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七つの大罪 憤怒編
ゴミ捨て場
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「念のために言っておくと、二人の牛丼には反応無かったから安心して」
「それは良かったです」
ご馳走様でしたと言って、四人は牛丼屋をでて、病院にブツを持っていこうとしたときだった。
「んんん~」
男がリコを誘拐した。
「⁉」
三人は、あまりに急の出来事だったので、反応が遅れた。
「待て!」
と男を追いかけようとするオーメンをオーサーが引き留める。
「お前は医者にそれを持っていけ」
「でも」
「探知機を持ってるのはお前だ。リコは俺とアマナスで追いかける」
「分かった」
二手に分かれる。
アマナスとオーサーは男を追い、国の端まで来た。
「ここは⁉」
「クセーな」
そこはゴミ捨て場のような場所だった。
「いました! あそこです!」
二人は男が入った家に向かう。
「まずは様子を見るぞ」
見つからないように窓の外から、中を窺う。
「連れ去って悪いな。嬢ちゃん」
「さっきのお兄さん! やっぱり怒らせちゃったよね? ごめんなさい」
「むしろ逆さ。お嬢ちゃんを見つけられて、俺は心底嬉しいんだ」
「そうなの?」
リコは首をかしげる。
「結論から伝えよう。君には黒魔法を使って、王都、特に王宮に病を散布して欲しい」
「ヤだよ。そんなの」
「まあお嬢ちゃんがやらなくても、病はばらまくけどな」
「じゃあ私必要ないんじゃ?」
「その時は王都だけでなく、国中にばらまくことになる。無論俺もただでは済まないが」
「なんでそんなことするの?」
「俺の妹が国に殺されたからだ」
「⁉」
「俺たちの出自から話したい。俺と妹は現国王の子だ」
18年前。
俺の母アマントは妾だった。
「王よ! どうかあの子たちだけは、王宮においてはいただけませんでしょうか⁉」
「ならぬ。正妻には子がおらぬ。この状況でその子らを残せば、王位継承にあたり問題が発生する。それは避けなければならない」
「王位はいりません。生まれてきた子どもには何の罪もありません。どうかお慈悲を」
「ならぬと言うておろうが。それより、お前がここに居られるのは今日までであることは、忘れてはおらぬだろうな?」
「承知しております。故にこうして、子どもだけでもとお願いにあがった次第です」
「ならぬと言ったらならぬのだ」
アマントは翌日、生まれたばかりの子どもたちを連れて、王宮の外に追いやられた。
彼女は宮仕えの家系。今更実家には帰れない。途方に暮れていた彼女だが、赤子の鳴き声を聞き我に返る。
「ごめんね。お腹空いたよね。すぐあげるから待っててね」
彼女は腰を据えられる場所を探した。
しかし、金はなくコネもない彼女に、居場所などなかった。そして国の端までたどり着いた。そこはゴミ捨て場。住み着く者は脛に傷のある者が殆どで、悪臭も漂っていた。まさにスラムにも劣る環境だった。それでも彼女にはここしか居場所がなかった。
ひとまず、目に入った人物に声を掛ける。
「すみません」
「ん? 新入りか?」
「はい。今日ここへ来ました」
男は赤子を一瞥した。
「お前さんも大変だな。中心地以外は自由に使え」
「ありがとうございます」
彼女は段ボールと布を拾い、簡易的なテントを作った。
何とか腰を据えられる墓所を探せた。でもこれからどうしよう。
アマントは二人の寝顔を眺める。
そうだよね。この子たちのためにも、泣き言なんて言ってられないよね。まずはここでの暮らし方を知らなきゃ。
翌日彼女は、昨日の男を探した。
「すみません。今よろしいでしょうか?」
「ああ、昨日の……」
「アマントです」
「何か?」
「ここでの暮らし方について教えていただきたくて」
「タダでか?」
男は目を細め、彼女の胸を見る。
「もちろんお礼はいたします」
「ここはゴミ捨て場。毎日色んなものが運び込まれる」
「毎日ですか」
「その中には換金可能なものもある。それを集めて門の外、つまり国内のリサイクル屋に持っていく」
「そうなんですね」
「ちなみに、ごみの中にはまだ食べられるものもある」
「分かりました。ありがとうございます」
「それと、昨日も言ったが中心地には行くな」
「なぜでしょうか?」
「ボスの縄張りだ。あいつは気性が荒い」
「気を付けます」
「さて、じゃあお礼を貰おうか」
