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証村
判決
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「これよりリコ原告の、納税証明書取得の裁判を執り行う」
いよいよ裁判が始まった。リコを助ける。アマナスは強い意思を携え、裁判に望む。
「原告の要求は、納税証明書の作成。そのための、魔力分配人をアマナスに指名する。これを村に認めさせる。相違ないか?」
「間違いありません」
「前提を整理する。原告の母はレイであり、母系の魔力は確定しており、父系の魔力を確定させるため、アマナスの魔力を与えようとしている」
「アマナスを父とするには、まずはアマナスがこの村で納税証明書を作る必要がある。つまり、書類上はこの村にも所属することになるが、異議はあるか?」
「ありません」
遡ること一週間前。
「マジすか!?」
衝撃の事実だった。父親が分からない以上、裁判の難易度ははね上がるとのことで、難易度を下げるためには、アマナスが書類上の父親なるのが一番だという。
弁護士は続けてこう言う。
「これはつまり、アマナスさんはレイさんと結婚するということになります」
開いた口が塞がらない。
齢十三にして結婚。父親になってしまうのだ。
「あの、他に方法はありませんか?」
流石に気の毒になったのか、オーメンが弁護士に問う。
「これ以上となると、血縁上の父親を探すことくらいしか」
「そうですか……」
沈黙が流れる。
まだ十三だぞ! 恋愛の一つもしたことないのに、いきなり父親だと!? でも。
「なります。俺、父親に」
「いいのかい? 他の方法もあるにはあるんだよ?」
「ええ。オーメンさんなら、迷わずこうしていたでしょうから」
アマナスは冷や汗と共に笑みを浮かべる。オーメンは目を下に向ける。
そして今。
なるようになれ! チクショー!と心の中で叫んだ。
「では、二人に問う。原告リコは、アマナスの魔力を受け取り、彼を父とすることに異議はあるか?」
「「ありま――」」
「異議あり!」
ありませんと言おうとした時だった。裁判官の一人が声を上げた。
「彼の魔力は不吉の象徴です。それを、こんな小さな子に渡すなんてどうかしてる!」
「裁判官は控えてください」
裁判長が諫める。しかし彼は止まらない。
「黒い魔力なんて流し込んだら、彼女も不幸になるのは明白! こんなもの否決だ否決!」
警備員が裁判官を外に連れ出そうとする。
「待って下さい」
アマナスがそれを引き留める。
「マイナスで生きるくらいならゼロでいいという考えも分かります。しかし、彼女はマイナスでもいいから証が欲しいのです! であれば我々関係者は、彼女が証を手に入れられるように手助けするべきです! まして皆さんは大人です。権力があります。目の前の人を助けられる力が! だったらそれを今使わないで、いつ使うのですか!?」
皆、押し黙った。
「異議はあるかね?」
「ありません」
「では判決を言い渡す。原告リコは、アマナスをの魔力を受け取り、彼を父とすることをここに認める」
リコは母の言葉を思い出していた。楽しいことも辛いことも、これまでとこれからに祝福があるからだと。今、彼女はまさに、祝福の中にいる。
いよいよ裁判が始まった。リコを助ける。アマナスは強い意思を携え、裁判に望む。
「原告の要求は、納税証明書の作成。そのための、魔力分配人をアマナスに指名する。これを村に認めさせる。相違ないか?」
「間違いありません」
「前提を整理する。原告の母はレイであり、母系の魔力は確定しており、父系の魔力を確定させるため、アマナスの魔力を与えようとしている」
「アマナスを父とするには、まずはアマナスがこの村で納税証明書を作る必要がある。つまり、書類上はこの村にも所属することになるが、異議はあるか?」
「ありません」
遡ること一週間前。
「マジすか!?」
衝撃の事実だった。父親が分からない以上、裁判の難易度ははね上がるとのことで、難易度を下げるためには、アマナスが書類上の父親なるのが一番だという。
弁護士は続けてこう言う。
「これはつまり、アマナスさんはレイさんと結婚するということになります」
開いた口が塞がらない。
齢十三にして結婚。父親になってしまうのだ。
「あの、他に方法はありませんか?」
流石に気の毒になったのか、オーメンが弁護士に問う。
「これ以上となると、血縁上の父親を探すことくらいしか」
「そうですか……」
沈黙が流れる。
まだ十三だぞ! 恋愛の一つもしたことないのに、いきなり父親だと!? でも。
「なります。俺、父親に」
「いいのかい? 他の方法もあるにはあるんだよ?」
「ええ。オーメンさんなら、迷わずこうしていたでしょうから」
アマナスは冷や汗と共に笑みを浮かべる。オーメンは目を下に向ける。
そして今。
なるようになれ! チクショー!と心の中で叫んだ。
「では、二人に問う。原告リコは、アマナスの魔力を受け取り、彼を父とすることに異議はあるか?」
「「ありま――」」
「異議あり!」
ありませんと言おうとした時だった。裁判官の一人が声を上げた。
「彼の魔力は不吉の象徴です。それを、こんな小さな子に渡すなんてどうかしてる!」
「裁判官は控えてください」
裁判長が諫める。しかし彼は止まらない。
「黒い魔力なんて流し込んだら、彼女も不幸になるのは明白! こんなもの否決だ否決!」
警備員が裁判官を外に連れ出そうとする。
「待って下さい」
アマナスがそれを引き留める。
「マイナスで生きるくらいならゼロでいいという考えも分かります。しかし、彼女はマイナスでもいいから証が欲しいのです! であれば我々関係者は、彼女が証を手に入れられるように手助けするべきです! まして皆さんは大人です。権力があります。目の前の人を助けられる力が! だったらそれを今使わないで、いつ使うのですか!?」
皆、押し黙った。
「異議はあるかね?」
「ありません」
「では判決を言い渡す。原告リコは、アマナスをの魔力を受け取り、彼を父とすることをここに認める」
リコは母の言葉を思い出していた。楽しいことも辛いことも、これまでとこれからに祝福があるからだと。今、彼女はまさに、祝福の中にいる。
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