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証村
白く染める宣告
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母が亡くなってから三日。レイは未だ職場へは戻っていない。しかしそれでも腹は減る。
台所へ行き食材を確認する。まだいけるな、と判断し、料理をする。
「はぁー」
味噌汁が美味しい。
食事を済ませたレイは、職場へと足を運んだ。
「お店空けちゃってすみません。今日から復帰します」
「頼んだよ」
相変わらず店長は店のことを考えている。
指名が来るまで、待機室で琴と話す。
「もう大丈夫なの?」
「はい。ご迷惑おかけしました」
「迷惑だなんて思ってないわよ。それと、辛かったら言ってね」
「はい。でも大丈夫です」
そして指名が入り、淡々と仕事をこなす。
その日の仕事が終わり、夕食を口にした時だ。
吐いた。精神的な理由からではない。肉体的な理由だった。
それから数日、腹痛や吐き気、出血が続いた。
まさかと思い、病院へ行く。
「妊娠してますね」
「……そうですか」
頭が一瞬真っ白になった。そして遅れて、考えが群れを成してやってくる。
仕事は? 出産の費用は? 父親は? 手続きは? 妊娠に耐えられる? 堕ろす? 堕ろさない? 私一人じゃん!
医者が何か言っているが、頭に入ってこない。
「お会計七千ゼニーです」
そうだ。納税証明書。これも父親がいないんじゃ、作れない。この子には不便をかける。やっぱり堕ろすしか……。
ひとまず店長に報告することにした。
「そうか。それでどうするの?」
「どう、とは?」
「だから、堕ろすのか堕ろさないのかって話」
「もし堕ろさなかったら、どうなりますか?」
「休職扱いにはするよ。君は人気だからね」
「……少し、考えさせてください」
「早めに頼むよ」
待機室で琴と話す。
「ということなんですけど。琴さん、私はどうすればいいんですか?」
「生むのも堕ろすのも、体には負担がかかるのは分かるよね?」
「はい」
「もし生むのなら、私達はサポートできる。勿論、堕ろすときも出来ることは最大限協力する。ただしどっちにしても、本人が乗り越えなきゃいけないことはあるわよ」
「そう、ですよね」
指名が入り、話は中断された。
寝る前、レイは考えた。子どもを育てるお金はある。サポートしてくれる人もいる。だったら、このお腹に宿った命を殺すことは出来ない。
生もう。
台所へ行き食材を確認する。まだいけるな、と判断し、料理をする。
「はぁー」
味噌汁が美味しい。
食事を済ませたレイは、職場へと足を運んだ。
「お店空けちゃってすみません。今日から復帰します」
「頼んだよ」
相変わらず店長は店のことを考えている。
指名が来るまで、待機室で琴と話す。
「もう大丈夫なの?」
「はい。ご迷惑おかけしました」
「迷惑だなんて思ってないわよ。それと、辛かったら言ってね」
「はい。でも大丈夫です」
そして指名が入り、淡々と仕事をこなす。
その日の仕事が終わり、夕食を口にした時だ。
吐いた。精神的な理由からではない。肉体的な理由だった。
それから数日、腹痛や吐き気、出血が続いた。
まさかと思い、病院へ行く。
「妊娠してますね」
「……そうですか」
頭が一瞬真っ白になった。そして遅れて、考えが群れを成してやってくる。
仕事は? 出産の費用は? 父親は? 手続きは? 妊娠に耐えられる? 堕ろす? 堕ろさない? 私一人じゃん!
医者が何か言っているが、頭に入ってこない。
「お会計七千ゼニーです」
そうだ。納税証明書。これも父親がいないんじゃ、作れない。この子には不便をかける。やっぱり堕ろすしか……。
ひとまず店長に報告することにした。
「そうか。それでどうするの?」
「どう、とは?」
「だから、堕ろすのか堕ろさないのかって話」
「もし堕ろさなかったら、どうなりますか?」
「休職扱いにはするよ。君は人気だからね」
「……少し、考えさせてください」
「早めに頼むよ」
待機室で琴と話す。
「ということなんですけど。琴さん、私はどうすればいいんですか?」
「生むのも堕ろすのも、体には負担がかかるのは分かるよね?」
「はい」
「もし生むのなら、私達はサポートできる。勿論、堕ろすときも出来ることは最大限協力する。ただしどっちにしても、本人が乗り越えなきゃいけないことはあるわよ」
「そう、ですよね」
指名が入り、話は中断された。
寝る前、レイは考えた。子どもを育てるお金はある。サポートしてくれる人もいる。だったら、このお腹に宿った命を殺すことは出来ない。
生もう。
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