俺!
 残ったことを少し後悔しているアマナスだった。
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