これもここで暮らすための通過儀礼。受け入れるのよ。
アマントは目を閉じ、口を一文字に結んだ。そして彼女は男の家へ着いていった。
「それは良かったです」
ご馳走様でしたと言って、四人は牛丼屋をでて、病院にブツを持っていこうとしたときだった。
「んんん~」
男がリコを誘拐した。
「⁉」
三人は、あまりに急の出来事だったので、反応が遅れた。
「待て!」
と男を追いかけようとするオーメンをオーサーが引き留める。
「お前は医者にそれを持っていけ」
「でも」
「探知機を持ってるのはお前だ。リコは俺とアマナスで追いかける」
「分かった」
二手に分かれる。
アマナスとオーサーは男を追い、国の端まで来た。
「ここは⁉」
「クセーな」
そこはゴミ捨て場のような場所だった。
「いました! あそこです!」
二人は男が入った家に向かう。
「まずは様子を見るぞ」
見つからないように窓の外から、中を窺う。
「連れ去って悪いな。嬢ちゃん」
「さっきのお兄さん! やっぱり怒らせちゃったよね? ごめんなさい」
「むしろ逆さ。お嬢ちゃんを見つけられて、俺は心底嬉しいんだ」
「そうなの?」
リコは首をかしげる。
「結論から伝えよう。君には黒魔法を使って、王都、特に王宮に病を散布して欲しい」
「ヤだよ。そんなの」
「まあお嬢ちゃんがやらなくても、病はばらまくけどな」
「じゃあ私必要ないんじゃ?」
「その時は王都だけでなく、国中にばらまくことになる。無論俺もただでは済まないが」
「なんでそんなことするの?」
「俺の妹が国に殺されたからだ」
「⁉」
「俺たちの出自から話したい。俺と妹は現国王の子だ」
18年前。
俺の母アマントは妾だった。
「王よ! どうかあの子たちだけは、王宮においてはいただけませんでしょうか⁉」
「ならぬ。正妻には子がおらぬ。この状況でその子らを残せば、王位継承にあたり問題が発生する。それは避けなければならない」
「王位はいりません。生まれてきた子どもには何の罪もありません。どうかお慈悲を」
「ならぬと言うておろうが。それより、お前がここに居られるのは今日までであることは、忘れてはおらぬだろうな?」
「承知しております。故にこうして、子どもだけでもとお願いにあがった次第です」
「ならぬと言ったらならぬのだ」
アマントは翌日、生まれたばかりの子どもたちを連れて、王宮の外に追いやられた。
彼女は宮仕えの家系。今更実家には帰れない。途方に暮れていた彼女だが、赤子の鳴き声を聞き我に返る。
「ごめんね。お腹空いたよね。すぐあげるから待っててね」
彼女は腰を据えられる場所を探した。
しかし、金はなくコネもない彼女に、居場所などなかった。そして国の端までたどり着いた。そこはゴミ捨て場。住み着く者は脛に傷のある者が殆どで、悪臭も漂っていた。まさにスラムにも劣る環境だった。それでも彼女にはここしか居場所がなかった。
ひとまず、目に入った人物に声を掛ける。
「すみません」
「ん? 新入りか?」
「はい。今日ここへ来ました」
男は赤子を一瞥した。
「お前さんも大変だな。中心地以外は自由に使え」
「ありがとうございます」
彼女は段ボールと布を拾い、簡易的なテントを作った。
何とか腰を据えられる墓所を探せた。でもこれからどうしよう。
アマントは二人の寝顔を眺める。
そうだよね。この子たちのためにも、泣き言なんて言ってられないよね。まずはここでの暮らし方を知らなきゃ。
翌日彼女は、昨日の男を探した。
「すみません。今よろしいでしょうか?」
「ああ、昨日の……」
「アマントです」
「何か?」
「ここでの暮らし方について教えていただきたくて」
「タダでか?」
男は目を細め、彼女の胸を見る。
「もちろんお礼はいたします」
「ここはゴミ捨て場。毎日色んなものが運び込まれる」
「毎日ですか」
「その中には換金可能なものもある。それを集めて門の外、つまり国内のリサイクル屋に持っていく」
「そうなんですね」
「ちなみに、ごみの中にはまだ食べられるものもある」
「分かりました。ありがとうございます」
「それと、昨日も言ったが中心地には行くな」
「なぜでしょうか?」
「ボスの縄張りだ。あいつは気性が荒い」
「気を付けます」
「さて、じゃあお礼を貰おうか」
これもここで暮らすための通過儀礼。受け入れるのよ。
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