魔道具は希望と共に

小鳥遊怜那

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七つの大罪 暴食編

告白

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 ベルは翌日、ハンスの家に向かった。
「すみませーん」
 戸を叩く。
「はーい」
 ハンスが出てきた。
「君は……、ベルちゃん?」
「うん」
「休学中じゃなかったの?」
「そうだけど、伝えたいことがあって」
「とりあえず上がってよ」
「じゃあお邪魔します」

 その様子をアマナスたちは影から見ていた。
「大丈夫ですかね?」
 アマナスはドキドキしっぱなしだ。
「そう信じるしかないでしょ」
 逆にオーメンはあっさりしていた。
「ハンスってやつ、なかなかイケメンだな」
「お家入っちゃたね」
 これでは様子を見れない。窓から見ようと移動した。

「ジュースどうぞ」
「ありがとう」
 ハンスは二人分のジュースを出した。しかし彼女はそれを口にはしなかった。
「ねえハンス君」
「ん?」
「私が前に告白したの、覚えてる?」
「ああ、うん」
「今日はリベンジに来たの」
「リベンジね」
 彼はジュースに視線をやる。
「ハンス君。今でも私は貴方が好き。貴方は覚えてないかもしれないけど、入学式で私がお腹を鳴らしちゃったときに、ハンス君は式が終わった直後にお菓子を分けてくれた。その時から貴方が好きなの。私と付き合ってください」
「……」
 ハンスは少し心苦しそうな顔をする。
 
 外野で4人は密かに檄を飛ばす。しかし。
「ごめん。今僕には彼女がいるんだ。だから付き合えない」
 撃沈した。2度も。
「そっか。ごめん。迷惑だったよね。私帰るね」
 ベルはそそくさと彼の家を出た。

 ベルは家に帰ると泣いた。声を上げて泣いた。
 昼になり空腹感とともに、気持ちを落ち着かせた。
 アマナスたちは泣き止んだを確認してから彼女の家に入った。
「ハンスだけが全てじゃない。「"好き"を分析すれば向ける先を変えることも出来る」って師匠がいってた」
 オーサーは、叶わなかった恋を抱えた者同士。自分と彼女を少し重ねてしまった。
「そうかもしれないですね。考えてみます」
 まだ彼女は立ち直ったわけではないが、作り笑顔を浮かべられるくらいには、回復していた。
 その後皆で昼食を摂り、残念会を開いた。
 
 翌日ベルの体重は目標の45キロに達した。
「おめでとう。よく頑張ったね」
 オーメンは花束を贈る。
「ありがとうございます。皆さんがいなければ、どうなっていたことか……」
「気にしないで。私がやりたくてやっただけだから」
「そう言ってくれると助かります」
「私たちはそろそろこの町をでるね。魔道具が待ってる」
「そういうことなら、これを持って行ってください」
 ベルは水筒を渡す。
「いいの?」
「もう必要ありませんから」
「そう。ありがとう。強いのね」
「ただの恩返しですよ」
 二人は笑顔で魔道具を受け渡した。
「貴女は悪くない。今回はタイミングが悪かっただけ。だから自分を責めないようにね」
「はい。皆さんの旅が希望に満ちたものであることを、心から祈っています。お気をつけて」
「ありがとうね」
 こうして4人は食い倒れの町を出た。次はどんな魔道具が待っているのか、彼女たちはまだ知らない。
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