魔道具は希望と共に

小鳥遊怜那

文字の大きさ
上 下
13 / 104
証村

出立

しおりを挟む
 晴れて納税証明書を手に入れたリコだが、やることは山積みだ。
「村民健康保険は、過去二年遡って支払うことになっています」
 弁護士がそう伝える。
「リコさんの場合、収入がありませんので、六万掛ける二年で十二万ゼニーです。他にも、年金は……」

 ざっと整理した結果、 数十万の税金を支払うことになった。
「こんなにいっぱい」
 リコは目をぐるぐると回す。
「支払期限の延長は出来ないのでしょうか?」
 オーメンが質問する。
「それはそれで、また裁判が必要になりますね」
「そうですか」
 税金の額もそうだが、弁護士費用もバカにはできない。今回は琴がいくらか立て替えてくれたが、何度も世話になるわけにはいかない。とオーメンは考えた。
「とはいえ、書類上アマナスさんがリコさんの父親ですので、支払うのはアマナスさんになると思いますが」
「えっ! あぁ、そうですよね」
 失念していた訳ではないが、その時がくれば抵抗感は抱くものだ。
 彼は自国とこの村、二つの団体に所属することになった。故に支払う税金は、単純計算で倍だ。
 幸い、どちらの団体も重婚は認めているので、婚姻の自由は残っているが、それに見合うだけの収入はない。彼はオーメンの方を見て、そう思った。
「ごめんね、パパ」
「リコちゃん。俺は君とは三つしか変わらないから、パパはやめようか」
「じゃあお父さん?」
「そうじゃなくてね」
 親子漫才を尻目に、オーメンは弁護士に話を振る。
「兎に角、今の私たちにはそんなお金はありません。延長の裁判を申し立てます」
「承知いたしました」

 そんなこんなで再び裁判をし、彼らは支払期限の延長を勝ち取った。
 二人がこの村に来てから、かれこれ一月近くが経っていた。
「何とか延長してもらったし、これからは財宝集めも積極的にしていかないとね」
「そうですね。今のところ魔道具も財宝も大して集まってませんもんね」
「明日この村を出るけど、リコちゃんはどうしようか?」
「それはリコちゃん次第ですよ」
「親らしからぬ発言だなー」
「まだ子どもですから」

 翌日、二人はリコに別れの挨拶をしに行った。
「ごめんね。元々私たちは旅人。いつまでもいられないの」
「なぁ、リコはどうする?」
「二人についていくよ」
「!?」
「だって自分の税金は自分で払いたいもん。二人について行ったら、お金集まるでしょ?」
「それはそうだけど……」
 アマナスは困惑する。
「危険だよ」
「分かってるよ。それに何かあったら守ってくれるんでしょ?」
「だってさ」
 オーメンは少し悪戯な笑顔をアマナスに向ける。
「分かりましたよ。何があっても守りますよ」
「わーい。よろしくねパーパ」

 かくして、二人は三人となり村を出立した。未だ見ぬ魔道具と財宝を求めて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

浅野浩二
恋愛
研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...